悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

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悪役令嬢だって謝罪します

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「大丈夫ですか!?」  
 
 ミミさんの泣き声に慌てた様子のシオンさんとシャーリングさんが部屋に駆け込んで来た。少し遅れてお医者さんが黒いカバンを下げて登場した。 

なななんと、シオンさんっ! 
いや、結婚してるなら旦那さまと呼ばせていただこうっ! 
 銀縁眼鏡かけてるよ~っ!!眼鏡属性きたわーっ!!賢さアップして益々凛々しい魅力爆上がり。 
 眼鏡クイっとして、私を萌え死にさせるつもりなのかーっ!

「ああ、眼鏡も素敵だわ」 
 声に出ていたみたいで、旦那さまは目をハートにしてる私を不審者のように見た。その、冷たい瞳もカッコいい。 

「……素敵?」  
「……お、奥さまっ?」 
 シャーリングさんと、ミミさんが戸惑いの声をあげる。 
 
 
「貴女がシリウスに触れるなんて、雪でも降りますかね?」
 旦那さまは、イヤミたっぷりに言うと私にスリスリしている子猫を奪い抱き上げた。 
 私から引き離され、子猫は「ナーッ!!」っと不満そうに鳴く。 

「あの……旦那さま……私がこの猫ちゃんを産んだって本当ですか?」 

「……本当ですよ貴女と私の子供です。獣人は出産の比較的楽な獣姿で生まれることが多いのです。まあ、貴女は獣を産んだショックで錯乱し、生まれたばかりの我が子を放り投げようとしましたが……」

「え?」 
 まじかーっ!お、お姉さん……いくらショックでも自分の子供投げたら母親的にアウトよ。 
 夢の中で旦那さんとうまくいってないと嘆いていたけど、お姉さんにも問題があったのでは?  
 
 うーむ…お姉さん側の深い理由はわからないから一概には言えないけど。 
  
 今、お姉さんの体の私がなんと言ってよいのか正直解らない。けど、目の前の小さな命に怖い思いをさせてしまったのは事実。今後お姉さんとして良好な関係を築きたいし。なにより健気に鳴く子猫ちゃんが可哀想で。中身は違うけど、ここは潔く謝るのが人としてだろう。 

 私は毛布を剥ぐとベッドの上で正座した。姿勢を正し子猫ちゃんに三つ指付いて頭を下げた。

「怖い思いをさせてごめんなさい」  

「ナアーっ」 

「これは……!!まさか」
「まあっ、奥さまが……謝るなんてっ」 
 シャーリングさんが絶句し、ミミさんはおろおろするばかり。 

「これは何の……真似ですか?貴女が頭を下げるなんて」 
  
「……親でも悪いことをしたら、子供にきちんと謝ります」 
 そんなに驚くことかな? 
 親だって人間だよ。失敗もするし間違えることだってある。お姉さんさんのしたことは簡単に赦されることではないけど。 

「ナアーっ!ナアー!!」 
 子猫ことシリウスくんは旦那さまの腕の中から抜け出すと、私の太ももにすり寄ってくれた。 
 
 おでこを必死に擦り付けるさまが、なんともかわいいらしい。自分を害そうとした酷いお姉さんを赦そうとしてくれるのかな?ありがとう、本当に優しい子だね。 

 シリウスくんは、旦那さまを見上げると、「ミャウ」と一鳴きした。 

「……シリウス、わかりましたよ…仕方ないですね」
 まるで猫と会話しているような……旦那さまは肩を竦めると、鋭く私を見据え言い放った。 

「……今日の貴女はおかしい……まるで別人のようです」  
  
「さすがっ!!旦那さまです!そうなんですよ!私お姉さんじゃなくて、中身別人なんです~!」
  
 旦那さまの両手を掴むと自分風花のこと、夢の中で出会ったお姉さんと入れ替わったことを切実に訴えた。   

 
その、結果ーーー。 
  
 お医者の診察を受けることに。  

 現実逃避による記憶の錯乱、つまり記憶喪失と診断されましたわ。

 はあ………そりゃあ、信じられないよね?自分の身に起きた事じゃなかったら、私だって信じられないもの。
 

「お互い意に染まぬ婚姻でした。ヴィヴィアン嬢にとって子を成し2年経過しても、獣人の妻は憎悪の対象でしたが……」 
 
「違いますよ!本当に入れ替わってっ!」 

「わかりましたよ……記憶を失くすほど私のことがお嫌いだと」 

「嫌いじゃありません!!モロにタイプです!」 

「………は?」 

「旦那さまのこと好きです!」  
    
 言いきったよ私っ! 
 旦那さまからの返事はない、私は羞恥に徐々に顔が赤くなる。旦那さまの顔が見られず俯いた。 

 わかってもらおうと必死過ぎて忘れてたけど、この場には、お医者さんをはじめシャーリングさん、ミミさん、シリウスくんも居たのだ。シリウスくんは私の膝の上でお昼寝してたけど。 

 大勢の前で旦那さまに告白をしていたわけで、その場にいた人たちは固唾を飲んで私と旦那さまの成り行きを見守る。 

 
「…………今度は、懐柔作戦ですか?」  

「え?」 
  
 地を這うような底冷えする声に上を向く。綺麗だけど憎悪をのせたアイスブルーの瞳と視線が絡み合う。愛しい奥さんに向ける視線とは思えない。もしかして、お姉さんって旦那さまに嫌われてる?  

「学園の時のように今度は、私を意のままに操ろうと?」 

「ち、違いますよ!わ、私は本当に」 
 学園の時ってなに?お姉さんなにしたの? 

「私を操り離縁に持ち込みたいのでしょうけど、お忘れなく………ヴィヴィアン嬢は贖罪として私と結婚していることを」  

 お姉さんっ!贖罪って本当に何したのよ~! 
   
 
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