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本編
しおりを挟む男の冷気を帯びた手が戸惑いながら、私の胸の膨らみを包み込んだ。揉むと言うより、ギュムギュムと上から押さえつける綺麗な手のひら。
「つ、冷たい!」火属性の私の肌には氷属性の男の肌は冷たすぎて、不満を口にした。
「わ、悪いっ」不馴れな男の様子に安心した。
「……ヒョウガ……あんた童貞か?」
「………そうだ。悪いか?」
「わ、悪くなどない……あんた、魔族の姐さんたちにモテてただろう?童貞なんて、意外だ」
「モテてなどいない………。っ………エンカお前は?」
「へっ?」
「へっじゃない!お前は……経験あるのか?」ヒョウガの深海色の暗い青の瞳が揺らぐ。
「…………………あったらどうする?」
「なっ!」
「………な~に、教えて欲しいのか?ヒョウガくんは!私が上になろうか?」挑戦的に笑みを浮かべると、ヒョウガは嫌そうな顔で私を睨んだ。
「いい!俺が上だ。お前を見下ろしてやる!……処女なら優しくしようと思ったが、経験者なら、遠慮などするかっ。俺のをぶちこんで、アンアン喘がせて孕ませてやる!覚悟しろっ」
「ああ、楽しみだ」
余裕ぶっこいてヒョウガを煽った私は処女だ。もう一度言おう、私はキスもまだのピカピカの処女なのだ。
なぜ―――火属性で炎を作り操る私、エンカと氷属性で水と氷を作り操るヒョウガ、反する属性の私たちが子作りする羽目になったのか……それは魔王様のいつもの気紛れから始まった。
◇◇◇
荘厳な魔王様の謁見の間に場違いな一畳ほどの小さな釣り堀があり、白い釣り糸が垂れていた。巨体を器用に丸め魔王様は釣りを嗜んでいた。齢二千年を越える魔王様は、角は何重にも捻れて年季を感じさせた、顔の皺や白髪に豊かな顎ひげ、見た目は好々爺そのもの。
しかし、魔界の誰もが知っている魔王様を怒らせたが最後国の一つや二つ簡単に滅ぶことを……。
忘れもしない100年前、人間の国ザイールが魔の領地の山の魔石に目をつけた。彼らは、魔王が国に災いを起こすと難癖をつけ侵攻してきたのだ。
戦いに飽きていた魔王様はのらりくらりと人間達を殺さないように押し返してきた。むやみやたらに人間を殺すと恨み、復讐の大義名分と共に、余計戦いが烈火して面倒くさくなる……と魔王様は仰った。
ああ、魔王様は、なんと慈悲深い方だ!人間など、復讐する気がなくなるほど、殺し尽くせばいいのに……私だったらそうしてる!
こんなに、慈悲深い魔王様を人間は怒らせたのだ。彼らは、禁呪を使い無理矢理異世界から勇者と聖女を召喚した。二人を騙し、隷属の首輪を付け酷使した。魔王様の玉座にたどり着いた二人はボロ雑巾のよう、血と汚水で汚れ、折れた手足を引き摺り、虚ろな瞳は何も映していなかった。
その後ろ、二人を盾にするように金ピカな国の王子と名乗る男が、高飛車に命令した。魔王を殺せと………。
四天王の私たちは戦慄した。瞬きもしない間に、王子の体は引き裂かれた。悲鳴もあげることもできず、呆然と見開かれた瞳。首だけの王子の髪の毛を無造作に掴み、ニヤリと笑う魔王様。
「殺しはしない、首だけで飼ってやる。お前も……馬鹿な王も、勇者と聖女を召喚した神官もな……」
私たち四天王と魔王様は、その日のうちに、ザイール国を滅ぼした。
魔王様は、城の痕跡を残すことを良しとせず、建物すべてを焼き払い、ザイール山を平らにし、湖をつくり地形すら変えてしまう。完璧な人間の国の殲滅に私は感動にうち震えた。ヒョウガは涙を流す私を醒めた目で見ていたっけ……。
ヒョウガも私と同じように人間に酷い目に合わされたのに、必要なく人間を殺したくないと甘ったれた奴なのだ!
私、エンカは人間に造られた魔族。帝国の魔力増産計画の一つで、赤ちゃんの頃から高濃度の魔力を注入して強制的に魔力を高め、魔族を造る。私は、赤ちゃんの頃から痛みを伴う様々な実験をされた……その結果が力が制御できないからと廃棄処分。魔王様が助けてくれなかったら今の私はない。
彼、ヒョウガだって同じようなものだ。氷の女神に懸想し、監禁陵辱した貴族と氷の女神の間に産まれ、女神監禁を国が見逃すかわりに国に差し出された人質。
彼だって魔王様が氷の女神と共に助けてくれなかったら、今だって人間のおもちゃだったろうに……人間を殺すことを躊躇う意味がわからない!
ザイール国を滅ぼした魔王様は、沢山の首のペットを暫く可愛がっていた、そのうちみんな腐ったが……。
勇者と聖女は首輪を外し、回復させて全ての記憶を抹消して、本来あるべき世界の時間に魔王様が戻されていた。異世界にまで干渉できるなんて、流石です魔王様。
「実はの~。四天王炎のエンカ、氷のヒョウガ二人を見込んで頼みがあるのじゃっ。」
「はい!敬愛する魔王様からの頼みなら、このエンカ、何でも致します!」
「おい、エンカ!話を最後まで聞かず、安請け合いするな、お前の悪い癖だ……」
「うるさいぞ、ヒョウガは!」
「この前も、安請け合いして、温泉掘らされたくせに忘れたのか?」
「わ、忘れてない……」
私は、ヒョウガから目を反らした。確かに、魔王様の腰痛のため、先々週手に入れた人間の町ナナカマで温泉を掘らされた。
「そうじゃ!その温泉なんじゃ、困ったことに温度がの~安定しないのじゃ」
「安定ですか?」
「少し入ると冷たすぎたり、熱すぎたり一定にならんのじゃ。儂の心臓がびっくりして寿命が縮むかもしれん」
「ま、魔王様の寿命が縮む!それは一大事です!」
「……一大事、大げさだなエンカは……。魔王様、今からナナカマの町に行き、温泉の水脈を確認し、エンカの炎か俺の氷で温度を適温に保てと言う命令ですか?」
「違うぞ、ヒョウガ!わざわざ温泉の温度の安定なんぞに貴重な四天王二人を毎回、行かせることなど出来ん!」
「はあ」
「……行かなくてよいなら行きませんが?」
魔王様の話の意図が解らず、ヒョウガを一瞥すると彼も戸惑いを隠せない表情をしていた。
「儂!思いついたのじゃ!炎と氷、両方使える人材を作ればよいと!そうすれば一人派遣すれば事足りる、名案じゃろう?」
魔王様は自分の左手のひらに右手をグーにして叩き、名案さを強調した。
「名案?作るとはどのように?いくら魔王様の命令でも、人体実験は……」私は酷い実験を思い出し身震いした。
「何を言うのじゃ!娘、息子のように思っちょる、お前たちに人体実験など、するわけなかろうが!」
「そ、そうですよね魔王様!」
娘と言われ胸がじーんとする。しかし、魔王様から発せられた次の言葉に凍りついた。
「エンカ、ヒョウガ……二人で子作りをするのじゃ。炎と氷を同時に操れる子を成せ。儂の腰痛緩和の為、頼んだぞ!」親指を立てぐっとする魔王様。
え?子作り?
こ、子を成せ?
うそ?誰と誰が――――
私と、ヒョウガ―――が……………。
「――――な、っ、なななな~!魔王様。止めて下さい。ヒョウガと子作りなど…。それに、反属性同士だと力の強い属性しか遺伝しませんよ!」
「儂は本気じゃぞ!強い属性しか遺伝しないとは決まっちょらん、試しに今から、部屋を貸してやるから、励めよ」
「ま、魔王様。あ、ヒョウガ…ヒョウガも何か言えよ。このままじゃ、私と子作りだぞ!」否定するであろう、ヒョウガに助けを求めた、しかし…。
「………俺とお前なら炎と氷、両方使える子が出来る確率は高いと思う。…………魔王様の命令だからな、お前と、その、子作りしてやっても……いい」
ヒョウガは私と目すら合わせず、顎に手を添え子作りを肯定した。
「な?」開いた口が塞がらずポカンとヒョウガを見つめた。
「ち、違うぞ。お前とやりたいとかじゃないからな。俺とエンカの魔力量は全く同じだ、反発せず親和するかもしれない……」
「ヒ、ヒョウガ、嫌がれよ!……親和しなくて、どちらかの属性しか出ないかもしれないじゃないか!」
「仮にどちらかの属性だけでも、魔王軍に強力な火属性か氷属性が加わるだけだ、損はない……」至極真面目な顔。
「そーじゃ!そーじゃ!損はないのじゃ!」 魔王様は身を屈め、ヒョウガの背中に手を置き、私に野次を飛ばす。
く、此処に味方はいないのか?
「エンカは、老い先短い儂の頼みを聞いてはくれんのかのう?………娘、息子のように思っちょる、二人の子は儂にとっては孫じゃ!孫の顔みたいのう~。冥土の土産に抱きたいのう~」
チラチラとヒョウガの後ろから私を上目遣いに伺い見る。
――――はあ。私は魔王様のお願いにすこぶる弱い。
「………………わ、解りました。子作り……します」私はしぶしぶ承諾した。
◇◇◇
そして、話は冒頭に戻る―――――。
なぜ、処女のくせにヒョウガを煽ったのか……簡単に言うと奴に負けたくないからだ。
幼い子供の頃、同じように魔王様に助けられ魔王城で育てられた私とヒョウガは、お互いライバルとして切磋琢磨し、魔王様に忠誠を尽くしてきたのだ。
ナナカマを手中に納めるべく進攻した先の戦。私は町の焼き払いを提案したが、ヒョウガに却下された。町を最小限の被害で手に入れるため、私の炎で焙り出し人間達を広場に誘導し、ヒョウガの氷で一気に凍らし捕獲し、人間を平服させた。
町をほぼ無傷で、しかも短時間に誰も犠牲にしなかったと、ヒョウガは魔王様よりお褒めの言葉を頂戴していた。
奴が魔王様に重宝されてると腹が立つ。私の方が魔王様の役にたつのにと………。解ってる、ただの醜い嫉妬だ。
「余裕だな、エンカ。考え事か?集中しろよ…」 考えに浸る私の左胸の先を苛立ちを隠しもしない、ヒョウガの冷たい指が捻り上げた。
「ぐっ、はっ。」思わず仰け反ると、右胸の先もぎゅっと同じように捻られた。
「ひ、あ。い、痛いっ!ヒョウガ……お前、はっ、女を痛めつけて喜ぶ趣味あるのか?」
「……そんな趣味ないが………まあ、エンカなら、屈服させたいな………。ほら、乳首、赤く腫れて、魔界イチゴみたいだ」
ヒョウガは深海色の瞳を朔月のように細め、唇を舐める。艶っぽい仕草から目を離せず、そんな自分を恥じた。
「な、あんなでかくない」
拳大のイチゴと私の乳首を同じにしないで欲しい。
「違う、旨そうと言う意味だ」
ヒョウガはそう言うと、私の乳首をパクりと口に咥え、赤子のように音をたててしゃぶる。 眉目秀麗な顔が私の胸に埋まり、銀水色のサラサラの髪が私の褐色の胸に広がりコントラストが美しい。
「はあ、すぐに、ちゅっ……ここから母乳が溢れるように、してやるからな」
恐ろしい宣言をされ、対して大きくない胸を揉まれ、唾液と舌で潰され吸われ甘噛みされ、ヒョウガの好きにいじくり回される。
「は、あっ、舌、冷た、こ、この痴れ者。はあ、乳など出ない、あっあっ、そんなに吸うなっ!」
頭を押すつもりが純粋な力では敵わず、頭に添えた手が寧ろ胸に押し当てているように錯覚してしまい、悔しくて冷たくて気持ちよくて、涙が滲んだ。
執拗に弄くられ乳首が固く立ち上がる。ジンジンする感覚と甘い感覚と二つが交わり、ひくつく体。関係のないはずの下半身も奥からジュクジュクと痺れ、おりものでない熱い何かがトロリと溢れてきた。
遠慮の欠片もないヒョウガの指がとろけ始めた蜜壺をなぞり、ひだを捲り、小さい入り口を見つけると指を差し入れた。ヒョウガの冷たい指が入り異物感に体に力が入る。
「あ、冷た、はあ、くっ、指、やめろ、」
「はっ、エンカの中、熱いな。こんなに濡れて、狭い、狭いな…」狭いに感嘆の声のヒョウガ。ぬぽっと入りこんだ無作法ものを押し返したいのか招き入れたいのか、私の中が動き始めた。
「中、凄い締め付けた。指食いちぎる気か?はっ、ふっ、エンカがその気なら指、増やすぞ」
あっという間に指の数を増やされ冷たい指が私の熱をかき混ぜだ、ぐちゅぬぽっとイヤらしい音が……あろうことか私の中から溢れ出していく。
「あっ、くっ、こんな、音が……。わ、私から、ああ、そんな、」熱く濡れてる中身を掻き出すような動きに翻弄された。冷たい指が中で折り曲げられ、体が仰け反る。
ああ、冷たくて気持ち―――頭の中を白いキラキラと氷結が舞う。中がぎゅっと閉まる。
「は、感じてるのか?ここか?はあ、熱い、エンカ中…凄い」
ち、違う。感じているなどど――――これは魔王様の為、我慢だ。
「ああ、く、やっ」声を出したくなくて唇を噛む。
「見ろよ、エンカ。お前の熱い汁で俺の手首までドロドロだ…」私の中から抜いた指を目の前で見せつけられた。指はぬかるんでいて、ヒョウガの言う通り手首まで私の汁で濡れて光る。むわっと私の匂いが部屋に広がる。
「そ、そんなの見せるな!」羞恥に頭が沸騰した。
「見せたいんだよ。エンカが俺で感じてる証拠だ」ヒョウガは言いながらニヤリと笑い、私に見せつけながら、汁で汚れた指を舐め出した。
「――――な、なな、舐めるな!この変態!」
私は左足でヒョウガの胸を蹴飛ばした。ヒョウガの体が傾く、もう一度だ。
蹴ろうと振り上げた足首を捕まれ、大きく割り開かれた。濡れた秘所をヒョウガの眼下に晒してしまう。ヒョウガが顔を近づけると、冷たく吐く息がかかり、冷たさに秘豆がひくつく。
「エンカ、初めてじゃないだろうに恥ずかしがるな。ここ、ぴくぴくしてる……可愛い」
「は、ふ、可愛いってなんだよ。ひゃ、ど、どこ舐めて、あああ!」
ヒョウガは冷えた水性動物のような舌で秘豆を舐め上げた。チロチロと小刻みに動かし、先を尖らせてつついたり口に含み啜る。
冷たくて気持ちいい、あっという間に高められ落ちてこれない。
「あ、ああ、もう、くうう―――――っ」頭の中に氷結が舞い、快感に支配される。手足をピンとさせ子宮を戦慄かせて私は絶頂した。
はあはあ、息が苦しい。体に力が入らず手足を投げ出した。ヒョウガが嬉しそうに私の顔を覗き込む。
「――く、エンカのその顔。それだけで3回は出せそうだ」
「はあはあ、ん、なんだ?」
「やはり……エンカの初めての相手は殺すことに決めた」ポツリと囁かれた。
「は?なに馬鹿なことを言ってるんだ?」あからさまな嫉妬に驚く。
「俺以外の奴が、エンカをイカせて、その惚けた可愛い顔を見たかと思うと世界を滅したくなる………」
「…滅し…」殺戮を好まないはずのヒョウガから次々に不穏な言葉が聞こえる。
「そいつを見つけた暁には、足先から一センチづつ切り刻んで……」
「待て待て」不穏を紡ぐ口を塞ぐ。
「……ヒョウガお前、まさか私が……す、好きなのか?」導き出された答えに震えた。
「好きで……悪いか?俺は好きな奴しか抱きたくない」
「な、なな―――わ、私は……」
「お前が、俺を何とも思ってないのは知っている。心が貰えないなら、魔王様の命令に便乗し、体から貰おうと思ったんだ」
「……言ってること最低だぞお前」
「最低でもいい。エンカが手に入るなら……だから早く、入れたい」
ヒョウガの猛るヒョウガを腹に押し付けられた。固く長いそれは、先の穴から滴のようなヨダレを垂らして出兵を待っていた。
「ひ、最低」
ヒョウガの端正な美貌とは真逆な生々しい形をした雄に怯む。
逃る腰を引きよせられ、力の入らない膝裏を持たれ大きく股を開かれた。私の秘所に冷たい肉杭が当たる。
「は……処女じゃないなら、遠慮せず突き刺せるな」ぐぐっと先を押し込まれ、誰も踏み込んだことのない、狭い秘道を冷杭で無理やり広げられ、鈍い痛みが冷気と共に駆け上がる。
「あ、く、痛い!抜け、よっ」
息も吐けず苦しみ耐える。泣きたくないのに目頭が潤む。
「はあ、ぐっ。こんな、狭い、は、入らない。ほ、本当に……経験あるのか?」
「あ、あ、あるかよっ」
「エンカ?」
「はあっ…い、た。ずっと、小さな、子どもの、はひっ、頃から、一緒に居たんだ。経験な、ないの、わかるだろう……に、ああ。」
「……そうだった。いつも一緒だった……くそっ、エンカ、騙したな?」
「だ、騙したんだ。ひっ、早くこれ、ぬ、抜いてくれっ―――ひっ、ぐ、ああああっ―――!!」抜いてくれると思った杭が、私の奥を貫く。氷の塊のような肉杭に中を穿たれ、破瓜の痛みに衝撃に冷たさに悲鳴をあげた。
体をしならせ、少しでもヒョウガとの間に隙間を空けようと、もがく私を逃がさぬとばかりに抱きしめた。
私の熱感を伴う褐色の肌とヒョウガの冷温を伴う白磁の肌を擦り合わせながら、汗も破瓜の血さえ混ぜ、ヒョウガは容赦なく、律動を開始した。
「はっ、騙した……罰だからな」
慣れるのを待ってもくれない動きに中がひきつる。痛いはずなのに、ぴったりくっついた肌と肌は、冷たくて心地よい。
ヒョウガが動くたびに、少しずつ痛みだけじゃない熱が溶けだし、ヒョウガの冷たい肉杭を絡める。
「あ、あ、ああん。もう。ヒョウガ、あ、ヒョウガ、あんっ」
いつしか、ヒョウガに攻められ私じゃないみたいな、甘い声が……我慢できず滲み出た。
「は、はあ、エンカ。声、色っぽいちんこにくる。もう、くっ、出すから、はっ……いっぱい、孕めよ」
ぐちゅにゅちゅと中で粘膜と粘膜が擦れた。私とヒョウガ……反属性なのに、反属性だから、熱くて、冷たくて混ざりあうと、気持ちよくて、ちょうどよくて―――。
こんなに、こんなに――――。
――――ぴったり、はまる。
「ああっ!また、いっちゃうっ」
「くっ、俺もいくっ!」
チカチカと再び絶頂を迎えた蜜壺の奥に、ヒョウガがパンパンに肥大した袋からびゅうっと子種を私の中に撒き散らす。氷のように冷えた子種を私の子宮が温かく迎え入れ、溶けて、一つになったような、そんな気がした―――。
◇◇◇
「じゃからの、エンカ、頼むのじゃ。この、老い先短い儂の最後の願い、叶えてくれんかの~」上目遣いにあざとく私を見上げる魔王様。
「魔王様、その手何回目だとお思いですか?」
「3回目…ぐらいかのう?」
「10回目ですよ」
「………儂、な~んも知らんぞいっ」魔王様はとぼけた。
「魔王様、今度のは、絶対に叶えません!見せ物になるのは真っ平ごめんです!」腕組みをし断固拒否を現す。
「そんな、殺生じゃ~!」
私にすがる魔王様、ちょっと可哀想か?
いやいや、命令に従いヒョウガと子作りしているのだ……これ以上を望まないでくれ。
魔王様に子作りを命令されて半年経つ。盛りのついたヒョウガに毎晩のように求められ、正直しんどい。今朝だってしつこくいかされ、寝不足なのだ。
「どうした?エンカ!魔王様、また俺のエンカに無理難題持ち掛けてませんよね?」
体を重ねて以来、私に甘々な寝不足の元凶が謁見の間に入って来た。
「ち、ヒョウガ、何でもない。早く行けよ」
魔王様が余計なことを言う前に早く閉め出さないと、私は焦る。
「なんだ、エンカ。やけに冷たいな?」
「そうじゃろう?聞いてくれ、ヒョウガ!エンカ冷たいんじゃ~。儂はただ娘のように思う、エンカの花嫁姿が見たいと言っただけなんじゃ~!うぐっ」
「ま、ま、魔王様、戯れ言はそのくらいに…」私は喚く魔王様の口を後ろから両手でふさいだ。ふぐふぐ苦しそうに暴れるが、それどころではない。
「………エンカ、魔王様がそろそろ窒息するから、手を離そうか?」
「え?嘘」
慌てて、両手を離すと土気色した顔の魔王様が、荒く呼吸を繰り返す。危ない危うく殺るところだった。
「はあ、はあ、ふう。……げ、下剋上か?娘だと油断してた儂を、騙したのか?」
「違います、下剋上などしません。魔王様が結婚式が見たいなどと、戯れ言をのたまうからです。なあ、ヒョウガ、お前だって見せ物は嫌だよな?……なあ、頼む。魔王様を一緒に諌めてくれよ」
後ろを振り向くと、この世のものとは思えない、渋い顔のヒョウガが佇む……良かった見せ物はお互い嫌だよな!
「魔王様……お色直しは、最低でも5回お願いします」
「へっ」
「おっ、儂は8回が良いのう!」
「8回、素晴らしいです魔王様。ドレスの色も形も決めましょう!」
「そうじゃのう、魔界一のデザイナーに相談じゃ!あと、そうじゃ、アクセサリーも選ばんとのう~!」
「会場を押さえ、招待客の洗い出し、引き出物も考えないといけませんね!」
「ちょっと…」
「そうじゃのう、肝心な日程は何時にするかのう?」
「今、直ぐにでも!いや、一生に一度の結婚式エンカ主役の晴れ舞台。準備に時間をかけて……一年。いや待てるか。くっ、半年でも長いな……」
「おーい…」
「儂、閃いた!1ヶ月後に一度結婚式をしてからの、また8ヶ月後にも大結婚式を開けばよいのじゃ!」
「流石です魔王様!一生付いていきます!」
頭が、頭がくらくらする―――主役のはずの私を置いてきぼりにし、痴れ者たちの妄想は止まらない。この日、初めて魔王軍を辞めたいと思った。
――8ヶ月後、謎の大結婚式に参加させられた私のドレスは、お腹に負担のかからないデザインに変更され、遠くない未来に魔王様がたくさんの赤ちゃんを抱くことになるとは、この時の私に知るよしはなかった。
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