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エピローグ
25 返事
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掃討作戦をして、宴に出て。エリカと会って、ナンシーを助けに行って……そして、エリカたちへの情を完全に捨て去った。
いろいろあったけれど、一晩宿でぐっすり眠れたおかげか心は凪いでいた。
今日はイーグルフロストを出立する日だった。レナードやミリア、ブレイクやシャーリーともお別れになる。
ヒューゴと合流して、みんなに会いに行く。ミリアは泣きそうな顔をしていた。
「また絶対来てね」と言って、私の手を握る。
私はその手を握り返して、笑った。
「もちろん、絶対来るわ。いろいろ迷惑かけてごめんなさい。今度会ったときは、ゆっくり話しましょう」
「またガルシアに来いよ。いい武器待ってるからな」
ブレイクも力強く言ってくれた。ヒューゴはにっこりと頷く。
四人と別れて、馬車に乗り込む。
ナンシーも帰り道が一緒だから、一緒に旅をすることになった。馬車での道中、ナンシーとたくさん話をした。
「ナンシー、帰ったらどうするの?」
「また適当なパーティに入れてもらうよ。本当はクレアと組みたいけどね、先約があるみたいだし」
そう言ってニヤリと笑う。
「せ、先約って……」
照れながら、私はそっと顔を伏せた。
「いい素材が手に入ったらぜひ卸してください」
「もちろん。あんたなら信用できるしね」
約2週間の穏やかな旅を終えて、エーデルランドへと戻った。時刻は夕暮れ時で、ちょうどいいからとナンシーはギルドにパーティメンバーを探しに行く。
ナンシーを見送った私は、ヒューゴと二人で広場に残る。人通りは少なくなってきていて、静かな雰囲気だ。
「お返事を聞かせてもらえませんか?」
ヒューゴの髪が風になびく。
私の答えは決まっていた。
(もしかしたら、ずっと前から決まっていたのかもしれない)
普段の完璧な笑顔も、今のような真剣そうな表情も。昔から紳士的で、人を粗雑に扱わないところも。
側にいると安心するけど、ふとしたときに胸が高鳴るのも、ヒューゴにだけだった。
両手を合わせてぎゅっと握る。
「ヒューゴ、私もあなたが好き」
ヒューゴは息を呑み、それから穏やかに笑った。
「……ありがとう、クレア」
私たちはゆっくり歩み寄って、手を握る。
ヒューゴの翡翠のような瞳を間近に見つめ、胸がいっぱいになる。私は彼に導かれるまま目を閉じた。
初めてのキスをして、それから笑いあった。
「必ず、幸せにしますから」
「私もよ。好きって言ってくれたこと、絶対後悔させないから」
宿に帰りながら、今後どうするかを話し合う。
追放されたときにはあんなに憎たらしかった夕日が、今は輝いて見えた。
いろいろあったけれど、一晩宿でぐっすり眠れたおかげか心は凪いでいた。
今日はイーグルフロストを出立する日だった。レナードやミリア、ブレイクやシャーリーともお別れになる。
ヒューゴと合流して、みんなに会いに行く。ミリアは泣きそうな顔をしていた。
「また絶対来てね」と言って、私の手を握る。
私はその手を握り返して、笑った。
「もちろん、絶対来るわ。いろいろ迷惑かけてごめんなさい。今度会ったときは、ゆっくり話しましょう」
「またガルシアに来いよ。いい武器待ってるからな」
ブレイクも力強く言ってくれた。ヒューゴはにっこりと頷く。
四人と別れて、馬車に乗り込む。
ナンシーも帰り道が一緒だから、一緒に旅をすることになった。馬車での道中、ナンシーとたくさん話をした。
「ナンシー、帰ったらどうするの?」
「また適当なパーティに入れてもらうよ。本当はクレアと組みたいけどね、先約があるみたいだし」
そう言ってニヤリと笑う。
「せ、先約って……」
照れながら、私はそっと顔を伏せた。
「いい素材が手に入ったらぜひ卸してください」
「もちろん。あんたなら信用できるしね」
約2週間の穏やかな旅を終えて、エーデルランドへと戻った。時刻は夕暮れ時で、ちょうどいいからとナンシーはギルドにパーティメンバーを探しに行く。
ナンシーを見送った私は、ヒューゴと二人で広場に残る。人通りは少なくなってきていて、静かな雰囲気だ。
「お返事を聞かせてもらえませんか?」
ヒューゴの髪が風になびく。
私の答えは決まっていた。
(もしかしたら、ずっと前から決まっていたのかもしれない)
普段の完璧な笑顔も、今のような真剣そうな表情も。昔から紳士的で、人を粗雑に扱わないところも。
側にいると安心するけど、ふとしたときに胸が高鳴るのも、ヒューゴにだけだった。
両手を合わせてぎゅっと握る。
「ヒューゴ、私もあなたが好き」
ヒューゴは息を呑み、それから穏やかに笑った。
「……ありがとう、クレア」
私たちはゆっくり歩み寄って、手を握る。
ヒューゴの翡翠のような瞳を間近に見つめ、胸がいっぱいになる。私は彼に導かれるまま目を閉じた。
初めてのキスをして、それから笑いあった。
「必ず、幸せにしますから」
「私もよ。好きって言ってくれたこと、絶対後悔させないから」
宿に帰りながら、今後どうするかを話し合う。
追放されたときにはあんなに憎たらしかった夕日が、今は輝いて見えた。
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記憶が残っていると万一のことがあるとヒューゴが考えたのでこうなった感じではありますが、記憶が残っていても良かったかもしれないですね。ありがとうございます!
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ありがとうございます!冒険や魔法といった要素が強めの作品なのですが、わちゃわちゃ感や固有魔法を褒めて頂けてよかったです。
ありがとうございます!ミリアはメインキャラ2人に比べるとかなり騒がしいタイプですが、お陰で雰囲気がわいわいしたので私も好きな子です。ナンシーも次のパーティでは元気にやってると思います!