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媚薬事件の余熱②
しおりを挟む媚薬事件の翌日、私はベッドの上の住民です。
事件後直ぐに屋敷の医師に応急処置してもらっているのに。早朝わざわざ王城から派遣された医師に再び診察されて、改めて背中の打撲傷と診断されました。薬草湿布と痛み止めの薬を処方され、念の為、2日間の安静を言い渡されてしまったよ~。3日目に再診察をして、性交に耐えられと判断されたら閨の許可が下りるとのことです。
本音では薬は苦いし、薬草湿布は臭いので遠慮したい。でも、旦那さまとの閨のために我慢するのだ。
そうっ!閨っ!!
大義名分のもと公然と旦那さまとエッチ出来るという一大イベント。
この日なら端正なお顔にちゅうして、筋肉を触りまくって愛でても怒られないはず!
前回は気付いたらお姉さんの体で、挿入されてた状態。戸惑うばかりで快感とかなく、何がなんだか解らなかった。ああ、思い返せば勿体ない!せっかくおチンポ入ってたのに。もっと堪能すればよかったよ~。旦那さまのあんなご立派な美術品のようなおチンポで、攻め立てられたらきっと気持ちいいに違いない。難しい中イキとか出来るようになるかも。
旦那さまも若い雄!このお姉さんのけしからん体で、押してめくるめく官能の世界に引き摺り落としたら少しは好きになってくれないかな?
でも、シャーリングさんが旦那さまってハニートラップに引っ掛からないって言ってたから難しいかな……。
それに私、処女だったし、手練れたエッチ技も持ち合わせていない。スージーさんにオススメの閨の本を教えてもらおう。旦那さまを陥落させる方法を悶々と考えているとドアがノックされた。
「おはようございます奥さま。裁縫箱をお持ちしました」
「ミャウ~っ」
入室してきたのは依頼した裁縫箱を持ったミミさんと抱っこされたシリウスくんだった。
シリウスくんは朝に診察を受けて、体は正常。普通の生活を送って大丈夫とお墨付きをもらっていた。シリウスくんは私のお膝の上、いつもの定位置で丸くなる。
「ありがとう!ミミさん。早速お願いします」
「まず始めに縫う練習をしましょう」
ベッドから動けないので、お勉強は半分に控え、シリウスくんの誕生日プレゼントのファーストシューズ作りに時間を使う。なにせ誕生日は来週なので時間がない。
ずぶの素人、おまけに針を持つのは小学生の家庭科ぶりの不器用な私に果たして作れるかな~?
今日は基本の玉結び、玉止めを教わり、直線縫いでパッチワークを縫う予定。
ファーストシューズは玄関に飾ると幸せが訪れるとか、子供のいない夫婦が飾ると子供を授かれるとか親から聞いた。
それは元の世界でのお話、作って下さいと泣きじゃくったミミさんの様子から獣人にとってもっと重要な意味があるのかも知れない。
「ミミさん、もしかして獣人にとって手作りのファーストシューズを送ることはに深い意味があったりしますか?」
「……獣人は獣の姿で産まれることが大半です。母親は子供のご多幸の、子供が健やかに育ち1日でも早く人型に成れるよう願いを込めて贈るものなのです」
ミミさんはとても悲しそうに眠るシリウスくんを見つめた。
シリウスくんが産まれる前、お姉さんに作るよう進言したミミさんに「お腹の子は醜い獣ではなく人間だわ」と、ミミさんを罵倒し拒否したという。
お姉さんにとっては意に染まない結婚と出産、しかも産まれた子供は毛嫌いする獣人でさぞかし絶望したことだろう。お姉さんにも同情の余地はあるけども、シリウスくんを蔑ろにして傷付けたのは到底赦せないよ。
「シリウスくん産まれた時に作れなくてごめんなさい。ママ不器用だけど頑張って作るからね~」
そっと柔らかい毛並みを撫でる。
今さらファーストシューズを送られたぐらいで、直ぐに人型に成長するとはミミさんも私も思っていない。でも、愛されていると感じて少しでも心の琴線に触れてくれたら良いな~。
気合いを入れ腕捲りすると、ミミさんの指導のもとチクチクと縫い始めだのだった。
午前中一杯お裁縫。午後は新たな怪我を追った私を休ませるため少しの座学と読書タイムとなった。休憩時間にシリウスくんとお昼寝したり戯れた。お昼もおやつもお部屋で一緒に食べ私の体に体の一部をくっつけたがっていました。ママ充電器ですね!
窓から射し込む日差しが斜めに橙色を帯びてきた、もう夕刻になった。
はあっ、私は指先を見つめ自室のベッドの上で大きくため息をついた。シリウスくんは私の投げた毛玉を床に転がして遊んでいた。
扉のノックと共に入室してきたのは騎士団帰りの旦那さまだった。朝起きた時はもうお仕事で居なかったのでの夕べぶりの旦那さまのお姿です。
白い騎士服が凛々しい。素敵~。目に焼き付けて、枯渇した旦那さま成分を補給しないと。
「あ、旦那さまお帰りなさい!お出迎え出来なくてごめんなさい」ベッドの上から声を掛けると、怖い顔の旦那さまはずんずん私に近づくと左手首を掴んだ。
「怪我人の出迎えは不要です。それより指先の包帯はどうしたのですか?」
「え~と、これは……その」
自分の不甲斐なさに言葉を濁していると、旦那さまは左手首を掴んだまま、険しい顔をスージーさんに向けた。
「スージー。なぜヴィヴィアン嬢は、こんなに酷い怪我をしているのですか?
鳥から報告を受けていませんが?怪我をしたのに私に報せなかったのですか?」
ぴきんと空気が凍りそうな冷気を放ちスージーさんを問い詰める。
「ちょっと!待って下さい!旦那さま!」
「おいおいっ!シオン隊長落ち着けよ!誤解だ。奥さまの傷は全部縫い物しようとして自分で自分を刺した傷だぜ!」
「…………はっ?」
「そうです!旦那さま!不器用過ぎて自分に針を刺して縫うところでした~」
「驚いたよ!アタシより縫い物の下手な奴初めて見たぜ」
「……スージーより下手なのですか?」
大きく頷くと、旦那さまは眉間の皺を押さえた。
「……ミミより貴女がシリウスの誕生日プレゼントにファーストシューズを作ると伺いましたが」
「はい、作る予定です。でも、私縫い物苦手なんで練習して頑張って作りますよ!」今日午前中掛けて作成したパッチワークの切れ端を旦那さまに見せた。
「………これは血塗れの雑巾ですか?」
「ひ、酷いです!旦那さまー!」
「ぶっ!あははっ~、シオン隊長も正直だな」
スージーさんが大爆笑した。
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