【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

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1ヶ月経ちました。

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 私達が召喚されてから早いもので1ヶ月経つ。 
  
 竜神都市アーガストの一週間は6日、1ヶ月は30日で一年は10か月。日本とは異なる。私の竜神様のお手当て当番は今日で10回目。3日に一回しか仕事お手当てしていないから体が楽なはずなのに、疲労感が半端ない。    
 原因は初日にレインさんに説明されていて。竜神様は常に呪いを体から発している。 
 聖女候補は竜神様の近くに居るだけで聖なる力で呪いを吸収分解して、体を常に酷使している状態だそう。その分竜神様の呪いは解除され、もとの体に戻る。 
 聖女候補が3人も必要なのは、強い呪いに対抗する為と一人一人の負担を軽くするためとのこと。 

 常人なら近くに30分以上経つと呪いで意識を失って倒れてしまう。初日に私が倒れるように寝てしまったのは聖なる力を使いすぎたから。 
 竜神様のお世話担当の侍女さんたちは首から大きな時計を常に下げて、長時間近づきすぎないようにしている。 
 私付きの侍女ノコアちゃんには竜神様に触れないようにお願いした。彼女には、必要物品の準備や後始末などを頼んできる。 
 もちろん綾乃さんと小春さんにも専任侍女が付いた。侍女さんたちは聖女候補のお手当てのサポートと監視、護衛も兼ねているのね。一人で行動しようとすると、然り気無く声をかけられ一緒に行動することになるから。
 
 神官の二人は呪いに耐性があり今まで多く竜神様のお世話をしてきたそうで、私がお手当て初日の日、綾乃さんと小春さんの二人に竜神様のお世話のレクチャーをしていたわ。 
 若く子育て経験者のない二人には竜神様のお手当ては、学ぶことが多いだろうけど、頑張ってほしいわ。二人ともお手当て5回目までは、神官がみっちり付きっきりで補助していたわ。 
 今はさすがに神官二人も仕事があるし、一人立ちさせたみたい。 
 綾乃さんが「丸投げなんで酷い!有り得ないわ!!」と叫んでいた。 
 小春さんは「神官様と仲良く二人でお手当てしたいです~」と甘えていたけどスルーされたそう。 
 私には、子育て経験と看護師の知識があるからと、竜神様の1日のスケジュール、大まかな注意点のみ教えられた「後は任せる」って言われたわ。 
 

 そう、私には子育て経験がある。別れた旦那と前妻の子供を育てた経験者が。 
 友達に紹介されたモラハラクソ旦那は、一見人当たりが良く好青年だった。 
 前妻の浮気で別れ、1歳児を一人で育てていると聞き、同情したのが間違いだった。真実は旦那のモラハラと義母の嫁いびりに前妻が逃げ出しただけ。 
 一年半コキ使われたけど、モラハラの証拠と嫁いびりの暴言を証拠に弁護士をつけ慰謝料ぶんどって離婚してやったわ!子供はモラハラ夫と引き剥がし、前妻さんお願いした。身を引き裂かれるようだったけど、前妻さんに泣いて喜び感謝された。 
 今あの子は、お母さんと一緒に暮らせてきっと幸せに違いないわ。
 
 モラハラ夫に懲りた私は男なんとかーー!と、仕事に邁進してきたのだ。 

 神官さんのレクチャーが終わり。綾乃さん一人でお手当ての日に高圧的に「私の変わりにお手当て当番をおばさんがやりなさいよ!」っと言われたけど、丁寧にお断りしたわ。 
 
 小春さんは「困ったから助けて下さい」と、うるうる頼まれ、3回ほどお手伝いしたけど、オムツ交換や食事作りの度に、「 貧血が…。立ちくらみだわ……」っと、言い訳して部屋から居なくなり、医務室に駆け込むので最近はお断りしている。
  
 私は都合良く搾取されるつもりはない。自分の仕事はしっかり自分でしてほしい。  
 
 さて、愚痴は終わりにして……私も今日のお手当てをしないと。   
 
 神官さんに頼まれた竜神様の今日のスケジュールを、ざっと確認する。 
 隣には私がお手当ての日に必ず起こしに部屋に入ってくるグレンさんが居る。いつも起こしに来るのよこの人!お寝坊防止にしても、私も一様女子なんですよ。  

 早朝にオムツ替えをし、前日の聖女候補と交換する。朝ご飯を作り、食べさせる。 
 顔と体を拭いてオイルで保湿。その後は中庭や裏庭をお散歩。またオムツを替えて午前のおやつを作り、食べさせてからお昼寝まではいつもと一緒だわ。レインさんは監視を兼ねてかおやつの時間に顔を出す、一度私の分のおやつをあげたら喜び、毎回来るようになってしまった。 
  
 午後は神官の二人と一緒に慰問会に参加と書いてある。慰問って……たしか不幸に見回れた人を慰めることよね?
 
 (慰問……芋虫が?……ど、どこに?……一番、不幸なのは呪われてる竜神様なんじゃあ?……)

「ねえ?グレンさん、今日の予定に教会の慰問会に参加って書いてあるけど、私の目の錯覚かしら?」 
 
「錯覚じゃないぞ。竜神様の呪いも緩和されてお体が、成長されてきたからな」どこか誇らしい顔のグレンさん。 

「成長って……確かに黒い塊が薄い黄色いとかげになって、カリカリミイラが皮付き肉にレベルアップしたけど……人前に出すには、まだ早すぎるんじゃないかな?」 

「……お前は、本当に不遜な奴だな?」 

「真実を述べただけです!未だに夜中に顔を見るとぎょっとするのよ」 
 
「ギュロロロ」 
 地を這うような鳴き声が、竜神様の顔の穴(口)から聞こえた。 
 成長して身長も伸び、体重も増えた。モゴモゴ動くだけだった竜神様は鳴き声を発し自己主張するようになったのだ。 
 嬉しい時、お腹が空いた時、ご機嫌な時などなど。(多分) 
 
全然……可愛くない声だけど。断末魔の悲鳴に似てるけど。 
 
「ほら見ろ!竜神様がお怒りだぞ」 
 今のは怒りの声らしい。 
 
(わからない!わからないわー!) 

 どうか慰問会に心臓の悪いお年寄りや、小さな子供が居ませんよーに……っと、そればかりを祈った。 

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