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最終通告 sideレイン

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 聖女の聖なる気は一人一人異なり性質を表す。 
アヤノは、濃い赤。コハルは薄い桃色。 
 
 竜神様は、聖女候補の聖なる力を吸収し呪いの解除、損失した体の蘇生を行う。 
 竜神様に満ちる聖なる力の色でどれだけ心を込めてお手当てしたか解る。 
 神官の僕とグレンには見えない色彩の割合までも竜神様の番で、高位竜のベンダル様には見えた。

その、ベンダル様はマナツにハッキリ言った。
 
「竜神様に満ちる、聖なる力のはそなたのものだ。竜神の衣装にも満ち満ちている。俺には色でわかる……竜神を懇意にしてくれているのだな。感謝する」と、あの気難しいベンダル様が頭を深々と下げたのだ。 

 
 ベンダル様に癒しの術を施し、落ち着いた後僕は聖女候補たちのお手当ての割合を聞いた。  
 聖女候補の様子は僕たちの上司であるベンダル様に逐一報告済みだ。その生活態度や発言さえも。 

 ベンダル様は、眉間の皺を深め教えてくれた。竜神様に満ちる聖なる力の7割はマナツ。2割はコハル。そして残りのたった1割がアヤノだった。 

 あんなに尊大な態度で同族を酷似し、「真の聖女になるのは私よ!」と、ほざいておいてアヤノがお手当てを真摯にしていなかったことの証明。 
  
 更に医師によれば、アヤノのお手当て日のあと下痢嘔吐がみられ、オムツかぶれは放置。何処からか堕ちたような小さなたん瘤や、硬い床を這いずり回ったような擦り傷の報告を受けていた。 
 昼間は侍女に押し付け、夜は一人でお手当てするから大丈夫と追い出して竜神様を放置していた。
 アヤノを信じ支えてきた結果がだった。 

 その日のうちに、アヤノを呼び出し今までの侍女の訴えて、医師の見解、ベンダル様のお手当ての割合を突き付け、契約書通り竜神様のお手当てをするように説教した。 
 度重なる財散も再度注意し、今後聖女予算使用禁止を通達した。 

 多少は反省しているか、下を向き唇を噛むアヤノ。泣きそうに気の強い瞳が潤んでいる。叱りすぎたかっと心配したが、あろうことか彼女は激昂した。 

「うるさいわ!私に説教しないでよ!気持ち悪い芋虫のお手当てを1割もしてあげてるんだから、感謝してほしいぐらいよ!……お金は、私を勝手に召喚したんだから、その慰謝料よ!もらって当然なのよ!」 

「……アヤノ様、その発言は本気で言っているのですか?」 

「本気よ!それに、小春だって男遊びばっかで、たったの2割じゃないの私と変わらないわ!」 

「小春様は…」 
 僕は言い淀んだ。コハルはまたマナツとはで貢献してくれている。


 コハルが神官見習いと交わると、応急措置の逆方向で聖女候補から神官見習いに聖なる力が流れる  
  
その膨大な聖なる力を竜玉に蓄積させている。 
 
 神官見習いたちには、一度竜神様を怪我させて以来情事より、お世話優先にするように伝えてある。 
まあ、コハルは夢中なようだが……竜玉に蓄積される量が増えるだけだから良いだろう。 

 竜玉に蓄積された聖なる力は、神官長である僕とグレン、高位竜族であるベンダル様たち始まりの竜の子孫なら自分の魔法に変換し使用出来る。 
 聖女でないため、竜神様を直接お手当てすることは出来ないのが、悔しい。 
  
 僕とグレンが使用すれば、疲弊した侍女の治癒や怪我、呪いの解除に使用可能だ。 

 それに、コハルの聖なる力は、僕とグレンを通せば倒れたマナツの魔力補填として、彼女に還元出来る。 
 コハル自身が2割程度しか、お手当て出来なくてもマナツが元気なら大半のお手当てが出来るのだ。
  
 アヤノと違い、コハルは竜玉の魔力供給原としての存在価値はある。見目の良い神官見習いを侍らせるだけで、満足しているうちは。 

「コハル様には、アヤノ様より価値が有りますよ。神官見習いを癒してくれています。彼らは良い仕事をしますから」 
 僕は優雅ににっこり微笑む。本当の理由をアヤノに話すつもりはない。

「は?あんなあばずれの何処に有るって言うのよ!淫乱聖女じゃない!」 

「コハル様が淫乱聖女でしたら。アヤノ様は強欲我儘聖女ですね」 

「な!なんですってー!!」 

「アヤノ様これが最終通告です。マナツ様と同じようにしろとは言いませんよ。ただ誓約書通りの仕事をして下さい。今の貴女を誰も尊敬しない助けたくない。聖女候補にすら価しません。神殿に必要有りません」 
 最終通告を告げると、さすがの彼女も顔を青くした。
 
 これで、自分の立場を理解して、真摯にお手当てしてくれると思っていたが……甘かった。 


 翌日、アヤノは、神官たちから不当な扱いを受けていると、ベンダル様に直談判しに部屋に押しかけた。 

 
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