悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

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公妾なんてお断りです

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「………わかりました。それで、貴女はジャスティス王子に笑顔を向けたと言うわけですね」 
 閻魔大王のように怖い顔の旦那さまに、なぜか責められる展開です。 

 旦那さまの執務室に、私、旦那さま、シャーリングさん、スージーさんと集合して作戦会議もとい説教タイムですか? 
 シリウスは、ミミさんに子守りをお願いしてきました。

「ええ~っ!私が悪いんですか?いくら気持ち悪くても、一刻の王子様を蹴飛ばせませんよ」
 
「おもいっきり蹴飛ばして、玉でも潰してやりゃあよかったのにな」 
 ふんとスージーさんは鼻を鳴らす。ひええっ、玉潰しですか?無いけど想像しただけで痛そうです。     
 旦那さまとシャーリングさんがなんとも言えない顔で自分の股間に視線を下ろした。 

「こほん……蹴飛ばさなくて正解ですよ奥様。それを脅迫材料に無理やり公妾にされかねませんので」
 白い髭を撫でて、シャーリングさんが褒めてくれた。 

「うう、シャーリングさん優しいです~っ。発言と思考回路おかしい王子に肩を触られて、キモくて吐きそうなのをなんとか耐えたんですよ~っ!」 

「………っ!肩まで……触られたのですか?」 
 唸った旦那さまが私の肩のゴミをぱっぱっと払うように手を動かす。あのう、触られたの結構前ですから。
 
「……ヴィヴィアン、貴女は隙が多すぎます。今後は私以外の男にむやみやたらに笑顔を振り撒かないように」 
  
「ええ?やっぱり私の責任ですかー?旦那さま一筋なのに酷いです」 

「シオン団長……奥様に悪い虫が付かないように必死だな。まぁ、団長が毎日マーキングしてるから、獣人の雄はつかねぇけど、人間の雄には匂いはわかんねぇもんな」 
 うんうんと頷くスージーさん。ほぼ毎日のように抱き合うのにそんな理由があったなんて。嬉しいなぁ、旦那さまが私に固執してくれてる。 

「スージー、私は必死ではありません。妻を管理するのも夫の勤めです」  
 誤魔化すように早口な旦那さま。耳がピクピクしてますよー?
 かわいいです。顔が自然にニマニマしちゃう、緩む頬、赤くなる頬を抑えて旦那さまを見上げた。 

「ああ、もう大好きですよ旦那さま」 
 ギュウと旦那さまの腰に抱き付いた。 

「知っていますよ……貴女は私が大好きなことは。貴女の気持ちを謀るつもりはもうありません」
 抱きついて旦那さまを見上げる。その武骨な手が私の頬を撫でた。 
 苦渋の表情を浮かべ旦那さまは続けた。  
 
「……王家は宗教上離縁出来ません。公妾なら離縁しなくてもなれます。
 事実上ジャスティス王子の公妾になれば、無能なミリア妃に変わり公務をこなすことになります。それに、世継ぎの子供を孕めば、ジャスティス王子は立太子に擁立される。貴女は産まれた子供の生母として城に迎えられ大切にされでしょう。公妾の貴女の発言権も決定権も増し、国政に参加できますよ。公爵家はもろ手をあげて大喜びしますね」
  
 ええ?何が言いたいの?旦那さまは?? 
 
 さらりと髪を鋤く手つきは優しいしに、言われた内容は、私に公妾を薦めているかのよう。目の前が真っ黒になる。 

「そんなぁ、旦那さまは私がジャスティス王子の愛妾になってもいいんですか~?奥さんを差し出して旦那さまに良いことあるんですかー!?」 
 旦那さまの腕を掴み、涙声で訴える。 

「マクガイヤ家に利点はありますよ。 
ジャスティス王子に貸しを作り、立太子され王に即位されたら、お礼に便宜を図って頂けるでしょう」
 
「うそっ……シャーリングさんまで、私に公妾を薦めるんですか? 
 私は権力に興味はありません。ジャスティス王子に触わられると考えただけで吐きそうなのに。旦那さまの子供しか欲しくないです。公妾になんて絶対になりませんから!」ポロっとついに泣いてしまった。 

「おいっ!シオン団長、シャーリング、ふざけるのもたいがいにしろよな!奥様泣いちまったぞ。本気で公妾にされると心配してるだろうが」 
 スージーさんが怒鳴ってくれた。 

 え?おふざけ? 
 交互に旦那さまとシャーリングさんを見ると、二人とも肩を震わせている。 

「まさかっ!二人とも私を騙したんですか?!」 

「くくっ、騙していません事実を述べたまでです」
 口許を抑えて旦那さまが笑っていた。笑顔も素敵ですけど。純粋な私を騙すなんて酷いです。 

「ホッホッ、薦めてなどいませんよ。奥様は落ち目のジャスティス王子よりシオン様を選ぶに決まっておりますから」誇らしく胸を張るシャーリングさん。

「二人とも性格悪いよなー。奥様が絶対シオン隊長を選ぶとわかってるから出来ることだぜー」  
 心底あきれたようなスージーさん。
 
「まあ、確かに選びますけど……酷いです」
 むううと、涙に潤んだまま旦那さまを睨む。
 
「泣かせてしまってすいませんでした……少しからかいすぎましたね」満足そうな顔をしたあと、手で涙を拭い謝った。そして、頭を撫でてくれた。
 
「……許しません」 
 ジトーっと旦那さまを睨む。

「ヴィヴィアン??」
 私の剣幕に旦那さまは怯んだ。 

「罰として今度のお休みにデートして下さいね?シリウスと三人で町にお買い物に連れてって下さい」
 
「それでは罰になりません。ただ貴女が私とデートしたいだけでしょう?」 

「はい!デートしたいです」
 
「…そ、そうですか」  
 どこかそわそわした様子の旦那さまに、再び抱き付いた。罰として可愛い洋服と美味しい食べ物を奢ってもらわないと!
 
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