【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

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別の方法

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 倒れた翌日はお部屋でお休みを命じられてしまった。 
 部屋の前には神官見習いさんがしっかり見張ってて。ノコアちゃんが食事や、差し入れの本やらを持って来てくれ、話に相手にもなってたけど、プチ監禁は、大袈裟だと思う。 

 やっぱり暇である……倒れた日にたっぷり寝て、回復したのでもう大丈夫なんだけどな。グレンさんに聖なる力も分けてもらったし。 
 柔らかい唇の感覚、すがるように唇を求めたことを思い出し、恥ずかしくなる。 
 ベッドの上で毛布を頭まで被り身悶えていると、ドアがノックされた。 

「マナツ様入りますよ」 
 レインさんが穏やかな微笑みを浮かべ入ってきた。  
 
「レレレインさん、どうしたの?」  
 
「マナツ様が良い子で居るか様子を見にきたんですよ」 
 
「……良い子って、私子供じゃないわよ」 
 
「失礼しました。聖女候補者の中では、貴女は立場と役割をわきまえてくれて一番大人ですね」
 
「そうね。年上ですから」 
 
「年齢関係者なく……マナツ様。貴女は竜神様のことは大切にしてくださるのに、自分を大切にしませんよね?アヤノ様とコハル様は自分の欲にいっそ清々しいほど忠実です」
 
「……清々しいって、レインさん私は自分を大切にするために侍女を蔑ろにして、人のお金で散財したり、男の人にかまけて、竜神様のお手当てを疎かにするのは嫌よ」  
 
「そうですか……マナツ様らしいです。アヤノ様とコハル様には再三注意喚起しているのですが、ご理解いたたげなくて。 
 でも、二人のことは僕に安心して任せて下さい。全ての行いは全て自分に還ってくる……因果応報ですからね」 
 ニコニコと微笑むレインさんの瞳は全く笑っていなかった。冷たい虚無の深淵が僅かに覗く。背筋がぞっーとした。 

(グレンさんの方が口調が荒くて怖そうだけど、本当に敵に回したり、怒らせちゃいけないのは……レインさんだわ) 

「マナツ様どうしました?」 

「いえいえ……何でもありません!」 
 ラスボス的存在様の御不況は買いたくない。
 
「竜神様を思って頂けるのは有難いのですが、マナツ様はくれぐれも無理をなさらないようにお願いします……グレンが心配しますから」  
 
「グレンさんが……え~と。レインさん、その聖なる力の応急処置方法、他にはないの?」 
  
「口移しの他にですか?」
「そう」 
「グレンでは役不足ですか?」 
「違う!そうじゃなくて!は、恥ずかしいし、私とその、口移しなんてグレンさんに悪いからよ!」
 レインさんは目を細め私の顔をまじまじと見つめる。うっすら顔が赤いのは自覚しているので見ないでほしい。 
 
「くっ、ふふ。これは良いですね。グレンは嫌がってませんよ。本来今回は私が聖なる力を分け与える番だったんですが、グレンがどうしても自分がやると讓らなかったので」
  
「そ、そうなの?」 
 
(グレンさんが讓らなかったって……犠牲者は一人でいいということかな?でも、嫌じゃないなら良かったわ) 
 ほっと胸を撫で下ろすと穏やかに微笑むレインさんと目が合った。 

「次はグレンに譲りませんから」
 優雅に伸ばした指で私の唇にそっと触れる。  

「レ、レインさん、からかわないで下さい!それより他の方法は?」 

「交わることです」 
 涼しい顔でしれっとレインさんは告げた。 

「そ、それって……」 
 どこのエロ漫画、小説ですか?心の中で突っ込んでおいた。

「粘膜同士の接触、体液の交換が出来ればどんなた」「わーわー!!レインさん、解ったので、もういいです!!その方法は私には無理ですからね!!」私はレインさんの続きを遮った。美形な口から卑猥な言葉など聞きたくない。 

「次、倒れたらこの方法にしますから気をつけて下さいね」レインさんに釘を刺される。ニコニコ笑顔が胡散臭げに見えてきた。  
 
 私に無理させない作戦ならレインさん大成功。次は絶対に倒れられないわ。無理しないようにしないと。 
  
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