【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

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後始末 sideレイン

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 仕事熱心で真面目なマナツは、深い魔力委譲に拒否感をみせていた。マナツが僕たちの聖なる力で、満たされればその分だけ、竜神様はマナツから膨大な聖なる力を補給し、呪いから癒され成長出来る。深い魔力委譲は、竜神様の為にも必要な行為。 
  
 マナツを上手く騙し口淫させることに成功したが、グレンの渾身の告白に難色を示した。僕たちより竜神様が大切で、一度離縁し深く傷ついたマナツ様は臆病で、頑なだった。 
 口車に乗せ、無理矢理押しきるような形で婚約者になれたのは表彰ものだと思う。  
  
  
 快楽に染まり、僕たちを貪欲に求めるマナツは妖艷で淫靡で美しかった。  
 
 恍惚の顔も、淫蕩に耽る泣き顔も堪らなくそそった。健気に全ての穴を使い僕たちを受け入れてくれた。
  
 僕たちに愛され過ぎて、気を失うように寝ついたマナツの黒真珠のような美しい髪に口づけをして、さっと体を清めると寝室を後にした。 
  
 グレンには、三人の体液で汚れたマナツをお風呂で洗い清めるように頼んだ。多かれ少なかれ、洗うだけでは終わらないだろう。
   

 頭痛で廊下を歩く足取りが鈍い、深い魔力委譲のし過ぎで聖なる力は枯渇寸前まで減少していた。 
 
 マナツのように倒れる前に補給をしよう。
  
 僕は新官室の隠し部屋に丁重に管理していた竜珠から聖なる力を補給し、アヤノ特性ポーションを飲み干した。同じく枯渇し、今も枯渇し続けているであろう、グレンにも届けた。 
  
 予想通り、グレンはまだマナツの中に居座っていた。初めての性交にグレンは、タカが外れたのか、貪欲にマナツを求めた。 
 目の前で初めて愛した女が毒を煽り、竜神様を静める為、聖なる力を枯渇させ生死をさ迷ったのだから無理はない。 
 氷のように冷たい、土気色のマナツ様をかき抱いた。グレンの悲痛な叫びを僕は、生涯忘れないだろう。 
  
 僕は、二人に黙っていた。グレンが戸惑いなくマナツ様を抱けるように、そして、マナツ様が気兼ねなく抱かれるように。マナツ様が飲んだのは媚薬でも毒薬でもない。ただのアヤノ特性ポーションだと言うことを。 
 マナツが血を吐いたのは、アヤノの聖なる力に対する拒絶反応で生命の危険は無かったんだ。 
  
 セナから、懇意にする教会からアヤノに媚薬作成の依頼を手紙で受けたと報告があった。 
 ご丁寧に薬草まで準備してあり、その手紙を届けて来たのがコハル付きの新官見習いシャインだった。 
 聖なる力のこもる薬しか飲めない竜神様に媚薬を盛る為の苦肉の作。しかし、明らかに不自然過ぎた。シャインを泳がすため、アヤノに媚薬と偽るポーションを作ら、シャインに渡した。 
 
 ポーションをマナツが飲むとは想定外だった。  
  
 その後、結果的には聖なる力の枯渇で危ない状態に陥ってしまうことになる。 
 
 今、マナツは桃色に肌を煌めかせる。浴室で体に泡をつけたままの状態で、グレンの剛直に貫かれ、揺すぶられていた。  
 体に力は入らず、投げ出された手足がグレンの突き上げに合わせて、憐れな小枝のように揺れた。
 マナツは、あえぎ過ぎてもう掠れ声さえ出ない。開いたままの口から空気が漏れ、ひゅっと言う音がした。僕たちの形に開いた蜜口で、必死にグレンのにしがみつく。  

  
 僕たちはマナツを手に入れ、竜神様は膨大な聖なる力を確保できた……こんなに上手くいくとは思わなかった。  

 魔力委譲にかこつけて、僕とグレンでたっぷり中に射精した。運が良ければ、孕んでくれるかもしれない。       
 
 情の深いマナツは、僕たちと深く交わり。なおかつ子まで出来たら二度と元の世界に帰りたいとは思わないだろう。 
  
 竜神様に認められて真の聖女に成れば、寿命を分けて頂ける。 
 マナツの寿命が200年と長命になければ、竜珠に帰還用の聖なる力が蓄積する。マナツが、もとの世界に帰れる可能性が出来てしまう。 

 可能性でも排除すべきだった。グレンは……いや、僕は、マナツを手放すつもりはサラサラ無いのだから。

  
 
  
 神殿内を巡回し被害を確認した。 
  
 マナツ様の魔力委譲を最優先にして、指示を出し寝室に籠ってしまったから。 
  
 神殿の禍々しい呪いは、マナツの浄化の力で吹き飛んだ。呪われ倒れた人々を率先して助けたのは、意外にも必要ないと踏んだ、あのアヤノだった。 
 ぶつくさ文句を言いながらも、セナと協力しアヤノ特性ポーションを次々に飲ませていた。 
 アヤノの聖なる力のこもったポーションで苦しむ兵士、侍女の呪いが嘘のように浄化していく。 

 失神したままのコハルを呪いから回復した新官兵に地下の牢屋へ運ばせた。 
 シャインは呪いで黒く爛れ、見るも無惨な有り様
だったが、特性ポーションを飲ませ治療後、牢屋へ運び入れた。聞きたいことが山のようにある。
  
 竜神様は呪いを吐き出し過ぎて、疲れてお休みになられている。その御身はマナツの生命力そのものの聖なる力を浴びて喜ばしい変化が現れていた。マナツが見たらかわいいと抱きつくだろうね。 
  
 ブランド様は、竜神様の側から離れない。護衛と見守りを、ノコア含めた侍女と兵士に頼んだ。 
  
 報告済みのベンダル様から、黒竜の残党狩りを終え、直ぐに神殿に向かうとのお達しがあった。彼の巨翼なら明日には着くだろう。 

 アンローザ様は、呪いにより黒花病が表在化し、マナツの神々しい力を浴びた反動で倒れてしまった。今も東の角部屋で養生している。  


 少し気になることがあるが………建物も人も最小限の被害で済んだようだ。 
 ほっと安堵に胸を撫で下ろした。 
  
 シャインの尋問とコハルの今後の処遇を明日以降とし、いまだに抱かれているであろうマナツのもとに急いだ。 
    
 渋るグレンと交代し、書類仕事と見回りを押し付け、もう一度マナツを堪能した。控えめに言ってもマナツは素晴らしかった。 
  
  
 翌日の朝、騒がしかった神殿内が徐々に落ち着きを取り戻した頃に事件は起きた。 


 持ち物検査をし確認させたのにも関わらず、シャインが毒を煽って死んでいたのが見つかった。空になった水桶が死体の側に転がっていた。 
  
 シャインの部屋を調べた結果、アンローザ様の荷物から盗まれた薬草が数種類と西の代理統治長の調印入りの手紙が見つかった。 
  
 薬草はアンローザ様が痛み止めと美容の為にと持ち込んだもので、調合すると媚薬になると言う。シャインは神殿皆の目を盗み、アヤノに依頼する目的で盗んだようだ。 


 もう一方の、手紙には……ブランド様の勅命で竜神様に媚薬を盛り、コハルの虜とさせ、傀儡の王とし裏で自分が操りアーガストを実行支配する。 
 その見返りにシャインとコハルを婚姻させる計画が書かれていた。


 にわかには信じられなかった。
  
 竜神様に恋慕の情を抱いたブランド様の様子は、演技には到底見えなかった。 
 芋虫の時の嫌みな言動は、竜神様に過度に期待している現れだと思っていた。 
  
 ブランド様の母君は盲目的に竜神様を崇拝していたから、ブランド様も嫌みは口にしても大丈夫だと安易に考え過ぎたのか。

「あら?レイン、顔真っ青よ、大丈夫?神殿が騒がしいけど何かあったの?」  


「アンローザ様……」 
  
 直上の上司、ベンダル様はまだ来ない。始まりの竜の彼なら解決の糸口をくれるだろうか? 
 アンローザ様にシャインの死とブランド様の手紙のことを話した。 

「レインには、ショックかもしれないけど……じつわね。西のサイレイクには、ブランドを新たな竜神様に担ぎ上げようとする組織が有るのよ」 
 
「信じられません……竜神様は唯一無二です。誰かが代わりなんて」 

「うーん、でもね……竜神ちゃんが芋虫化して150年よ。恩恵を知らない人も多いのよ。それより良いの?今も、ブランドは竜神ちゃんにべったりでしょ?危険はないの?」 
 
「竜神様!!」 
 自分の認識の甘さを恨みながら、廊下をひた走る。 
 途中で神殿に到着したばかりのベンダル様と合流し竜神様の眠る寝室になだれ込んだ。

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