上 下
24 / 87

私の聖女様 sideノコア

しおりを挟む
 
私は、竜族のノコア。 
 
アーガストの大神殿に勤める聖女候補様付き侍女です。 

 ここアーガストに三人の聖女候補が召喚され、お手当て開始され有りましたが、とうとう竜神様が繭になり、いよいよ復活に期待が高まります。  

 今回は、聖女候補にも色んなお方がいらっしゃるんだと良い学びになりました。 
 
 侍女を虐げていたアヤノ様は、今は降格して監査付きでポーション作りをしています。 
 食事は神殿で提供しますが、もう侍女が至れり尽くせりすることは有りません!命令も聞きません。

 コハル様は、早々に侍女を締め出し神官見習いをこれ見よがしに侍らしています。 
 身の回りのお世話は彼らにさせているようです。 
 私たち女性は眼中にないようで、挨拶しても無視されます。鼻に付く甘ったるい声でところ構わず盛っています。羨ましいよりみっともないです。 
 
 最近はあてがわれた神官見習いに飽き、庭師、調理人、はては行商人まで誘惑しています。節操無さすぎです。

 私のような、古き竜の血の薄い下々の者にまで解るほど、彼女の聖なる力は色んな男性との交わりで灰色に澱んでいます。本当に気持ち悪い。 
 
 部屋に挨拶に訪れたコハル様を早々に追い出したベンダル様には、とても穢らわしく見えたことでしょう。
 
  
 私達竜族は肉体的繋がりより精神的繋がりを大事にしています。コハル様は、ただ快楽の追求しか無いようですが……虚しくならないのでしょうか? 
 
 まあ、聖なる力の受け渡しは大層快感を伴うそうなので、彼女は嵌まったようです。

 
 
 私はマナツ様の侍女で良かったと日々思います。 
 
 マナツ様はお仕事だからやってるだけよと、言いながらも心を込めて竜神様にお手当てをしています。
  
 芋虫形態の時は、呪いまみれの竜神様に戸惑いなく触れて、膝に乗せ図書館で幼児向けのお話を読んだり、中庭にシーツを敷きピクニックをしたりまるで我が子のように慈しんでいました。 
  
 竜神様の食事は思いと手間をかけた手作り。私達侍女にも、労いを込めたおやつを作ってくれました。 
 マナツ様の優しさを込めた美味なおやつは侍女に好評で、日々の疲れが吹き飛びます。アヤノ様に疲弊した侍女は泣いて喜んでいました。 
  
 竜神様がお腹を壊すと知れば腹巻きを、頭をぶつけたと聞けば帽子を作り、呪いを撒き散らかさないようにマントまで……案の定、聖なる力を使い過ぎて、グレン様の心配した通り、またお倒れになってしまいました。 

 あのときのグレン様の取り乱しようは凄かったです。私達が居るのに目の前で応急措置口づけして。 
 グレン様は、真面目で一生懸命なマナツ様に好意を持ったのでしょう。 
 マナツ様は気づいて居ないようですが、グレン様とても優しい瞳で彼女を見つめていますから。 
  
 それに気づいたレイン様は、格好のネタとばかりにからかって遊んでいます。 
  
 でも、一部の侍女は気づいていますよ。レイン様もマナツ様をすごーく気にいってるって! 
 あの、偏食で料理長を困らすレイン様がマナツ様の作った物なら完食するんですから。

 
「マナツ様は、レイン様とグレン様どちらをより好いてますか?」  
 アヤノ様が別棟に移り、式典の準備にはまだ早く余裕の出てきた私達侍女の関心事はマナツ様がどちらを選ぶかです! 
 
「え?え?す、好いてって……えーとっ。その、添い寝のせいよね?はあっ。だから言ったのに……。違うのよノコアちゃん!竜神様の羽化促進の為に、お手当てで添い寝してるだけで、決してやましいことはしてないのよ!!」 

「えー?してないんですか?」 

「してません!そーゆーことは好きな人としかしません!!」 
 顔を真っ赤にして照れ隠しに怒るマナツ様のなんと可愛いらしいこと。
  
 まるで、食べ頃の美味しそうな林檎。 

 マナツ様の貞操観念には好感がもてますが、グレン様もレイン様も本当は食べたくて仕方ないんだと思います。 
 添い寝に関して箝口令も出ていませんし、ベンダル様公認の行為です。 
 寧ろ周囲に広めて、マナツ様が他に行き場のないよう囲い込むつもりですね。 
 マナツ様本人がお幸せで、ずっと神殿に居てくれるなら私は大歓迎です。 

 竜族では伴侶に自分の色をマーキング的に着ける習慣が有るのですが、二人とも、応急措置口づけにかこつけて自分の魔力の色で、マナツ様を染めようと必死なようです。

 今、マナツ様はグレン様のルビーの赤色とレイン様のサファイアの青色が綺麗に丁度半分ずつ。
  
 どちらかの色に全て染まるのか、このままなのか。今後が楽しみです。 
 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...