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最後の戦い③ sideベンダル
しおりを挟む暗黒竜に呑み込まれたベンダルもただでは居かった。暗黒竜の中に結界を張り吸収されんように耐えた。腹の虫に聖なる結界を張られた、暗黒竜の黒い塊が苦しみに呻いた。
「ぐっ……小賢しいまねを」
腹の中のブランドを吸収しようと集中し、停止した触手。俺は好機を逃さず暗黒竜に紫炎をぶつけた。
竜神様は、俺の上空で再び浄化の力を集め始める。一度浄化の力を使いしかも、完全体ではない彼女が暗黒竜に勝てる可能性は低い。
それでも、彼女が諦めない限り、何度でも力を貸そう。この身が朽ち果てようとも。剣を振るう幾度となく!
「力が足りないなら……わたくしの生命力を。この命に代えても、アーガストは護りますわ」
竜神様が命を捨てる覚悟をした時だった。静かに何の前触れもなく、それは起こった。
ポツリ……。
小さな滴が、優しく、穏やかに頬に当たった。俺と竜神様が見上げた空は、雲一つないどこまでも高い晴天。
そこには稲光もトグロを巻く黒雲も無かった。
雲のない空から、光の雨が降りだした。
ポツリ、ポツリと小さな粒が、どどっと打ち付けるような豪雨に。
光は皮膚から、肺から体の中に染み込んだ。体が燃えるように熱い。
「力が漲る……これは?聖なる力か!」
「そうです!マナツと皆さんの聖なる祈りの力ですわ!
ありがとうマナツ。遠く離れても、貴女はわたくしに力をくださいます」
光の雨に焼かれもがき苦しみ、暗黒竜は腹の中から、ブランドを吐き出した。
「助かりましたよ竜神様。
この雨は……なんと優しく背中を押してくれるような温かな力です」
ブランドが恵みの雨を待ちわびた蛙のように目を細めた。
「暗黒竜……いえ!ザギドナ。これで終わりにします。今度は呪い一つ残さず浄化しますわ」
ぶわあっと竜神様から、光が溢れた。光は竜巻となって空を突き抜けた。
竜神様を形作っていた輪郭が曖昧になり、自らを巨大な聖光の球体と変化させた。
目すら開けられない圧倒的な神々しい光。
聖なる力の原始そのもの、如何なる邪悪を赦さず塵一つ残さず焼き尽くす。裁くモノが其処にはいた。
「返り討ちにしてくれる!!」
邪悪な暗黒竜は吼えた。黒い塊を震わせ、原始の闇そのものとなった。呪いを撒き散らし、竜神様に体当たりした。
闇と光が激しくぶつかり合う。力と力が渦を巻く。土地を削り、木々と俺たちを吹き飛ばした。
ドオンーーー。
両者が弾け飛んだ。
力を失った竜神様が崖から墜ちていく。
ザギドナは浄化され霧散した。
制御者を亡くし行き場を失った力が爆発し、光が迸る。
強烈な光は爆風とともにアーガスト全土を駆け、白夜のように夜を照らした。
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