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何かの病気?
しおりを挟む綾乃さんはレインさんにしこたま怒られたようで、少し大人しくなった。
少しだけど、5日後には私の部屋に押し掛け、勝ったドレスを寄越せと騒いだ。激怒したグレンさんに首根っこを捕まれていたわ。
お疲れの綾乃さん付き侍女さん達には時々労いでおやつを作って渡している。泣いて喜びから苦労が伺える。
小春さんは今日も変わらず神官見習いさん4人侍らせている。
毛糸帽子(やっと作れた)効果かケガは減ってきてるから一安心。 編むときはレインさんかグレンさんの監視つきだけど。
ただ一番最初から小春さんに付いていたシャインさんだっけかな? 彼の目が窪み、表情が虚ろなのが気になって。小春さんの逆ハーレムにいても幸せそうに見えない。
レインさんにそれとなく尋ねたら、シャインさんは一途で真面目な人柄の好青年。コハルさんに、余りのめり込まないよう注意はしたとのこと。大丈夫かしら?
私はと言うとーー。
「ギュロロロロー!ギュロロロロー!!」
断末魔のような悲鳴をあげて竜神様がカサカサ逃げる。ハイハイのスピードが速い、そろそろ掴まり立ちするかも。
「竜神様、逃げないで下さい……ノコアちゃんそっちに回って!」
「はい!お任せ下さい。さあ竜神様観念して下さい!」
「ギュ!ギュ!!ギュロロロロロロロロー!!!」
私とノコアちゃんに挟まれ退路を絶たれた竜神様は呆気なく捕まった。
ゴシゴシゴシ……二人かがりで竜神様の牙を磨く。歯磨きである。
なぜ子供という生き物はあんなに全力で歯磨きから逃げるのだろうか?疑問しか湧かない。
「竜神様少し我慢して下さいね。虫歯になったらおやつ食べられませんからね。これが終わったら大好きなお散歩ですよ」
あっ、牙の裏少し茶色いしっかり磨かないと。根本を優しくブラッシングした筈だったのに……。
ポロリっと、根本から取れてしまった!!
え?うそうそうそなんで?
変な病気!驚き他の牙を確認すると、ポロリポロリと全て抜け落ちてしまった。
「え?歯槽膿漏ー?!そんな馬鹿な!生え変わりにしても全部一辺に無くなるなんてこと……はっ!まさか変な病気!グレンさん、レインさんに報告しないと」
竜神様をマントに包むと転がるように自室を飛び出した。
「マナツ様!私もお供します」
その後をノコアちゃんが付いてくる。神官室までなんで遠いの?神殿の広い廊下をひた走る。
次の角を曲がれば神官室と左に曲がった瞬間大きな壁に阻まれた。
「きゃ!」
ドスン、反動で尻餅を付き添うになった私を誰かが抱き止めた。
「お嬢さん大丈夫か?」
おじさまっと、呼びたくなるような渋くて格好いい声。堅そうな髪を切り込んだ。見上げるような筋肉の精悍な男性が仁王立ちしていた。男性は紫黒色の堅そうな髪を刈り込んでいて、瞳も同系色。左目には厳つい眼帯。鍛え抜かれた軍人に見えた。
「私は大丈夫です!それより竜神様!」
「ギュロ」
牙は抜けたままだけど、ケガがなくて安心する。
「すいません。急いでいたので前を見ていませんでした」深々とお辞儀して謝ると男は渋い顔をした。
「竜神様に、なにかあったのか?」
答えろと有無を言わさない迫力。殺気で人を殺せそうなほど。こ、怖い。
「マナツ様どうしました?」
男の後ろから見知ったレインさんの顔が見えてほっとする。
「竜神様の牙が全部抜け落ちてしまったのよ!何かの病気だったら……」
なんで、早く気づいてあげられなかったのだろう?
自己嫌悪に陥りそうだわ。
「病気じゃないから、心配するな」
答えたのはレインさんではなく、眼帯の大男だった。
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