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トーレムグレイグは今日も活気づく

LV76 黒の鎖

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今日も【モンペロ】で遅くまで働いたフミヤは
家へと向かう。
街の門をくぐり 通い慣れた道を歩く。

ゴン。

何者かが、フミヤの頭部を硬い物で殴りつけた。
「ん。」
振り向くフミヤ。

*フミヤはダメージを受けていない。

フミヤを襲ったのは【黒《くろ》の鎖《くさり》】という
盗賊集団の一味であった。
5人の男達がフミヤを囲《かこ》う。

「洞窟で、拾った物を返してもらおうか。」
「誰?」
「俺達は 黒の鎖。おまえだろ、俺達のアクタの剣を
盗んだ奴は。」
「ああ、盗賊か・・・。」
「というか、盗賊に盗んだとか言われたくないんですけど。」
「うるさい、行くぞ、お前ら。」
5人の男達は一斉に剣を抜いた。

「んー仕事で疲れてるんだけどな。」
男達はフミヤに切りかかる。

ドカ

バキ

ゴン

盗賊団撃沈。

「洞窟の敵に比べたら こんな奴ら楽勝だな。」
余裕のフミヤに倒れた男の一人が、薄ら笑いを浮かべる。

「我々は ただの足止めにすぎない、今頃お前の家に
30人程の俺達の刺客が、踏み込んでいるはずだ。」
「なんだと!」
「一人一人が、B級冒険者レベルの手練れだ。
精々、死なないように頑張るんだな。」

「何て事だ・・・。」

フミヤは急ぎ足で、家へ向かいだす。
「なんとか、無事であってくれ。」
フミヤは懸命に走る。
途中、襲い掛かってくる盗賊団を幾度か、
倒しながら懸命に家に向かう。

「はあ、はあ、はあ。」
「ああ、なんて事だ・・・。」
ようやく家に辿り着いた時、フミヤは辺りの様子を見て
へたへたとその場に倒れ込んでしまった。

家の外には30人もの盗賊達が、倒れ込んでおり
ヴィオラ・サイトウ・ヤマダ・メロが勝鬨《かちどき》を上げていた。
へたり込んだままのフミヤは 暗く、沈んだ声で呟《つぶや》いた。

「家が、ボロボロだ。」
今にも泣きだしそうなフミヤ。
それもそのはず、フミヤの家はほぼ半壊状態で、見るも無残な状態であった。

天井には大きな穴が開き、
・・・ヴィオラ、家の中で『ライトニング』使ったな。

壁には複数の拳大の穴が開き、
・・・ヤマダ、トゲトゲハンマー振り回しすぎだ。

テーブルには石棍棒ごとめり込む盗賊団の一人。
・・・サイトウ。

床にはピチピチ跳ねる魚達。
・・・メロ、口の中の物を人に飛ばすんじゃないよ。

「フミヤー、おかえりー。」
「おかえりなさいー。」
ヴィオラ達が、遠くからフミヤに笑顔で手を振っている。

「ふう。」
フミヤは 気を取り直し、立ち上がると
ふらふらと、ヴィオラの方へ歩いて行く。

倒れた盗賊団の一人がやっとの思いで立ち上がる。
「副団長のこの俺を倒すとはさすが、勇者と言ったところか。
だが、これで終わりだと思うなよ。
我々は目的を遂行するまで、何度でもやってくるぞ。」

捨て台詞を吐きながら なんとかその場から
退散しようとする盗賊の副団長の胸ぐらを
掴んだフミヤは その体を大きく揺さぶりながら ブチ切れる。
「お前らなー、やるなら外で襲えよ!
家ぐちゃぐちゃじゃないか、てかボスはどこだ。
言えー。この家どうしてくれんだ、弁償しろ、弁償!」

「や、やめろ、コノヤロ。」
「うるせー。」
フミヤは無抵抗な副団長をタコ殴りにする。
「うう、もう許して。」
「許せるかー。」

次第に目を覚ましていく盗賊団達が逃げようとするも
フミヤが止める。
「お前ら、そこに整列しろ!」
「ヤマダ、サイトウ、一人も逃がすなよ。」
圧に押され、盗賊団はその場で整列させられる。
「ボスはどこだ。」

「・・・。」

「言えーーー。」
「イチカの森です・・・。」

「うおおおおおお、行くぞお前ら!」

フミヤはこの日、仲間達と共に A級賞金首の【黒の鎖】を
壊滅させたのだった。
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