シークレット?いいえ!オープンベイビーです。

豆丸

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そうだ!作りましょう③

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 会議から3日後、第六師団騎士団の姿はカイロの地、砂漠地帯南部にあった。 

 迷子になっていたマリオン王子は、騎士団が設置した魔物避け結界を施した小屋に緊急避難して無事だった。迎えに来るのが遅いと愚痴る王子をセシルが一喝し黙らせた。
 女に貢ぐ目的で国庫から勝手に金貨を拝借し、バレそうになった為、無謀にも魔石を採掘し返済にあてようとした馬鹿王子に同情の余地などない。

 先導するセシルは騎士団に護衛されぶつくさ言いながら歩く王子の後方に視線を向けた。
 王子を挟み護衛する後方部隊には黙々と歩く魔女
ローズマリーがいた。
 セシルは彼女が問題を起こす度に尻拭いをさせられてきた。動向に日々注意を払っている。

(……今日は不気味なほど大人しいな……いつもなら、砂漠の日差しがきついだの、乾燥して肌が荒れるだと騒ぐ場面だが) 

 砂漠用のフードを被り、顔を隠しても色彩をまぶした彼女の美しさは隠しきれていなかった。長い睫毛に彩られた気の強そうな瞳。綺麗な形の鼻梁に誘うような真っ赤な唇。スカートが風で張り付き、メリハリのある体の線を浮き出させる。女好きな王子が鼻の下を伸ばしに魔女に意味深な視線を投げた。
 
(……あんな我が儘女の何処が良いのかわからない。化粧の濃い女は苦手だ。まあ、口さえ開かなければ、他の奴らの目の保養にはなるだろう。俺に迷惑だけはかけないでくれ) 

 女に振り回されるのは離縁した妻だけでこりごりだ。
 
 セシルが20歳の時、聖王に五大国末席リーバイから双子姫を側室にと話が持ち上がった。五大国の均等を考慮し一人しか側室に迎えられない。誰が側室になるかと双子姫とリーバイス国内は揉めに揉めた。
 そこで、将来有望、次期聖王候補との噂のあるセシルに白羽の矢がたった。
 セシルは聖王の命令で妹姫ココナーディと婚姻させられた。
 
 ココナーディ姫は美貌のセシルを大いに気に入った。迎えた初夜、魔力の低い彼女はセシルと一夜を越え魔力酔いを起こし、大いに吐き白目を向いて倒れた。酷い魔力酔いで一週間寝込んだ。
 
 懲りたココナーディ姫は、それ以降セシルとの閨を断固拒否した。
 セシルも『貴方をお慕いしております』と愛を誓った妻が痙攣し吐く姿に衝撃を受け、無理に交わることを望まなかった。
 ただ、肌を合わせなくとも彼なりに妻を尊重し大切にしてきたつもりだった。
 欲しい物は全て与え、にも寛容的だった。

 四年経った頃事件が起きた。聖王の側室、双子姉のサリナーディが妊娠した。
 出かしたと沸き立つリーバイ国に聖王は淡々と告げた。お腹の子から聖なる力を一切感じないと…そう、サリナーディ姫は浮気していたのだ。 

 離宮は聖王以外の男性の立ち入り禁止。サリナーディ姫は側室の住まう離宮から一度も外に出たことがない。
 調査の結果、離宮の外から頻発に遊びに来ていたのは妹姫のココナーディだけだった。

 二人は双子。
 見た目がそっくりだった。頻繁に入れ替わりサリナーディは城下町を遊び歩いていた。
 そこでお気に入りの男を見つけ、妹と協力しセシルに内緒で屋敷に囲い込んだ。姉妹で共有し日々楽しんでいたそうだ。 
 
 結果……サリナーディ姫は姦淫罪で死刑。手を貸したココナーディ姫はセシルと離縁後、身分を剥奪され永久蟄居の身となった。


 離縁以降、セシルは決まった女は作らなかった。欲が溜まれば娼館に行き、主人お薦めの魔力の高い娼婦を高金額で買う。娼婦にもれなく吐かれ失神された。
 繰り返すうちに『娼婦殺し』の有り難くない異名が付き疎遠されるようになった。 

 セシルの肩書きや見た目にすり寄ってきた自称魔力の高い女たちも、一度交わると手のひらを返した。まるでおぞましい物のようにセシルを見るのだから、たまったものではない。
 
 セシルも毎回、吐く女を見るのもそれを介抱するのも億劫だった。介抱しても罵声を浴びせ去って行く。虚しさに心が擦り減り疲弊するだけ。全力で欲望をぶつけたることなど、夢のまた夢。

 自分を磨り減らし女と交わるより右手のお世話になった方が楽である。
 一人で生きる覚悟を決めても、世間は優秀なセシルを放っておいてくれない。貴族や王族からうちの娘ならば大丈夫だと婚姻を薦められた。
 
 御託を並べ断るのも面倒になり、それならば…口づけをして、それでも魔力酔いを起こさもなければお受けしましょうと伝えた。

 口づけはいわば、試金石だった。破廉恥だと怒り出す貴族の親ももちろんいた。
 口づけの微々たる魔力で吐くようでは、セシルと夫婦の営みなど出来ない。口づけだけで吐く令嬢を冷めた目で眺めた。 

 自分の子供など到底望めない。
 俺は一人か、それも悪くないかもしれない。
 
 ただ……心残りなのは、父と母に孫を抱かせて上げられないことだけ。 



 砂漠を北上し、聖都の第六師団に繋がる唯一の遠方転移魔法陣の設置された砦まであと2キロ。
 突如として眼前に蜃気楼のように浮かびあがった塔。見上げるほどの高さがある。

「なんだこれは?いつの間に出来たんだ?」
 セシルが思わず呻き声をあげた。 


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