悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

文字の大きさ
上 下
31 / 74

お酒は飲んでも飲まれるな②

しおりを挟む
 
 あわわ、憧れのお姫様抱っこですよ!テンション高々に旦那さまに運ばれる。たくましい腕がしっかりと私の肩と太ももを支えてくれてる~っ!痺れます。 

 上着の隙間から見えるいつもの寝室の風景。優しくダブルベッドに下ろされる。 

 このまま、旦那さま襲ってくれないかな?上着が頭から取り去られ、期待に潤んだ瞳で旦那さまの姿を追う。旦那さまはテーブルに用意された水差しからコップに水を汲むと私に手渡した。目を合わせてくれない。スッと視線が合わないように反らす。 
怒ってる?なんでだろう?仕方なく水を飲んだ。
 
「……お酒は私と二人だけのときに飲むようにしてください」  

「なんでですか?お酒美味しいのに~」 
 移動とお水で呂律は戻ったけど、酔いどれのふわふわした気持ちに水を刺され、素直に了解なんて言えない。 

「私、みんなと初めてお酒飲めて楽しかったですよ?旦那さまも一瞬に飲みましょうよ」 

ですか?」 
 旦那さまの雰囲気が一変した。 

「へ?」 
 トンと、旦那さまが私の肩を押す。乾いた音をたて柔らかいベッドに押し倒された。旦那さまは私を囲うように上にのし掛かかる。 

 たくましい左手が顔の横に、右手でぐっと私の顎を掴んだ。

「ヴィヴィアン……酔った自分が皆にどんな顔を晒しているかわかっていますか?」
 低く呻くように言われても怒っている理由がわからない。 
 
「えーと、そんなにマヌケ顔でしたか?」  
 もしかして奥様として、旦那さまが怒る失格もののだらしない顔をしてたとか? 

「違います……貴女がほんのりと頬を赤らめている姿は、妙に色気があって艶っぽく見えます。男を無意識に誘い激情を煽っています。野放しにするには危険すぎます。そこら辺の雄に襲われかねません」
 
 それって、旦那さまもそう思ってくれてるってことですよね? 
 私の心配と嫉妬もしてくれてるし。ドキドキして嬉しいな~。ふわふわとした酔いの思考のままに素直に聞いた。

「……旦那さまも、そう思ってくれますか?」 
「なっ!」  
 腕を伸ばし、旦那さまを私の胸に抱き寄せた。ポヨンと旦那さまの顔の重さの分だけおっぱいが揺れれ、綺麗な顔が胸に沈む。 

「ヴィヴィアン、離しなさい襲われたいのですか?」 
「襲われたいです旦那さまに」
 即答すると目の前でブワッと大きく獣耳が膨らんだ。ぺろり細い先端を舐め、ふっと内側に息を吹き掛けながら艶っぽく囁く。
 
「次の閨まで我慢出来ません。旦那さまとエッチしたいです……ダメですか?」 
 ぶるりと旦那さまの耳が大きく震えた。
 
「くっ、貴女は我慢なんてしてませんよね? 
 毎夜毎夜、まるで痴女のように私に体を擦り付けて足を絡めているじゃないですか?」 
 
「ええ~?私の秘密の至福タイム、バレてたんですか~?」  
 旦那さまが寝付いたと思ったから、心行くまでおもいっきり擦りついて甘えた。ものすごく恥ずかしい。

「バレるに決まっていますよ……貴女が寝付くまで私は寝られない。ずっと起きているんですから」 
 胸から顔を離した旦那さまにギリッと睨まれて、酔いで高揚しふわふわした気持ちが萎んでいく。 

 そうだった……お姉さんは悪役令嬢で王子妃ミリヤさんを襲わせようとしたり、産まれたばかりのシリウスを害そうとした油断の置けない人だった。旦那さまは安心して一緒に寝られない。だから、夜中に唸っていたんだ。 
 
 気づいてしまった……私は旦那さまが大好きだけど、旦那さまはこれっぽっちも私のことなんか好きじゃないんだって。シリウスために家族として受け入れてくれただけなんだって。 
 その証拠に、一度も好きと言われていない。酔った私の思考は乱気流のように浮き沈みが激しかった。しかもマイナスよりに。

「酷いっ!旦那さま乙女心を弄んで!」 
 私は、目の前の旦那さまの胸板をぽかぽか叩いた。目頭が熱く鼻がツーンとするううっ、泣きそう。 

「ヴィヴィアン、落ち着いてください!乙女心を弄んでいません」 

「弄んでますよっ!隣に私が居たら安心して寝られないほどの私のこと嫌なんですよね?」
 涙がポロポロ流れて頬を伝う。黒い思考がとめられない。 

「違います!嫌っていません」 
  
「違いませんよ! 
 私はこんなに旦那さまが好きなのに、一度も好きと返してくれません! 
 それに、隣に寝て擦り寄っても、今こうしてエッチしたいって誘っても手を出してもくれません」 
 
「………私に手を出されたかったのですか?」 
 ポカポカ叩かれながら、笑みを浮かべ旦那さまは私をぐっと抱き寄せた。質問に頬を染めてこくりと頷く。 

「………私に好きと言われたいですか?」 
 確認するように言われて、ゆっくりと指で唇の形をなぞられる。それだけで期待にぞくりと皮膚が粟立つ。ふしくれだった指に口づけを落とす。 
 
「あっ。ちゅっ…………言われたいです」 
 
「……そうですか」  
 満足したように旦那さまは言った。

「……貴女が好きですよヴィヴィアン。 
 隣に居たら襲いたくて仕方ないほどに。毎夜毎夜、貴女は無防備に私に体を擦り付けて足を絡めてきた。襲いたいのを唸ってやり過ごし、貴女が寝付くまで必死に耐えた。今まで、私がどれほど我慢してきたかわかりますか?」 
 アイスブルーの瞳が黒く淀んだ光を湛えた。ギラリと煮えたぎった男の人の欲望だった。
  
  
 旦那さまの言葉が黒い思考を浄化していく。そっか、旦那さまが眠れないのも唸っていたのも私を襲いたくて耐えていたからなんだ。 
 好き……。 
 旦那さまが同じ気持ちを返してくれた、嬉しくてまた泣きそうだ。 

「これからは、我慢しないで下さいね」 
 泣き笑いの顔でそっと旦那さまの頬に触れた。 

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

処理中です...