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幽霊になった私

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私は 死にました。
死後の世界には天国と地獄があって
良い行いをした人は天国へ
悪い行いをした人は地獄へ
という説がありますが、嘘なのでしょうか?
だってほら 私、幽霊ですから・・・。

何故このようになったのか?
理由がわかりません。
断片的に生きている時の記憶があるのですが、
どうしてこうなってしまったかは記憶がないのです。

断片的な記憶を辿っていくと
名前は・・・そう。 ん・・分からない。
とりあえず 幽霊なのでゆうこって事にしとこう。
年は28ってのだけはしっかり覚えてるんだな・・・
年々の老いを感じていたし 印象深いのかな?

・・・・

ああ確か・・ 
昔 お母さんと喧嘩して独り暮らしを始めて
でも 今では仲直りしてたまに家に帰って
仕事の愚痴も聞いてもらってたっけ。

とりあえず 実家に帰ろうかな。
フワフワして動きづらいけど・・・。

ゆうこのいる場所は 実家からそう遠くはない道端であった。
ゆうこが一人暮らししているマンションも
いつかは母親と和解できるようにとの思いから
実家に近い場所を借りて住んでいた。

本当に死んだ時の記憶が一切ない。
何かの衝撃で忘れてしまったのだろうか。
不安な気持ちもあったが、とりあえず ゆうこは
思い出せる場所から 行ってみる事にした。

実家に顔を出したゆうこであったが、留守中だった。
仕方なく まだぼんやりとしている頭をフル回転させながら
自分の住んでいるマンションを探した。
幽霊ともあって いくら移動しても疲れない。
「意外にこの身体は便利だな。」っと思う ゆうこだった。

自分のマンションがなかなか思い出せず
実家から職場にかけてのマンションを僅かな《わずかな》記憶の元
手当たり次第に探して行く。

探し始めて小一時間は経ったであろうか
ようやく それらしいマンションと自分の苗字の入った
マンションのポストを発見した。

「私、いいところに住んでるじゃん。」
10階建てマンションの809号室・・・。

うん なんとなく思い出してきたぞ。
いざ809号室へ
「って 幽霊はこのまま部屋って借りれるの?」
些細な不安がよぎりながらも 何故か明るいゆうこ。

「まー行くとこなくなったら 実家にでも
憑りとりつこうかな。」

「コンコン・・・ノックできないけど形だけ・・・。
なんてね 誰もいるわけないし。」
ゆうこは 独り芝居をしながらドアをすり抜けた。
首をかしげるゆうこ。
なにやら 奥で人の気配がするんですけど。

恐る恐る中へ進んで行くと突然、大きな声がする。
「あー指切った!」

「ひええええ。」
驚いて悲鳴を上げるゆうこだが、
自分が幽霊である事を思い出す。

いやいや、見えて驚くおどろくのはあっちでしょ。
私、今怖いものなしなんで。

キッチンには見知らぬ男が自分の左手の指を舐めていた。
野菜を切るのに指を切ったみたいだ。
「下手糞だな。」
ゆうこは しばらく料理に没頭するその男性を観察する。

「うん・・顔は素朴で普通。
でも なんか母性本能を擽るくすぐるような感じ
悪くはない、必死な所も健気だねー。」

ゆうこは 本来の趣旨しゅしを忘れ 男の仕草を逐一ちくいちチェックする。
ふと 男と目が合った。
あれ 目が合っちゃった。まーあっちは分かってないもんね。
「えっ 優子ちゃん??」

「はい、幽霊のゆうこです。」
やば・・・彼、私を見えてますよね?
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