60 / 74
事件は続くよ②
しおりを挟む「ねぇ、今ちょっとだけ時間ある?」
「レオナさん? どうかされたんですか?」
昨日のお風呂の中でリディアちゃんに話した、冒険者にアクセサリーを貸す話について、早速実行に移してみた。
最初に声を掛けたのは、一番下のF級からB級まで、たったの二年で駆け上がってきた、私が目を掛けているパーティの一つだ。
その中で、パーティの要とも言える薬師の少女に声を掛け、ギルドの個室へ招き入れた。
「この個室って、依頼者がギルド職員へ依頼の相談をする部屋ですよね? 私、初めて入りましたよ」
「まぁ、依頼を受ける側の冒険者は、あまり入る機会は無いわよね。でも、依頼者の個人情報や、報酬の話なんかを大っぴらな場所でやる訳にもいかないから、防音魔法が施されたこの部屋で……って、脱線したわね。本題へ入りましょう」
「は、はい。あの、私たちのパーティが、何かやらかしたのでしょうか?」
「逆よ。優秀で、かつ信頼出来るからこそ声を掛けたの。もちろん、悪い話ではないわ。ちょーっと協力して欲しいのよ」
目の前の少女が小さく頷いたので、今朝リディアちゃんから借りてきた、木の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。
リディアちゃんの説明によると、これは身体や精神の異常に耐性を持つ事が出来る効果があるのだとか。
薬師は、その名の通り薬を用いてパーティメンバーの怪我を治したり、麻痺や幻覚状態を解いたり、逆に毒草などを用いて相手を撹乱したりと、魔物と戦いながらも冷静な判断力が求められる。
「……という訳で、このブローチをつけているだけで、パーティの危険度が大きく減るのよ」
「例えば、毒アゲハが使ってくる鱗粉攻撃で、パーティ全員が麻痺させられて全滅……なんて話があるけれど、これを身につけていれば麻痺が防げて、仲間を治療することが出来るって事ですか?」
「そういう事よ。毒アゲハの鱗粉は、風に乗って全員一気にやられちゃう事があるからね。とはいえ、絶対防御って訳ではなくて、効きにくいって思ってくれれば良いわ」
「えっと、そのブローチを買わないかっていうお話ですか?」
「いいえ。試行として使って欲しいの。もちろん料金なんてかからないわ。ただ、後で返してくれれば良いだけよ。その時、ちょっと感想とかを聞かせてもらうかもしれないけど」
「はぁ……まぁそれくらいでしたら」
半信半疑って感じだけど、一先ず一つ目のアクセサリーを渡し、次の冒険者を探す。
今度は魔力が上がるアクセサリーを渡し、次は敏捷性。あとは、スタミナを増やすとか。
いずれも信頼出来る子にしか渡していないし、きっといけるはずっ!
だってリディアちゃんのアクセサリーは、本当に凄いから!
きっと、ギルドのため、冒険者のため、そして依頼者のためになるはずよっ!
「レオナさん? どうかされたんですか?」
昨日のお風呂の中でリディアちゃんに話した、冒険者にアクセサリーを貸す話について、早速実行に移してみた。
最初に声を掛けたのは、一番下のF級からB級まで、たったの二年で駆け上がってきた、私が目を掛けているパーティの一つだ。
その中で、パーティの要とも言える薬師の少女に声を掛け、ギルドの個室へ招き入れた。
「この個室って、依頼者がギルド職員へ依頼の相談をする部屋ですよね? 私、初めて入りましたよ」
「まぁ、依頼を受ける側の冒険者は、あまり入る機会は無いわよね。でも、依頼者の個人情報や、報酬の話なんかを大っぴらな場所でやる訳にもいかないから、防音魔法が施されたこの部屋で……って、脱線したわね。本題へ入りましょう」
「は、はい。あの、私たちのパーティが、何かやらかしたのでしょうか?」
「逆よ。優秀で、かつ信頼出来るからこそ声を掛けたの。もちろん、悪い話ではないわ。ちょーっと協力して欲しいのよ」
目の前の少女が小さく頷いたので、今朝リディアちゃんから借りてきた、木の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。
リディアちゃんの説明によると、これは身体や精神の異常に耐性を持つ事が出来る効果があるのだとか。
薬師は、その名の通り薬を用いてパーティメンバーの怪我を治したり、麻痺や幻覚状態を解いたり、逆に毒草などを用いて相手を撹乱したりと、魔物と戦いながらも冷静な判断力が求められる。
「……という訳で、このブローチをつけているだけで、パーティの危険度が大きく減るのよ」
「例えば、毒アゲハが使ってくる鱗粉攻撃で、パーティ全員が麻痺させられて全滅……なんて話があるけれど、これを身につけていれば麻痺が防げて、仲間を治療することが出来るって事ですか?」
「そういう事よ。毒アゲハの鱗粉は、風に乗って全員一気にやられちゃう事があるからね。とはいえ、絶対防御って訳ではなくて、効きにくいって思ってくれれば良いわ」
「えっと、そのブローチを買わないかっていうお話ですか?」
「いいえ。試行として使って欲しいの。もちろん料金なんてかからないわ。ただ、後で返してくれれば良いだけよ。その時、ちょっと感想とかを聞かせてもらうかもしれないけど」
「はぁ……まぁそれくらいでしたら」
半信半疑って感じだけど、一先ず一つ目のアクセサリーを渡し、次の冒険者を探す。
今度は魔力が上がるアクセサリーを渡し、次は敏捷性。あとは、スタミナを増やすとか。
いずれも信頼出来る子にしか渡していないし、きっといけるはずっ!
だってリディアちゃんのアクセサリーは、本当に凄いから!
きっと、ギルドのため、冒険者のため、そして依頼者のためになるはずよっ!
50
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる