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4章 因縁の姉妹
24 縁切り2
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その日の夜。ヒューゴはこっそり宿から抜け出していた。
ギルドの一角、バインドをかけたエリカたちを寝かせている部屋にたどり着く。
「エーデルランドからの馬車、2週間くらいしないと来ないですし……2週間も置いておくにしてはこの人たち危険すぎるんですよね」
ギルドマスターにギルドへの連絡を任せてもらったが、ギルドにしたのはペナルティの申請ではなかった。
ライセンスの剥奪……。ライセンスを剥奪された冒険者は依頼が受けられなくなる。
たいしたことはないように思えるが、これはかなり致命的な問題だった。
荒くれ者と言われる冒険者でも、ある程度ギルドの法を守ろうとするのはライセンスを剥奪されたくないがため。
冒険者は普通に生きられない人間の最後のセーフティネットのようなものだ。
そこから零れ落ちたものは、ろくな未来を迎えることはできない。
(流石に見捨てた相手とはいえ、そのような末路になったと知ればクレアは悲しむかもしれないので、伝える気はないですが)
ただエーデルランドに送還し、ガルシアへの入国制限をかけ、ライセンスを剥奪しても足りない。
彼らはなぜか行先を伝えていないはずなのにイーグルフロストまでたどり着いた。
クレアが告白を受け入れてくれるかどうかはわからないけど、どちらにしろ危険分子は排除しておきたかった。
クレアとエリカたちを今後再会させる気はない。
「まあ、クレアとナンシーさんに関する記憶をちょっと改ざんすればいいでしょうか。あとエリカさんは魔力が高すぎて危険ですからちょっと頂いていきますね」
ヒューゴは並んで寝かされている三人に向かって手をかざした。
魔術師の魔力量、実力は血筋による影響が大きい。エリカの性格や言動はかなりクレアとかけ離れたものだったが、二人の魔力の傾向は非常によく似ていた。
そして、ヒューゴや、クレアたちほど魔力が高い魔術師にはたまに固有の魔法が発現する。
クレアは<鑑定>、ヒューゴは<剥奪>が固有魔法だ。
剥奪は他人の魔力や固有魔法、その他の能力を奪い取ることができる。
出入りの悪徳商人に騙され無一文になり、鬱憤を炎の魔法に変えぶつけてきた父から<業火>を。
父の行為を見て見ぬふりし、様々な男性と遊びくらした母からは<記憶操作>を。
(自分や接触しているものを浮かせる<浮遊>は家を出て商売を始めたころにもらったんでしたっけ)
その後も子供だからと舐め腐り、成功するようになってからは嫉妬をあからさまにぶつける人間ばかりに取り囲まれた。
浅はかな計画で毒を守ろうとしてきたあの商人、ルドルフも同様だ。クレアがいる場だから穏便に済ませる方向にしたが、本来ならあんな人間といちいち話すつもりはない。
得た力であしらうことは簡単だった。対処すればするほど、近寄ってくる全てが汚い、穢れたナイフのように見えてくる。
「まあ、クレアは違いましたけど」
記憶操作を起動し、三人からクレアの記憶を抜き取りつつ内容を書き換えていく。クレアを探そうとしたり、再会したときに気づいたりしないようになればいい。
それから、エリカから魔力と固有魔法を剥奪した。
さすがにレナードとミリアの監視下にいながらギルドハウスを壊す魔力は尋常じゃない。そこは腐ってもクレアの姉妹だからだろうか。
「固有魔法……運命の赤い糸。そのとき利用価値が最も高いと本人が認識する異性へ赤い糸状のマーカーが付く。位置情報が詳細にわかり、プロフィール情報も開示される……限定的かつ特化型の鑑定でしょうか。ガルシアまでわざわざいらっしゃったのもこの魔法が原因、と。奪うことにしてよかったですね」
ついでに自分の記憶もエリカの中から消しておいた。
正直、知りもしない人間にわかったようにあれこれ開示され、わかってあげられるだの上から目線で言い放たれるのは不快どころか殺意すら覚える出来事だった。
「では、そういうことですので。あなた達が今後どうなるのかは責任持てませんが、クレアを追放して仲良く旅をしていらっしゃったようですし。助け合ってがんばってくださいね」
まあ、ミリアさんたちがオペラだなんだと茶化していたあの様子では助け合いなどできないかも知れないが。
そうして部屋から出る。いつだったか奪った魔法をバインドに組み合わせているから、二週間放置していても彼らの生命は保たれるだろう。
手間は減るとはいえ、面倒な異国の冒険者たちを管理させてしまうギルドマスターには世話をかけてしまう。
「はあ、せっかく売った恩が帳消しどころかちょっと借りですね。まあ、なんとかしますか……」
エリカたちにはかなり迷惑をかけられたが、彼らが愚昧だったおかげでクレアが旅に同行してくれたことだけは感謝しておこうと思った。
ギルドの一角、バインドをかけたエリカたちを寝かせている部屋にたどり着く。
「エーデルランドからの馬車、2週間くらいしないと来ないですし……2週間も置いておくにしてはこの人たち危険すぎるんですよね」
ギルドマスターにギルドへの連絡を任せてもらったが、ギルドにしたのはペナルティの申請ではなかった。
ライセンスの剥奪……。ライセンスを剥奪された冒険者は依頼が受けられなくなる。
たいしたことはないように思えるが、これはかなり致命的な問題だった。
荒くれ者と言われる冒険者でも、ある程度ギルドの法を守ろうとするのはライセンスを剥奪されたくないがため。
冒険者は普通に生きられない人間の最後のセーフティネットのようなものだ。
そこから零れ落ちたものは、ろくな未来を迎えることはできない。
(流石に見捨てた相手とはいえ、そのような末路になったと知ればクレアは悲しむかもしれないので、伝える気はないですが)
ただエーデルランドに送還し、ガルシアへの入国制限をかけ、ライセンスを剥奪しても足りない。
彼らはなぜか行先を伝えていないはずなのにイーグルフロストまでたどり着いた。
クレアが告白を受け入れてくれるかどうかはわからないけど、どちらにしろ危険分子は排除しておきたかった。
クレアとエリカたちを今後再会させる気はない。
「まあ、クレアとナンシーさんに関する記憶をちょっと改ざんすればいいでしょうか。あとエリカさんは魔力が高すぎて危険ですからちょっと頂いていきますね」
ヒューゴは並んで寝かされている三人に向かって手をかざした。
魔術師の魔力量、実力は血筋による影響が大きい。エリカの性格や言動はかなりクレアとかけ離れたものだったが、二人の魔力の傾向は非常によく似ていた。
そして、ヒューゴや、クレアたちほど魔力が高い魔術師にはたまに固有の魔法が発現する。
クレアは<鑑定>、ヒューゴは<剥奪>が固有魔法だ。
剥奪は他人の魔力や固有魔法、その他の能力を奪い取ることができる。
出入りの悪徳商人に騙され無一文になり、鬱憤を炎の魔法に変えぶつけてきた父から<業火>を。
父の行為を見て見ぬふりし、様々な男性と遊びくらした母からは<記憶操作>を。
(自分や接触しているものを浮かせる<浮遊>は家を出て商売を始めたころにもらったんでしたっけ)
その後も子供だからと舐め腐り、成功するようになってからは嫉妬をあからさまにぶつける人間ばかりに取り囲まれた。
浅はかな計画で毒を守ろうとしてきたあの商人、ルドルフも同様だ。クレアがいる場だから穏便に済ませる方向にしたが、本来ならあんな人間といちいち話すつもりはない。
得た力であしらうことは簡単だった。対処すればするほど、近寄ってくる全てが汚い、穢れたナイフのように見えてくる。
「まあ、クレアは違いましたけど」
記憶操作を起動し、三人からクレアの記憶を抜き取りつつ内容を書き換えていく。クレアを探そうとしたり、再会したときに気づいたりしないようになればいい。
それから、エリカから魔力と固有魔法を剥奪した。
さすがにレナードとミリアの監視下にいながらギルドハウスを壊す魔力は尋常じゃない。そこは腐ってもクレアの姉妹だからだろうか。
「固有魔法……運命の赤い糸。そのとき利用価値が最も高いと本人が認識する異性へ赤い糸状のマーカーが付く。位置情報が詳細にわかり、プロフィール情報も開示される……限定的かつ特化型の鑑定でしょうか。ガルシアまでわざわざいらっしゃったのもこの魔法が原因、と。奪うことにしてよかったですね」
ついでに自分の記憶もエリカの中から消しておいた。
正直、知りもしない人間にわかったようにあれこれ開示され、わかってあげられるだの上から目線で言い放たれるのは不快どころか殺意すら覚える出来事だった。
「では、そういうことですので。あなた達が今後どうなるのかは責任持てませんが、クレアを追放して仲良く旅をしていらっしゃったようですし。助け合ってがんばってくださいね」
まあ、ミリアさんたちがオペラだなんだと茶化していたあの様子では助け合いなどできないかも知れないが。
そうして部屋から出る。いつだったか奪った魔法をバインドに組み合わせているから、二週間放置していても彼らの生命は保たれるだろう。
手間は減るとはいえ、面倒な異国の冒険者たちを管理させてしまうギルドマスターには世話をかけてしまう。
「はあ、せっかく売った恩が帳消しどころかちょっと借りですね。まあ、なんとかしますか……」
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