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恥ずかしい
しおりを挟む「……朝だ起きろ!今日の竜神様の当番はお前だろう………体調は大丈夫だろうな?」
ぶっきらぼうな声、揺さぶられ目を開けると不機嫌顔のグレンさんが立たずんでいた。
「あれ?グレンさん……ここは?」
ぐるりと部屋を見回すと10畳ほどの豪華な部屋だった。細い足の化粧台、花が彫られた白いクローゼット、サイトテーブルも椅子も綺麗な細工が施されている。私は清潔なベッドの上。白いヒラヒラの可愛いらしいネグリジェに着替えさせられていた。
「お前に与えられた部屋だ…」
「私の部屋ですか?ステキな部屋を用意してくれてありがとうございます」
私の住んでいたマンションより豪華だわ。
「……お前は礼を言うんだな?同じ聖女なのに、こうも違うものなのか?」
「えーと、何かありました?」
「部屋を変えろと言われたぞ」
「はっ?まさか……綾乃さんですか?それとも小春さん?」
「二人ともだ……アヤノは聖女なんだからもっと豪華な部屋をご所望だ」
あー、何てこと。こんなに厚待遇なのに。まだ竜神様のお手当て(仕事)もしてないのに、厚顔無恥過ぎる。
三人一纏めで同室でもおかしくないのに……寧ろ管理と監視しやすいわ。人も手間もかからない。
「えーと、小春さんは?」
小春さんはまだ常識がありそうだけど。
「コハルは、夜の一人寝が寂しいから俺かレインとの同室希望だ」
なんですと!小春さんはそっちー!!美男子を侍らせて逆ハーレム作りたい系ですか?
あれはアラブらへんの偉い人か、マンガ、アニメだけの話よ。
はあっ、もう、頭が痛くなってきたわ。
「なんか……同郷がすいません」
「ふっ、なんでお前が謝るんだ?……神聖力の量で聖女を召喚した俺達のミスだ。お前が気にすることじゃないぞ。竜神様のお手当てさえしてくれたら良いさ」
グレンさんは私の頭をポンポン叩く。ちょっと痛いですから!
「それで二人に対応したんですか?」
「竜神様のお手当てを頑張ったら、考慮すると言っといた」
それ、永遠に叶わないやつですよね?
あははと乾いた笑いを浮かべ私はベッドから起き上がる。気合いを入れて着替えて竜神様のお手当てだわ!
「グレンさん起こしてくれて感謝します。でも着替えするので部屋から出てってもらえますか?」
「今更だな……夕べ竜神様のベッドで寝たお前を部屋に運んで服を着替えさせたのは俺だ」
ニヤニヤとグレンさんが私をからかう。
「え?てっきり侍女さんと思ってましたよ?嘘ですよね?」
「さあ、どっちだったかな?」
「……いたいけな女子をからかうの止めてもらって良いですか?」
「は?誰が女子だ?誰が?」
心は永遠の20歳なの!腹が立ち私は枕をグレンに向かって投げつけた。グレンは枕を簡単に避けて、にやけながら部屋から出ていった。
なんか、悔しい。
着替え終わるとタイミングを見計らったようにドアをノックされた。開けるとレインさんがいて、私付きだと昨夜オムツを替えに来てくれた侍女を紹介された。
名前はノコアさん竜族の女の子でオレンジ髪でキュートな容姿。小降りの角も可愛いらしい。
「聖女様が呪いに臆せず竜神様をお風呂に入れられていて、私自分が恥ずかしくなりました!誠心誠意聖女様に仕えさせて頂きます」
私をキラキラと尊敬した顔で見てる。
いや、帰還の為と報酬のためだからね。こそばゆいので止めて欲しい。
「よ、よろしくお願いします。それと聖女様じゃなくて、名前で呼んで下さいね」
「そんな……恐れ多く」
「ノコア、主の意向を叶えるのも侍女の勤めですよ」穏やかにレインさん言う。
「わかりました。マナツ様とお呼びします。これからよろしくお願いします!」
可愛い妹のような侍女が出来てしまった。
私はノコアちゃんを連れて竜神様のお部屋に急いだ。朝のおしっこたっぷりオムツを替えてから朝食の卵粥を作り食べさせる。
私も一緒に同じお粥を食べる。部屋にはニコニコ顔のレインさん。私を監視しているのよね?
ちゃんとお給料分のお世話しますよ。気になるから、早く神官の仕事に行ってほしい。
黄色いとかげな竜神様は、昨日よりモゴモゴ動く。少しは元気でてきたかしら?
でもまた鱗がカサカサしてるわ。お肌のお手入れしないと。
口の触手だかひげの動きは変わらず気持ち悪く、芋虫顔でまがまがしく、腐敗臭もある。
親しみは湧かない生き物だけど、そのうちきっと慣れるはず。
そう!人間は慣れる生き物なのよ!どんな環境でも。辛い労働にも!病院に人が居ないときは、連続10日勤だってやってきたのだから。
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