5 / 6
長い夜⑤
しおりを挟む「はあっ………酷い目に遭いました」
無駄に広い木で出来た浴室に浸かる。手足を伸ばし筋肉を解す。お湯が心地よく、疲れが癒される。
まるで天国―――そう、こいつさえ居なければ……。
「アザレナ、体洗うぞ!」
「結構です!約束通り一晩をともにしました。戯れはもう終わりです」
ルークの腕が私の腰に回される。その手のひらをつねり、きっと睨んだ。
「は?お前は俺の番だ。戯れじゃない、本気交尾だってしただろう?」
「何が、本気交尾ですか!色んな女とヤりまくるヤリチンのくせに!!」
「た、確かに………俺は色んな女とヤってきたが、もう番じゃないと勃起しねぇ。それに本気交尾したのは、番のお前が初めてだ」
「はあ?それを信じろと?……番、番って五月蝿いんです。番は私にとって忌むべき呪いなんですよ」父母、弟の顔がよぎる。
「呪いか……?お前ん家の話は聞いた。不幸だと思う……だからな、俺と一緒に呪いじゃなくて、祝福にしねえか?」
「……祝福ですか?」
「ああ!女神に誓う!俺はこの先お前しか抱かねえし、絶対に大切にする!」私を抱きしめ、力強くルークは宣言した。
「……ルーク」
視界が滲むのはきっとゴミが入ったから。
「……だからな……もう一回ヤらせてくれ!!!」
「お断りします!!!」
◇◇◇
仕事の合間。中庭の芝生の木陰に座り、至福の休憩タイム。好物のミントアイスを頬張る。爽やかな味が口に広がる。
晩夏の空気は生ぬるく冷たいアイスがどんどん溶けていく…。
本当は快適な食堂で食べたいんですが……私は、大きくため息をついた。
「アザレナ!探したぜ、今日はここで休憩か?」犬耳をぴょこぴょこ、しっぽをブンブンさせ、元凶のルークが私の隣に座る。
無駄にめざとい男。
……交わった日からルークは、暇さえあれば私を探し、共に過ごそうとする。周りにアザレナは俺の番と公言し、ハッキリ言って鬱陶しい。
「ルーク、私は一人で休憩したいのですが」 私が睨んでもルークは、嬉しそう。
「邪険にするなよ!報告があるんだ。
おっ……もったいねぇなアイス、とけてきてるぜ」ルークは、私の手首を掴むと溶けたアイスをペロッと舐めとった。
「な、舐めないでください!!な、何の報告ですか?」ルークの舌ざわりに交わりの日を思い出し、顔が赤くなる。
「ああ!教会に俺の書類が受理された!!」
「ルーク………私を……俺の番と言ったくせに……信じろと言ったくせに、結局番解除の書類を提出したのですか?」
自分の声が冷たくなる、目の前が暗い。
私は、番を認めないと言いながら、祝福と言ったルークのことを心の奥底で信じていたらしい。馬鹿みたい……悔しい。でも、泣きたくなくて唇を噛んで下を向く。
「はあ?俺が番解除なんてするわけ、ねーだろ?俺が出したのはこれだ!!」
ルークは、私の目の前に一枚の紙を差し出した。そこには、教会はアザレナとルークの婚姻を認め祝福します――と、書かれていた。
end
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
洗浄魔法はほどほどに。
歪有 絵緖
恋愛
虎の獣人に転生したヴィーラは、魔法のある世界で狩人をしている。前世の記憶から、臭いに敏感なヴィーラは、常に洗浄魔法で清潔にして臭いも消しながら生活していた。ある日、狩猟者で飲み友達かつ片思い相手のセオと飲みに行くと、セオの友人が番を得たと言う。その話を聞きながら飲み、いつもの洗浄魔法を忘れてトイレから戻ると、セオの態度が一変する。
転生者がめずらしくはない、魔法のある獣人世界に転生した女性が、片思いから両想いになってその勢いのまま結ばれる話。
主人公が狩人なので、残酷描写は念のため。
ムーンライトノベルズからの転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる