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童貞の為に鐘は鳴る
しおりを挟む添い寝前の合わせるだけの口づけも気持ち良かった。
『特別』という言葉にグレンさんの中で理性が焼き切れたかのように、荒々しく塞がれた唇。
だめだと…解っているのに。拒絶しないとなのに。
深く深く口内で蠢くグレンさんの舌が気持ち良くて。体が熱くてどうしようもない、流し込まれる快楽にあがなえない。好き者と小春さんを馬鹿に出来ない。
服を脱がせようとせわしなく手を動かすグレンさんが可愛くて。求められて嬉しくて。
自分から求めるようにその首にすがってしまう。
ぐずぐずに溶けた思考、冷静な判断なんて出来ない。雄々しく立ち上がったグレンさんのズボンに手を這わせた。
布越しに伝わる熱さと硬さにうっとりしてしまう。上下に刺激を与えると、面白いように身悶え反応して、みる間にズボンに染みを作る。
素直な反応、初々しい。もしかして……グレンさんって、童貞かな?
初めて触れる女性がバツイチの私で申し訳ないけど。そうだったら嬉しい。
これは、魔力譲渡の為の行為。
グレンさん初めての快楽に暴走しちゃただけ。勘違いしないようにとしっかり戒める。
手で出してスッキリさせてあげたら冷静になるから。
やっぱり初体験は好きな人としてほしい。最後までは出来ないけど、気持ち良くなって欲しいと思う。
「ふふ、グレンさん、可愛い……き、気持ちいいの?もう出ちゃうの」
意地悪く揶揄したらグレンさんは口を尖らせ不満そうな顔で「マナツは、気持ちよくないのか?」と、言う。その拗ねた顔も可愛くて、顔がにやけてしまう。
馬鹿にされまいと私に快感を与えようと服の上から先っぽに吸い付く。その様子が乳児みたいで、必死さに胸がきゅんきゅんしてしまう。
私に余裕があったのはそこまで。
触れるだけでさえ気持ちいい魔力譲渡なのに、執拗に胸をなぶられ翻弄される。グレンさんの熱が心地よくてもっと深く触れて欲しい。圧倒的な快楽に押し流されておかしくなる。
布越しの濡れた秘所を硬いグレンさんのモノでずっ、ずっ、と散々擦られ硬くなった芽を押し潰されたら、もう堪らない。
もどかしいのに、気持ちいい。
深く深く、私を暴いて。
毛穴がぶわっと開くように、私の中が痙攣して頭の中が真っ白に染まる。
直接触られてもいなのに、悦楽に染まる。
全身をびくんびくんと震わせ、呆気なく童貞のグレンさんに絶頂させられてしまった。
ショーツ越しに熱い飛沫をかけられ、グレンさんも果てたことを知った。
………。
……。
頭の一部が冷静になって、今は午後のおやつタイムの途中だと思い出す。
早く竜神様の側に戻ろうと、余韻に怠い体をなんとか起こした。
私の肩をグレンさんが掴んだ。
「グ、グレンさん……中庭に戻らないと」
肩の乗った熱い掌。
鋭い獰猛な爬虫類のような眼差しが、獲物を逃がす訳がないと物語る。立ち上る息を飲むほどの色香。
「……まだ、終われない」
確信を持ったかのように、グレンさんは頷く。
そして、二人の体液まみれのショーツに手を伸ばし、無防備な腰の紐に手を引っ掛けた。
うそ!!続きするつもりなの!
だめだめ!今でさえアウトなのに!!
「グレンさん!脱がせないで!」
私は悲痛な悲鳴をあげた。脱がされまいと足をバタバタさせて抵抗した。
「マナツ様、ここまで受け入れてくれたのになぜだ?」
グレンさんは酷く傷付いた、泣き出しそうな顔をした。
受け入れたというか、気持ち良くてなし崩し的にしちゃたというか。
「グレンさんもう充分だから、今日の魔力譲渡は終わり。続きは……好きな人として下さいね」
私はグレンさんの胸を押して距離を置こうとしんた。……とたんにぎゅっとグレンさんに抱き込まれた。グレンさんの広い胸板が頬に当たる、温かい。
「ああ、好きな人としよう」
ふわりとグレンさんが笑った。初めて見る笑顔に目が離せない。
グレンさんにこんな優しい表現をさせる好きな人が羨ましい。
くっと唇を噛む、胸が痛い。
『お前なんか誰にも選ばれない!仕事するしか能のないブスと結婚してやったんだ。浮気ぐらいでガタガタ言うな!黙って俺たちの世話をしろ!』
呪いのようにこびりつく言葉、された行為が目眩のようにぐるぐる回る。
泣きたくないのに涙がポロポロこぼれた。
グレンさんは泣く私に驚き固まった。
「そ、そんなに嫌だったのか?すまん、もうしないから……泣かないでくれ」とおろおろと指で私の涙を拭う。
「くそう……泣かせるつもりはなかったんだ」
「ち、違うのよ……グレンさんは悪くないの」
悪いのは、モラハラ元旦那だわ。でも、ポロポロ零れる涙は止まらない。
焦ったグレンさんはポケットの中を探しハンカチを見つけようとしたけどなかったようで、おもむろに上着を脱いだ。上半身は神官なのに鍛えていて綺麗に筋肉が付いていた。
「な、なんで脱いだの?」
驚いて、涙が止まった。
「すまん、ハンカチがなくてな。いつもは持ち歩いてるんだ!汚くないと思う」
大きな上着で私の涙を拭きだした。
その顔はこの世の終わりのように真剣そのもの。
震える手つきは優しくて、もう泣いていないのに、何度も擦られる。
ふふっ、目蓋赤くなっちゃうわ。
丁寧にグレンさんに扱われてる。優しさがじんわり染み渡る。でもこの優しさは私だけのモノじゃない。
嬉しくて……でも、とても寂しくて。また私は泣いてしまった。
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