君に触れたい~結界をぶち破る戦い

豆丸

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君に触れたい~結界をぶち破る戦い

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「今回もわたくしの勝ちですね」 

 水銀色の絹のような長髪にアクアマリンの双瞳を持つ、彫刻のような美貌の少女ロベリア・ピューリッツァーは瞬き一つせず淡々と告げた。  
 中央大陸にある全寮制の名門シュレーク学園第二学部の生徒ロベリアは中央大陸から海を挟んだ、水の国サルンタの厳格な神官長の娘で感情に乏しく氷結姫と揶揄されていた。 

「今回はの間違いだろう?前回の大食い勝負は俺が勝った!」 

 芝に手を付きあぐらをかいたまま負け惜しみを言うのは、燃えるような硬い赤髪を無造作に一つに縛り、夕日のような橙色の眼光鋭い男前の少年リュカ・マキシム・ヴォストーク、中央大陸の東方ヴォストーク国の王族の少年だった。 

 二人は世界中から身分、種族関係なく幅広く優秀な学生を受け入れる中央大陸にある全寮制の名門シュレーク学園第二学部の生徒だった。 
 第二学部は剣術と魔法の両立を目指し勉学は難しいが、卒業後魔法剣士として各国から引く手あまたで困ることはなく、自国に帰っても活躍できる人気の学部だった。魔王が勇者に倒され100年経つが、いまだに魔物の脅威はなくならない。 

 二人がライバル関係と呼ぶにはリュカがロベリアに一方的に勝負を挑むようになった切っ掛けは、1年前の入学式に遡る。 

 シューレーク学園は入学式に入学試験で1番成績優秀な生徒が生徒代表で挨拶をする。 
 リュカは生徒代表は自分だと思っていた。座学の苦手なリュカは学園に入るため、寝る間も惜しんで机にかじりついて、文字どおり必死に勉強した。 
 しかし、名前を呼ばれ皆の前で挨拶したのはロベリアだった。リュカはたった一点の差で次席だった。 
 凄い奴はまだいた!負けず嫌いのリュカは悔しがり、「ロベリア、あんた俺に勝つなんて凄いな!あんたは俺のライバルだ!勝負してくれ!」 
 週間テストを始めて、剣の模擬試合、魔法の実技、体力と次々にロベリアに勝負を挑んできた。    
 絡まれたロベリアはたまったものじゃなかった、最初はひたすら冷たく無視していたがリュカはめげない。 
 ただでさえその美貌で男たちに騒がれ、女たちに疎まれていたロベリアは悪目立ちしたくなかった。 
 リュカは王族の血を引いてはいたが、驕ることなく快活で話しやすい、人に指南するのが上手く男女ともに人気があった。 

  
 入学式から2ヶ月たち、リュカをあしげにするロベリアを良く思わない生徒たちグループからある日校舎の裏に呼び出され、男女総勢六人に囲まれ詰め寄られた。 

「ロベリアあんた、リュカ様を無視して何様のつもりなの?」 
「何様でもありませんが?」 
「おい!リュカ様に負けるのが嫌で勝負しないのか?卑怯者!」 
「卑怯者もなにも、あちらが一方的に絡んでくるだけで、わたくしには意味のない勝負ですわ」眉一つ動かさず、淡々と言い返すロベリア。 「意味がないだと!生意気だな。あんなに気にかけていただいてるのに!」 
「気にかけてくれと頼んだ覚えはありませんわ」 
「なんだと!この女」男子生徒がわなわなと拳を振り上げた瞬間―――「止めろ!」地を這うような低い声で制止された。騒ぎを聞き駆けつけたリュカだった。 
「リュリュカ様!これはこの女が悪いので」 
「…邪魔するな…」 
「え?リュカ様」 
「邪魔をするなと言っている!俺はロベリアと勝負をしているんだ!」 
「は?勝負?」その場に居た全員の目が丸くなる。 
「ロベリアが俺と勝負をしてくれるまで諦めないという勝負だ!ノコノコ部外者が出てきて邪魔するんじゃない!」 
「し、しかし」 
「しかしも案山子かかしもあるか!俺とロベリア《こいつ》の一対一の神聖な勝負にどの面下げて横槍入れてんだ?邪魔だ!消えろ」 
 王の風格漂う迫力に全員が飲みこまれ、1人また1人と謝りながら逃げていく。 

 ロベリアを囲んでいた全員が居なくなると、リュカはロベリアに頭を下げた。ロベリアの眉が少し上がる。 
「すまなかった。俺が勝負したいばかりに怖い思いをさせた」   
「リュカさん頭を上げて下さい。わたくし怖い思いなどしていません」 
「嘘を言うな、少し震えている」リュカはロベリアの右指に触れた。ロベリアの指先は僅かに震えていて、ロベリアの眉がまた少し上がる。「今、ロベリア、驚いてるだろう?」 
「わかるのですか?」
「ああ、ロベリアは表から見えにくいだけで感情豊かだな」
「わたくしが感情が豊か……初めて言われましたわ」 
「そうか」 
「はい………リュカさんわたくし勝負いたしますわ」ロベリアはここで初めてリュカ個人に興味を持ち、もっと知りたいと思った。   
「やった!ありがとうロベリア。ところで記念すべき一回目の勝負は俺の勝ちだな!」リュカは高らかに勝利を宣言した。  





 この一件以来二人はことあるごとに勝負した。純粋な体力勝負は男のリュカに分があるが、魔法強化に秀でたロベリアも負けていない。    
  
 一方、魔力量が多くないリュカは剣技を磨き魔法力の弱さを補う。定期テストは総合的に判断されるため一位がロベリアになりリュカになり、激しく入れ替わる二人の勝負は学科の枠を超え、料理対決や迷子の猫探し対決、テーブルマナー対決、絵画対決、木登り対決などなど多択に渡った。
  
 今回の蹴鞠対決はロベリアが勝ったので、勝利数ロベリアが123回、リュカが121回。引き分けは3回、ロベリアが僅かにリードしていた。 


「なあ、次の勝負なんだが…進級パーティーのダンス対決にしないか?」 
 リュカはズボンについた芝を払いながら提案する。勝負に負けた方が次の勝負内容を決める二人の暗黙のルールだった。 
 
「ダンスですか?」  
「ああ、共にダンスしよう!どちらが優雅に長く踊れるかの勝負だ!」 
「リュカは……進級パーティーに異性がダンスを誘う意味を知っていますか?」ロベリアの眉が寄せられた。   
「意味?ただのダンスじゃないのか?」 
「はあ……リュカ、クラスメイトの女子からダンスのお誘いされませんでしたか?」 
「ああ!12人ぐらいに誘われたな。ダンスはロベリアと勝負するつもりだったからすべて断った!」 
「な、なんてこと」ロベリアは口許を押さえて無表情のまま、よろめく。 
「まずかったのか?」  
「まずいと言うより……ダンスは好いた人を誘うものなんです。リュカはもう少し男女の機微を学ぶべきだと思いますわ」 
「きび?」 
「そうですわ。皆さん勇気を振り絞ってリュカをお誘いしましたのに、勝負したいからと訳のわからない理由で断られ、お可哀想ですわ!」  
「俺にとっては大事な理由だ!ロベリアとの勝負は楽しい、ずっと続けていたい」 
 胸を張って言われ、ロベリアは小さなため息をついた。 
 
(本当に女心の解らない方です。勝負したいからとダンスに誘われた、わたくしの気持ちも察してほしいですわ) 
  
「ロ、ロベリアは…」珍しくリュカが言い淀む。   
「とにかく、ダンスの勝負はお引き受けできません!気になる女子をお誘いくださいませ」
「おい、ロベリア!」 
 引き留めるリュカを無視しロベリアは校舎に向かい歩き始めた。   
 お昼休みが終わりを告げる始業のベルが鳴り、リュカも急ぎ後を追った。 



 五時間目の授業歴史は講堂で行われた。講堂は床が階段状になっており、机が教師の教壇を囲うように置かれていて基本的に自由席だ。リュカはいつものように、ロベリアの隣に陣取るつもりだったが、2席続けて隣はすでに空いておらず別々に座る。

 残念だ、隣に座りたかった。 

 リュカは3席斜め前方のロベリアを視界に捕らえる。 ロベリアはぼそぼそ喋る講師の話を集中して聞く、筆記するのに邪魔な艶のある水銀色の髪を耳に掛けた。美しい貝殻のような耳が見えた。
 リュカは自分の手がロベリアの髪を滑り綺麗な耳の感触を味わう様を想像する。 
 ロベリアにれたい、さわりたい。 
 リュカはいつからか、ロベリアに触れたいと思うようになっていた。 
 しかし、恋愛事に鈍いリュカは意味を計りかねていた。 
 友達ライバルとしてふれあいたいのかそれとも―――この先にある感情を突き止めるには、実際にロベリアに触るしかない。 
 突き止めるつもりで、ぴったり密着できるダンス勝負に誘ったのにあっけなく断れてしまった。 

 俺以外の奴と踊るのか? 
 リュカは心がざわつく嫌な気持ちに囚われた。 
 独占欲――今までリュカに縁のなかった黒いものがこみ上げモヤモヤする。 

 ああ、触りたい。 

 きっとロベリアに触れれば全ての答えが出る、そんな気がした…。 




 六時間目の授業は、外部講師が担当の結界の応用とその相殺だった。 
 結界を自分の体の一部に膜を張るようにめぐらせ、あらゆる攻撃から守護する。 
 利点は余りに薄いため敵から結界を張っていると解らないこと。 
 欠点は連続攻撃に弱いこと。その相殺は体の一部、例えば手のひらなどに結界を張り相手の結界にぶつけ、結界で結界を破壊するかなりの荒業だった。 

 これだ!次の勝負は――リュカは思わず椅子から立ち上がる。  
 生徒と講師が一斉にリュカを振り替えり、「どうしたんですか?」と講師が訝しげに聞いてくる。 
「黒板が見えなかったので、すいません」と慌てて、謝罪すると席についた。




「ロベリアいいか?」 
 放課後ロベリアが教科書をまとめていると、いつものようにリュカが声をかけてきた。 
「はい、リュカ。今日も図書館に行きますか?」二人は放課後図書館で授業の復習をし、その後学校のカフェテラスでお茶を飲んだり、勝負したりと毎日一緒に過ごしていた。 
「今日はやめとく」 
「リュカ?」 
「それより、次の勝負。さっきの授業の結界の応用とその相殺にしないか?」
「先程の授業のですか?かなり高度で難しいと思いますが…」  
「ダンス勝負は断ったんだ今度はいいだろう?それともロベリアは勝つ自信がないのか?」 
 リュカが挑戦的に笑うと、実は負けず嫌いなロベリアは食いついた。 
「勝つ自信はもちろんありますわ。リュカこそ魔法は苦手でしょう?大丈夫なのですか?」 
「苦手だから練習するさ、逃げるのは嫌いだからな」 
 
(リュカの前向きなところは嫌いではありません)  
ロベリアの嫌いじゃないは大好きと同義語だと知っている者は少ない。 

 ロベリアとリュカは2週間後の勝負を約束しその日は別々に寮に帰った。 




 ◇◇◇  



 わたくし、リュカのご機嫌を損ねたのかしら?ロベリアは瞳を僅かに潤ませた。 

 10日前、次回の勝負の約束をしてからリュカはロベリアとまったく行動を共にしなくなった。
  
 いつもなら共に日課の朝の散歩をし、寮から校舎までの通学路を並んで歩く、授業の自由席は空いていたら隣に座る。 
 昼食を食堂で一緒に食べ、昼休みは勝負やゲーム。放課後は図書館かカフェテラスで夕刻まで勉強をし、寮に帰るまで1日一緒に過ごしていたのに…

 リュカから話しかけてくることもない、前はうるさいぐらい、ロベリア!ロベリアっと子犬のようにまとわりついていたのに…
  
 心無い女生徒達がロベリアに聞こえるように、飽きられただの、愛想がないから捨てられただの噂を流していることも知っていた。 
  
 ロベリアは唇を痕がつくほど強く噛みしめる、わたくしがダンスをお断りしたから?それとも表情の乏しいわたくしに嫌気が差したのかしら? 
  
 もしかして好きな人が……リュカの隣に座る女生徒を想像し、ロベリアの胸が針を刺されたように苦しくなる。

 しかし、学内で彼が他の女生徒達と仲良くしてるようにも見えなかった。リュカは休み時間1人黙々と分厚い本と格闘し、授業が終わると一目散に寮に帰ってしまう。 
 寮でリュカが女生徒と逢い引きしていてもロベリアにはわからない。シュレーク学園は男女交際に寛容で手続きさえすれば、門限まで寮に留まることができた。 
  
 リュカと話をしないと……ロベリアは授業中そればかりを考えて学習がまったく入ってこなかった。 

 
「待って下さいリュカ!」 
 終業のベルと同時に席を立ったリュカをロベリアは大きな声で引き留めた。 
 彼女にあるまじき声量にクラス全員の視線が注がれる。 
「どうした?ロベリア大きな声で」リュカも驚き目を丸くする。 
 自分の声の大きさにびっくりしたのはロベリアも同じだった。
「お話があります……一緒に来て頂けますか?」好奇の目に晒されながらもロベリアはリュカを人通りの少ない校舎裏に連れ出した。

 
 「ロベリアから話なんて初めてじゃないか?いつも俺からだから、嬉しいがどうしたんだ?」  
「わたくし、リュカの気に触る事をしたのでしょうか?」僅かな瞳の動き、睫毛の影で彼女が悲しんいるのがリュカには理解出来た。
 
「ロ、ロベリア?」
「答えて下さいリュカ」 
「ロベリアが俺の気に触る事なんてするわけないだろう!」ロベリアに嫌われたくないリュカは焦り弁解する。   
 
「それではどうして、いつものように話し掛けてくださらないのですか?朝の散歩も昼食も放課後も御一緒してくださらないのは何故ですか?」口をぎゅと結ぶロベリアの表情は硬い。 
 
「すまないロベリア…いつも俺が勝手に押し掛けるだけで、約束したわけじゃないから急に居なくても平気かと思った…」  
 リュカは嬉しくて顔がにやけていた、ロベリアが自分が居ないことに不安になり悲しんで詰め寄って来てくれたのだ! 
 
「平気ではありません。一年近く毎日一緒なのです。急に居なくなったら悲しくなります。リュ、リュカ?何故笑っているのですか?」 
 
「は、はは。すまん、俺が居ないと悲しいか……ロベリア俺は嬉しい。いつも俺だけが一緒に居たいのかと思ってた」 
 リュカは上機嫌で躍り出しそうな勢いだ。一方、ロベリアの頬がうっすら朱に染まりひくついていた。  
 
「では…一緒に居ないで何をされているのですか?」
「あー。なんだ、その、次の勝負に勝つため魔力の強化と結界の練習をしているんだ」照れ臭いのかリュカは頬をポリポリ掻いた。 
「次の勝負の練習…?それでは放課後直ぐに帰るのは……」  
「そうだ…放課後、俺は魔法は苦手だから練習している。今度の勝負は絶対に負けたくない、俺の全力でロベリアに挑みたいんだ!決してロベリアを避けていた訳じゃない」 
「そうだったのですが……一言いって下されば良かった」 
 
  他の女子生徒との逢い引きではなかった、ロベリアがほっと息を撫で下ろすと、リュカは不満顔でロベリアを見ていた。 
 
 「ロベリア余裕だな。まさか俺との勝負を忘れていたのか?」  
「忘れていたわけではありません……ただリュカが居ないことに気を取られていましたわ」 
「なんだか…弛んでるぞロベリア。俺は全力のロベリアに勝ちたいんだ……勝負しすぎで緊張感がないのか?」 
 リュカは腕組をし思案する。勝負をより面白く研ぎ澄まされた物にするには……リュカは閃いた。 
「今度の勝負。敗者は勝者の願いを一つだけ叶えるのはどうだろう?」   
「願いですか?……なんだか、賭けみたいで」厳格な神官に育てられたロベリアは良い顔をしない。 
「硬く考えずにたまにはいいんじゃないか?荷物持ちでも、犬の真似をしろでもいいぞ」 
 リュカが快活に笑うと硬くなったロベリアも解れる。それぐらいの些細な願いなら…… 
「仕方ありません、今回だけです」 
 
 のちに大変なことになることをロベリアは知らない。



 ◇◇◇



 来る決戦の休日、ロベリアは新品のシャツワンピースを着た、初めてリュカの寮室に招かれたのだ気合いが入る。 
  
 ワンピースは清楚な薄紫色で、首元はV字でロベリアの綺麗な鎖骨が映え、胸元からウエストにかけて貝殻ボタンがあしらわれ、ウエスト部分に白のリボンがベルト替わりに巻かれていた。ロベリアの体の凹凸を柔らかく浮かびあがらせ、清い中にひっそりと色香を漂わせていた。          
  
 学校ではしない薄い化粧も施し、髪の毛はハーフアップに縛り、毛先を弛く巻いて準備万端。   
  
 お昼ご飯にと男子寮に向かう途中のお店でお弁当と紅茶を購入した。輝くばかりの美貌に道すがら、男子生徒にやたら話しかけられる。お茶の誘いをお断りしていたら、時間がかかりリュカとの約束の時間を過ぎてしまう。



 ドキドキと高鳴る胸の音と呼吸を整え、リュカの寮の部屋をノックする。 
 
 「お、ロベリア大丈夫か?ロベリアが遅刻するなんて珍しいから、何かあったかと迎えに行くところだった…あ、」 
 ドアを開け、ロベリアの私服姿を見たリュカは目を見開き固まった。 
 
「すいませんリュカ。途中でお店に寄りましたら、たくさんの方々に話しかけられて、遅刻してしまいましたわ」 
「たくさんの…男か?」リュカの瞳に剣呑なものが混じる。 
「リュカ?」  
「あー。すまん」 
リュカは謝りながら彼女を部屋に招き入れ、鍵をかける。 
   
 ロベリアはおずおず部屋に入るとリュカにお弁当を渡し、部屋を眺めた。部屋の間取りは女子寮と変わらず二部屋続きて、一部屋に備え付けのベッドに机、洋服タンス。もう一部屋に魔力で使用する小さいキッチン、シャワーにトイレも完備されていた。 
  
 初めて入るリュカの部屋は勉強熱心な彼らしく所々に本が積まれて、沢山の付箋が挟まれていた。こざっぱりとして無駄な物がなく、清潔感がある。 
 キッチンには彼の故郷ヴォストークの名産品オライジが籠に山盛りで柑橘類の爽やかな匂いを漂わせていた。
 
「キョロキョロして、珍しいものでもあったのか?」 
「申し訳ありません、男性のお部屋は初めてで不躾に見すぎてしまいましたわ」  
「俺が初めてか嬉しい………絶対、他の男の部屋には行くなよ」
「え?」 
 困惑するロベリアの手を引っ張り、ベッドのある部屋に誘導する。毎日リュカが寝ているだろうベッドが否応なしに視界に入り、ロベリアは気恥ずかしく下を向く。 
 
(リュカの寝姿を想像してしまいましたわ…) 
 
「ロベリア座ってくれ」   
 リュカがベッドに座り、ロベリアにも座るように促す。 
「…す、座るのですか?」意識しすぎてどもってしまう。 
「ああ、今回の勝負の説明するから遠慮なく座ってくれ」 
 リュカに手を引かれベッドに腰をかけると二人分の重さでギシっと大きな音がした。 
 ベッドの軋む音すら恥ずかしいロベリアは、息を吸うとお腹に力を入れ「勝負、勝負ですわね。説明お願いいたしますわ」と言った。

 
「ルールは簡単だ。体の部位を陣地に見立てて取り合いをする。まず攻手は欲しい部位じんちを指定する。守手は指定された部位に結界を張り陣地を取られないよう守る、攻手も結界を張り相手の陣地にぶつけ先に結界が壊れた方が負けだ。攻守は交互に入れ替えて行い、手に入れた陣地は自分のものになる。お互い魔力が尽きるまで陣地を取り合い最終的に陣地が多い方が勝ちだ」 
 
「体の部位を陣地に見立てるのですか?」 
「ああ!そうだ。ロベリアが嫌なら今回は不戦勝で俺の勝ちでもいい。もちろん俺の勝ちだから願いは叶えてもらうぞ」 
リュカは挑戦的に笑う。 
「やりますわ…神官の娘として、戦わずして負けるわけには参りません」 

 
 ――こうして二人の絶対に負けられない戦いが始まった―― 


  
 二人の魔力の減少を同じにするため、お互いにリュカの部屋に防音魔法を展開する。  
「ロベリアが攻守の順番を選んでいいぞ、どうする?」 
  
 リュカが提供した勝負だ、アドバンテージは彼にあり、その上リュカは今日の戦いに備え、魔力の強化と結界の練習をしてきた侮れない。 
  
 魔力量はリュカよりあるロベリアの結界は織物のように縦に横に重ねて作る、強度はあるが魔力を大量消費するので連発は出来ない。 
 
(すべての陣地を守ることもリュカからすべて取ることも難しいですわ……大事な陣地だけ奪取、死守し後は捨てることも考えないといけませんね…)
 
「リュカが先にどうぞ」    
 ロベリアはリュカの出方をみることにした。
「解った!俺から始めるからな……俺はロベリアの耳が欲しい」   
「え?……み、耳、欲しいのですか?」ロベリアの声が上ずる。 
「ああ、毎日授業中、筆記するのに邪魔で髪を耳に架けていただろう?小さい綺麗な耳が見えるから、いつも触りたいと思っていたんだ」 
「…いつも…思っていたのですか?」 
「そうだ、俺の陣地ものにしたい」 
酷くきっぱり言われ、ロベリアの白い頬がうっすら赤に染まる。 
 
(わたくしったら、リュカは陣地として欲しいと言っているだけで深い意味はないのに……嬉しいと思ってしまうなんて、いけませんわ)
  
 ロベリアは意識を集中し自らの魔力を放出し繊細な結界を編んでいく、淡い光に包まれた結界を両耳に耳当てをするように展開する。 
 
「リュカ、結界をはりましたわ…いつでも結構ですわ」  
「解った、勝負開始だな!」 
リュカは手のひらに魔力を放出し、結界を展開していく、リュカの結界は炎の幕。 
ゆらゆら揺らめく手のひらの結界をロベリアの耳の結界にぶつけた。 

 ――ガガガ、、ガ、ギギ、ジュウ――  

 室内に結界がぶつかる音が響き、ロベリアの織物のような結界がリュカの炎の幕に焼かれ消えていく。 
 
「ふ、強度を上げないと」焦るロベリア。 
「させるか!」 
 ロベリアが魔法で結界を織り上げる隙を与えず、リュカの炎幕の魔力が上がり……ロベリアの結界は破られてしまう。 
「やった!俺の勝ちだ!」 
リュカは額に汗を滲ませ、笑った。 
  
(悔しいですわ。でも耳なら重要な陣地ではありませんし、取られても大丈夫ですわ) 
  
 頭や心臓、重要な臓器のある陣地を取られなければ大丈夫と思っていたロベリアは甘かった。 
 
「これでロベリアの耳は俺の陣地ものだ。触らせてもらうからな」 
 リュカの手が真っ直ぐ伸びてきて遠慮なくロベリアの耳に触れた。 
 
「あ、リュカ!な、何を」リュカを止めようとロベリアはリュカの手首を掴む。 
「ロベリア……ルール違反だ。手に入れた陣地は自分の物に出来るんだ。だから好きに触れる」親指と人差し指で耳輪を掴むとスリスリ触りながら下におり、ふにふにした小さな耳たぶを触り続ける。 
 
「や、やあ、リュカ……あ、ふ」 
くすぐったくて恥ずかしくロベリアから声が漏れた。 
「ヤバイな、ロベリア。お前に触ったらもっと触りたくなった…なんだこれは?」 
なおも執拗に耳に触り続けるリュカ。 
 
「リュカ、勝負のまだ途中です、わたくしの攻手ですわ。離れてくださいまし!」 
「すまん勝負の途中だったな。耳は俺のものになったし、いつでも触れるしな」さらっととんでもない発言をする。 
 
「それで、ロベリアは俺のどこに触りたいんだ?」 
「触りたいんじゃありませんわ。陣地として欲しいのです」
「ロベリアが俺を欲しいか……嬉しいな」 
 
「な、勝負としてですから、腕です。陣地としてリュカの腕を選びますわ」ロベリアは欲しいを回避することに成功したが、「何で、俺の腕が欲しいんだ?」とリュカは逃がしてくれない。  
「…理由を言わないといけませんか?」 
「俺も…恥ずかしかったがロベリアの耳が欲しい理由を言ったんだフェアじゃないな」 
率先して耳が欲しい理由を語っていた気がするのに、リュカの責める眼差しが痛い。 
 
「解りましたわ……剣術の授業で大剣をいともたやすく振っていらっしゃって、逞しい筋肉に、その…あの、さ、触りたいと、思いましたわ……リ、リュカこれで良いですか?」 
 
「良いに決まってる!ロベリアが俺に触りたいと言ってくれて嬉しい」リュカは満面の笑顔だ。 
「お早く、結界を展開して下さい」恥ずかしいロベリアはリュカを急かす。 



 
 「俺の負けだ、腕はロベリアのものになったから、好きなように触っていいぞ」リュカは袖を捲るとロベリアに腕を差し出した。  
「結構ですわ。わたくしは触りませんわ。それよりリュカ……わざと力を抜きましたね?」  
「まあな、すべての陣地は守れんし欲しい陣地もあるから戦略だな」リュカに悪びれた様子はない。 
「欲しい陣地ですか?」 
「あー、腹だな」 
「お、腹ですか、何でよりによってお腹が欲しいのですか?」 
「腹と言うか腰か?細くて折れそうだ、俺の陣地にしたい」
「っ!……もし、リュカの陣地になったら……耳のように、触るのですか?」恐る恐るロベリアは訪ねた。     
「当たり前だ。俺のものになったら好きなように触るさ」
 
「―――――っ!!」 
  
 ロベリアは驚き過ぎて声すら出ない、あんな耳のように執拗に触られたら堪ったものじゃない。お腹は、リュカが勝負の為にロベリアと過ごさなくなった寂しさからついつい甘いものに走り、脂肪がついたように思う。ロベリアは、気にするには細すぎるお腹に手を当てた。
 
(こんな弛んだお腹に触られたくありませんわ。魔力の消費を気にしている場合じゃありません、全力で死守しますわ)

  
  
 お腹を触られたくないロベリアは、豊富な魔力を駆使し結界を何重にも頑丈に展開し、リュカの結界の炎幕を押さえ込み消滅させた。 
  
 はあはあっと額に汗を浮かべ苦しい呼吸、ロベリアは魔力を大量に消費してしまう。 
 
「流石、ロベリアだな」 
 対するリュカは耳を取った時のような汗は見えず、欲しい陣地と言ったお腹を取られても悔しがりもしない。 
 
(―――まさか…) 
 
「はあ、はあ、リュカ……図りましたわね」 
 苦しい呼吸を整えながらリュカを睨む。 
「ああ、俺の本当に欲しい陣地は腹じゃない」  
 リュカはロベリアに魔力を大量消費させる目的で女性なら触られたくない、お腹を欲しがったのだった。 
 
「…はあ、本命を確実に手に入れるために私に無駄な魔力を使わせたのですね?」 
「そうだ、どうしても欲しい陣地があるんだ…」
 リュカは熱の籠った濡れた瞳で、前屈みになり呼吸を整えるロベリアを見下ろす。  
「ふう、リュカの……本当に欲しい陣地は何処なのですか?」訊ねたロベリアを無視しリュカは続けた。  
 
「………さあ、ロベリア勝負の続きをしようか?ロベリアはどの陣地が欲しい?」   
 
「ふう、ま、待って下さいリュカ…少し休憩させて下さいませ」 
 少しでも魔力を回復させたいロベリアだったが、リュカが許してくれるわけもない。
 
「ロベリアが休憩するその間、取った陣地を好きに触るが良いな?」リュカは耳を触りだした。
「良いわけありませんわ………わたくしの欲しい陣地はお腹です!」 
 また執拗に耳に触られたら堪らない、ロベリアは休憩を諦める。 
 
「解った、ロベリアは俺の腹に触りたいんだな?」 
 リュカは耳を触っていた手でロベリアの手首を掴むと鍛えられている自らの腹部に当てた。 
 
「あっ!リュカ、結界を展開していませんわ」 
 硬くて厚いリュカの体は服越しでも筋肉が整っているのが解る。 
  
 無理やり触らさせられ、ロベリアは手を引っ込めようとするが、リュカに押さえつけられて敵わない。ぐりぐりと手を動かされる。 
 
「はっ、触るのも良いが……ロベリアに触られるのも良いな」色っぽく息を吐かれた。 
 
(リュカがこんな表情されるなんて…男の人なのですのね) 
  
 ロベリアは指先から伝わるリュカの鼓動と表情に胸が高鳴りぽうっとしてしまう。 
 
「これで、俺の腹はロベリアの陣地になったな。次は俺の番だ……俺が欲しいのはロベリアの唇だ!」  
 
「えっっっっ?」 
  
 ロベリアは、ぽうっとしていたのに一気に覚め、リュカを信じられない気持ちで見つめた。 
 
「く、唇が欲しいのですか?」声が震えた。 
「ああ、どうしても…本当に欲しい陣地だ」 
先ほどのロベリアの問いを今、答えた。 
「…どうして唇が欲しいのですか?」   
 友達としては行き過ぎている行為、ロベリアの胸が期待に膨らむ。 
 
「……最初は友達としてライバルとしてロベリアに触りたいんだと思ってた。でも実際触れたら違った、もっともっと深く奥まで触りたくなった。触って自分だけのものにしたい…この気持ちは…きっと…」リュカはロベリアを抱き締めた。    
 
ロベリアの頬にリュカの胸が当たり、どくどくと心臓の音が聞こえる。
  
「ロベリア、あんたが好きだ。結界なんて何度でもぶち破ってやる……だからロベリア、俺の陣地ものになってくれ」

 期待以上のリュカの言葉にロベリアの顔は真っ赤なり、何か言おうと口を開くが言葉がでず、なんとか絞り出した言葉は――― 
「……もう、魔力がありませんの……わたくしの負けです。だから……リュカ、あなたの陣地ものになりますわ」ロベリアは潔く負けを認めた。


 ◇◇◇  


 どちらともなく引き寄せられ、唇と唇で触れあう。リュカもロベリアも初めて同士で拙い。
 啄むような口づけが徐々に深くなり角度を変え、お互いの荒い息と口づけの音がなまめかしく室内に響く。 
 
「ふっ。はあ、」  
 
 酸素が足らない、頭が痺れ思考が定まらない、体の奥が触れられていないのに熱がこもる。ロベリアが酸素を求め口を開けば、リュカが待ちかねたように舌を滑りこませ、熱い舌で口内を探索される。奥に潜んだロベリアの舌を見つけると絡めとり吸い付き、ぬめる粘膜が触れあう。 
  
 深く口づけたまま、リュカの右手が首筋をなぞり、服の上からロベリアの柔らかい膨らみに触れる。 
 
「はっ。ふっ…リ、リュカ」 
「はあ。俺のだ、俺の陣地ものだ…」 
優しく円を描くように持ち上げられ揉まれる。 
  
 ツンっと立ち上がった先っぽは触られず、布越しの愛撫にもどかしさが募り、身を捩る。  
 
「リュカ、あ、わたくし…」 
 直接触って欲しくて、ロベリアが潤んだ瞳でリュカを見上げると、震えるリュカの手がワンピースのボタンに掛かる。 
 
「すまん…上手く外れん」 
ボタンが外せなく焦るリュカの顔になぜだかロベリアは安心した。
  
 たどたどしく、一つまた一つとボタンが外されていき、ワンピースをストンと床に落とされ、真っ白い清潔感のある下着も取り去られる。 
  
 外気にぶるっと体を震わせれば、ロベリアを見つめるリュカの瞳が欲に染まる。リュカ自身も荒々しく服を脱ぎ捨て裸になるとロベリアの肩を掴み、ベッドに押し倒し上に覆い被さった。
  
 ロベリアが鍛え上げられた美しいリュカの上半身に手を添えれば、リュカの両手がロベリアの白くふわふわの雪山のような膨らみを包みこむように揉んでいく。 
 
「あっ、あっ、リュカ」 
 リュカが薄いピンク色の先っぽを掴み捏ね、引っ張るとロベリアから甘い声が上がる。 
 
「ロベリア、声、可愛いな。胸もこんなに膨らんで、俺に触られて気持いいか?」 
  
 ロベリアは恥ずかしく口を手で押さえ、いやいやするように頭を振る。 
 
「は、声聞かせないつもりなら…こっちも触るからな」リュカの手がお腹のくびれを撫で、下にたどり着くと、ロベリアの割れ目をなぞる。
 
「―――っ!」 
  
 髪と同じ薄い水銀色の茂みの間に滑りこませ、指先で中に触れる。初めてで余り濡れていないソコを指で無理に広げていく。 
 
「あ、くっ」 
「きついな、ロベリア」 
 ロベリアが痛みに顔を歪めれば、胸の先をリュカに咥えられ、赤子のように吸われる。 
  
 吸われるたびに、甘く痺れ、中が奥が熱くなる。リュカの硬い髪がロベリアの胸に触れチクチクし、過敏になった皮膚が粟立つ。 
  
 ロベリアの中が徐々に濡れて滑りが良くなり、きついながらも指を根本まで受け入れると、指を増やすを繰り返す。 
 
「ああ、あん、ん、ああっ。リュカ」ロベリアの頭が白く痺れる、甘い声を押さえられず体をビクつかせる。  
「は、ロベリア可愛い……くっ。早く入れたい」リュカの剛直が我慢汁でひくつき揺れた。 
  
 くちゅくちゅと指が三本入る頃には入り口は解され、滴る愛液でリュカの手首まで濡れる。     
  
「ロベリア、中も奥も俺の陣地ものだ」 リュカは、猛る剛直をロベリアの割れ目にあて体重をかけて沈めていく。 
 
「あ、あ、んっ―――っ」  
「ロベリア好きだ――」
  
 ぐぷ、ぐぷぷと狭い中を無理やり開き、ロベリアが痛みに逃げようと引いた腰をがっちり押さえ、中を穿ち最後の結界、処女膜を破る。      
 根本までみっちりリュカの剛直を押し込まれ、苦しい。処女だった証の血が太ももを伝い、ロベリアの目から涙が落ちた。 

「す、すまないロベリア。痛いか?苦しいか?」 
  
 リュカは唇でロベリアの涙を拭い、手で優しく髪に触れる。狭いロベリアの中で絞められ、リュカも苦しく額に汗が浮かぶ。二人とも荒い息を繰り返す。リュカに優しく触られるとじんじんとした中の異物感が薄らいでいき、奥に燻る何かの熱を感じる。 
 
「はあ、はあ、リュカも苦しいですか?」 
「くっ、は、ロベリアの方が苦しいだろう?落ち着くまで…は、動かないから安心してくれ」 リュカは、奥歯を噛みしめ必死に突き上げたい衝動に耐えた。 
 
(わたくしが初めてだから、労ってくださってるのですわ。あんなに汗をお掻きになって…) 
 
 ロベリアの胸がきゅうとなり、連動して中もきゅうとなり、無意識にリュカを追いやる。 
 
「ろ、ロベリア、中が蠢いて凄い……はあ、く、我慢、我慢だ」 
「ふふ、わたくしは大丈夫ですわ……リュカ、動いて下さいまし。リュカが苦しいとわたくしも苦しいですから…」 
「くっ、は、ロベリア…ありがとう。もう動く、痛かったら肩を噛め、いいな!」 

 余裕のないリュカに中を穿たれ揺すられる、狭い中を容赦なく擦られ、擦られる度に体は痛みだけじゃなく、快楽を拾いはじめる。 
 ロベリアは、とうとうリュカに腰を捕まれ揺すられるたびに、甘く鳴いてしまう。 
   
 羞恥に耐えきれずロベリアはリュカの肩に噛みついた、リュカが体をびくつかせた。
 
「可愛いな、ロベリア……出すぞ」  
「―――――――――っん!」
 リュカの抽送がより激しく鋭いものに変わり、ロベリアの奥に奥に…剛直でしか触れない届かない最奥に熱い迸りを解き放つ。 




 ◇◇◇ 



 進級パーティーの華やかな会場が一際大きく盛り上がる。一組の美男美女のカップルは会場の注目の的で二人が踊り初めると歓声が上がったのだ。 
  
 ロベリアは、リュカにプレゼントされた水色のドレスを纏い、息を飲むほど美しい。リュカにエスコートされ僅かに口角をあげた。     
 リュカはロベリアとお揃いの色のタキシードを着て野性味が薄れ、赤い髪が整えられ王子様のようである。 

 あの二人やっぱり付き合ってたのね…お似合いだ…羨ましい……などと同級生が囁きあうがリュカとロベリアの耳には届かない。   

 
 ダンスを数曲踊り、二人は飲み物を片手にパーティー会場から離れ、ベランダで休憩する。火照った体に冷たい水が染み渡る。ふうっと同じタイミングで息を吐き、目を合わせ微笑む。 
「ロベリア、進級パーティーにダンスを踊ってくれてありがとう」ロベリアの髪を触りながらお礼を言う。 
「リュカのお誘い大変嬉しかったです。わたくしこそ、一緒に踊れて夢のようですわ」 
   
「そうか、良かった。ところで…この前の勝負、俺が勝っただろう?だから、俺の願いを一つ聞いてくれ」 
リュカの願いは進級パーティーで踊ることだと思っていたロベリアは、目をパチクリした。 
「リュカのお願いは進級パーティーではないのですか?」 
「違うぞ、ロベリア」リュカはロベリアの手を引くと手の甲に口づけた。 
 
「俺の願いは、ロベリアと一生勝負することだ」 
「一生ですか?」ロベリアの声が歓喜に震える。    
「ああ!一生離さないからな!」リュカは高らかに宣言した。  

 

――2人の勝負は歳を取ってからも続けられ、子供や孫達を呆れさせたけど、それはまた別の話。
 
 
 おしまい。 

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みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.13 花雨

作品お気に入り登録しときますね(^^)

2021.08.14 豆丸

ありがとうございます! 
嬉しいです。

解除

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