【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

文字の大きさ
上 下
35 / 87

童貞の為に鐘は鳴る

しおりを挟む
 
 添い寝前の合わせるだけの口づけも気持ち良かった。 
 
『特別』という言葉にグレンさんの中で理性が焼き切れたかのように、荒々しく塞がれた唇。  
  
だめだと…解っているのに。拒絶しないとなのに。
 
 深く深く口内で蠢くグレンさんの舌が気持ち良くて。体が熱くてどうしようもない、流し込まれる快楽にあがなえない。好き者と小春さんを馬鹿に出来ない。 
  
 服を脱がせようとせわしなく手を動かすグレンさんが可愛くて。求められて嬉しくて。  
 自分から求めるようにその首にすがってしまう。 
 ぐずぐずに溶けた思考、冷静な判断なんて出来ない。雄々しく立ち上がったグレンさんのズボンに手を這わせた。 
 布越しに伝わる熱さと硬さにうっとりしてしまう。上下に刺激を与えると、面白いように身悶え反応して、みる間にズボンに染みを作る。 
  
 素直な反応、初々しい。もしかして……グレンさんって、童貞かな? 
  
 初めて触れる女性がバツイチの私で申し訳ないけど。そうだったら嬉しい。 

 これは、魔力譲渡の為の行為。 
  
 グレンさん初めての快楽に暴走しちゃただけ。勘違いしないようにとしっかり戒める。 
 手で出してスッキリさせてあげたら冷静になるから。 
 やっぱり初体験は好きな人としてほしい。最後までは出来ないけど、気持ち良くなって欲しいと思う。
 
「ふふ、グレンさん、可愛い……き、気持ちいいの?もう出ちゃうの」 
 意地悪く揶揄したらグレンさんは口を尖らせ不満そうな顔で「マナツは、気持ちよくないのか?」と、言う。その拗ねた顔も可愛くて、顔がにやけてしまう。  
 
 馬鹿にされまいと私に快感を与えようと服の上から先っぽに吸い付く。その様子が乳児みたいで、必死さに胸がきゅんきゅんしてしまう。  

 私に余裕があったのはそこまで。  

 触れるだけでさえ気持ちいい魔力譲渡なのに、執拗に胸をなぶられ翻弄される。グレンさんの熱が心地よくてもっと深く触れて欲しい。圧倒的な快楽に押し流されておかしくなる。 
  
 布越しの濡れた秘所を硬いグレンさんのモノでずっ、ずっ、と散々擦られ硬くなった芽を押し潰されたら、もう堪らない。 
 
もどかしいのに、気持ちいい。 
深く深く、私を暴いて。 
 
 毛穴がぶわっと開くように、私の中が痙攣して頭の中が真っ白に染まる。 
 直接触られてもいなのに、悦楽に染まる。
 全身をびくんびくんと震わせ、呆気なく童貞のグレンさんに絶頂させられてしまった。 
 ショーツ越しに熱い飛沫をかけられ、グレンさんも果てたことを知った。 


………。 

……。  

  
 頭の一部が冷静になって、今は午後のおやつタイムの途中だと思い出す。 
 早く竜神様の側に戻ろうと、余韻に怠い体をなんとか起こした。 
 
 私の肩をグレンさんが掴んだ。 
 
「グ、グレンさん……中庭に戻らないと」
 
 肩の乗った熱い掌。 
 鋭い獰猛な爬虫類のような眼差しが、獲物を逃がす訳がないと物語る。立ち上る息を飲むほどの色香。 
 
「……まだ、終われない」  
 確信を持ったかのように、グレンさんは頷く。 
 
 そして、二人の体液まみれのショーツに手を伸ばし、無防備な腰の紐に手を引っ掛けた。 
 
うそ!!続きするつもりなの!  
 
だめだめ!今でさえアウトなのに!!

「グレンさん!脱がせないで!」 
 私は悲痛な悲鳴をあげた。脱がされまいと足をバタバタさせて抵抗した。 

「マナツ様、ここまで受け入れてくれたのになぜだ?」 
 グレンさんは酷く傷付いた、泣き出しそうな顔をした。

 受け入れたというか、気持ち良くてなし崩し的にしちゃたというか。  

「グレンさんもう充分だから、今日の魔力譲渡は終わり。続きは……好きな人として下さいね」 
  
 私はグレンさんの胸を押して距離を置こうとしんた。……とたんにぎゅっとグレンさんに抱き込まれた。グレンさんの広い胸板が頬に当たる、温かい。 

「ああ、好きな人としよう」 
 ふわりとグレンさんが笑った。初めて見る笑顔に目が離せない。 
 グレンさんにこんな優しい表現をさせる好きな人が羨ましい。 

くっと唇を噛む、胸が痛い。 
   
『お前なんか誰にも選ばれない!仕事するしか能のないブスと結婚してやったんだ。浮気ぐらいでガタガタ言うな!黙って俺たちの世話をしろ!』 
 
 呪いのようにこびりつく言葉、された行為が目眩のようにぐるぐる回る。 
 泣きたくないのに涙がポロポロこぼれた。 
 
 グレンさんは泣く私に驚き固まった。 
 
「そ、そんなに嫌だったのか?すまん、もうしないから……泣かないでくれ」とおろおろと指で私の涙を拭う。 

「くそう……泣かせるつもりはなかったんだ」 
 
「ち、違うのよ……グレンさんは悪くないの」
 悪いのは、モラハラ元旦那だわ。でも、ポロポロ零れる涙は止まらない。 

 焦ったグレンさんはポケットの中を探しハンカチを見つけようとしたけどなかったようで、おもむろに上着を脱いだ。上半身は神官なのに鍛えていて綺麗に筋肉が付いていた。  
 
「な、なんで脱いだの?」 
 驚いて、涙が止まった。 
 
「すまん、ハンカチがなくてな。いつもは持ち歩いてるんだ!汚くないと思う」 
 大きな上着で私の涙を拭きだした。 
 その顔はこの世の終わりのように真剣そのもの。 
 震える手つきは優しくて、もう泣いていないのに、何度も擦られる。 
  
 ふふっ、目蓋赤くなっちゃうわ。 

 丁寧にグレンさんに扱われてる。優しさがじんわり染み渡る。でもこの優しさは私だけのモノじゃない。 
 嬉しくて……でも、とても寂しくて。また私は泣いてしまった。  
 
     
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜

華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。 日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。 しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。 続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574 完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。 おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。 合わせてお楽しみいただければと思います。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

処理中です...