【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

文字の大きさ
上 下
57 / 87

深い交わり①

しおりを挟む
 
 深く、暗い深淵に沈んでいく。 
 光の存在を許さない、生命の瞬きのない虚無。 
  
 ここは、酷く寒い。 
 体が鉛のように重く手足がかじかむ。 
  
 しんしんと冷えていく心で悟ったーー私、死ぬんだわ。不思議と焦燥感も恐怖心もない。 

  
 ……竜神様……大丈夫かしら? 
  お腹空かせてないと良いけど。

 ……グレンさんとレインさんに悪いことをしたわ、婚約したその日に婚約者を亡くすなんて。良くしてもらったのに、二人に思いを返せなかった。 

 チクリと胸が痛む、だけどそれは一瞬だけ。感情すらここでは沈んでいくから。 


 寒い。 

   ……寒いわ。 


 震える肩を抱き寄せる力がすら残っていない。 


 
『ま、……』 

『………なっ』 

『……口を……開け…て』   

『……受け、入れ…ろ』

 僅かな空耳のような囁き、確かに……聞いた。 

「……グレンさん?……レインさん?……開ける……の?」 
 うっすら開いた口の中に温かい液体が流れ込んできた。 
  
 ああ、私……酷く乾いていたんだわ。与えられてやっと気づけた。甘く美味しい液体を夢中で嚥下する。
 ソレは食道を通り到達したことがわかるほど、濃厚で熱かった。 
 じんわりとした温かさがお腹から広がる。冷えた体の強張りが抜けて体の力がふっと抜けた。 

「んっ!あああっ!!」  
 力が抜けたのを待っていたのか、体の中心に無理やり硬く熱い何かが侵入した。 
  
 熱杭を打ち込まれたかのよう、熱くて裂けそう。苦しい呼吸で息を吐く。痛いのに体は動かない。ただ熱杭を咥えこんだままで揺すられた。


 久しぶりに受け入れるには大きすぎる。粘膜は潤ておらず、硬い体は深い侵入を許さない。 
 
 熱杭は押し返そうと拒絶する中に焦れたのか、浅い場所を何度も何度も行き来し、私の中に断続的に液体を流し込んだ。 

「ああっ!!」 
 火傷しそうな液体が私を満たす。 
 乾いた体は中の粘膜から液体を吸収した。 
  
 温かいーーー。 

 どくん、どくんと心臓の音を懐かしく聞こえた。血液が流れ始めて、手足に温もりが戻る。 

 赤と青の混じった聖なる力が体の内側から本流のように溢れた。温かい優しい光に満たされる。  
 
  
 私ーー生きてる。生きているんだわ。 


 彼らの思いを感じた。守られ、愛され、包まれてるーーーー私は、そっと重い瞼を開いた。
 


ーーー。
 
ーーーーー。

  
 けぶる赤と青。
  
 目を開けると霞む視界でも認識できる、美貌の青年。グレンさんとレインさんが私を見つめていた。     
  
 体は鉛のように怠く、指先を動かすことさえ出来ない。
 口の中がねばつく、お腹に感じる異物感と圧迫感……これはなに?
 
「良かったです。意識が戻りましたね」 
「マナツ様!無理をするなと言ったろう!」 
 強い口調のグレンの瞼は赤く濡れていた……泣いていたのかもしれない。 
  
 ぎゅっとそのまま抱きしめられた。逞しいグレンさんのの胸板に私の胸が押し潰された。 

 素肌と素肌が合わさりグレンさんの熱が伝わる。 
   

ええ??
 
なんで?裸? 
 
裸なの? 
 
 私もグレンさんも、横を向けばレインさんも一糸纏わぬ裸だった。 
  
 二人の巧みが至高を凝らした彫刻のような裸体から目が離せない。 

 なんて綺麗なんだろう。自分も裸なことを忘れ魅了された。 
  
 瞼を赤く染めたしたグレンさんと視線が混じる……ぐんと、お腹に感じた異物感と圧迫感が増した。
 
「あん!うそ!入ってる!」  

 のグレンさんの肉棒が大きくなったから。 
 入口を押し広げて深く奥に入りたいと脈打つモノ。 
 意識したら、グレンさんの形、熱を余計感じてしまって、恥ずかしくて体を震わせた。 
 結合部は、しどどに白く濡れて太ももまで汚していた。下腹部が重怠く熱い、甘くしびれる感覚に中に出されたことを悟る。
  
「グレンさん……な、中に出したの?」 
 涙目で見上げれば、グレンさんは申し訳なさそうな顔をした。 
 その反面、肉棒は更に大きくなり、狭い膣壁を押し広がる。 

「……マナツ様は聖なる力が枯渇し、生命の危機だった。こんな形で交わることになって……すまない」  
 
 
「すいません……マナツ様。 
 大切な婚約者で聖女の貴女を失うわけにはいかない。私とグレンで、緊急処置をさせて頂きました。 
 直接体内に聖なる力を注ぐ、深い交わり以外にマナツ様を助ける手立てがありませんでしたので」 
 レインさんは妖艶に微笑むと、悪びれた様子もなく私の頬に固くて長い肉棒を押し当てた。 
  
 雄の臭くテラテラ光る、根本まで汚れたソレ。   同じ臭いが私の唇からも立ち上ぼり、口の中にも出されたことを如実に物語る。 

「ーーーーっ!」  
 口許を押さえた私の顔はきっと真っ赤だわ。 
  
 意識のないうちに、無体を働いたと怒る気にはならない。 
 死の淵にいた私を二人は助けてくれた……理解していても、気持ちが追いつかないだけ。 

 私は、二人の婚約者……いつかはこういう関係になったはず。 
 ただ予想外に早かっただけ……かなり落ち着かない。 

「あっ、……怒って…ないから。二人とも……助けてくれて……ありがとう。大丈夫だから…もう……終わりに」  
 グレンさんの胸をそっと押して、レインさんに終わりと笑みを向けた。 
 竜神様も心配だし、小春さん、シャインさんの処遇も気になる。 

 
「ふふっ……終わりではありませんよマナツ様」 

「え?」 

「ああ、かろうじて繋ぎ止めただけだからな」
  
 グレンさんが、レインさんがーー。 
 ギラリと欲を孕んだ瞳で私を見下ろした。 
    
  
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜

華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。 日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。 しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。 続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574 完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。 おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。 合わせてお楽しみいただければと思います。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...