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4章 因縁の姉妹
21 不本意
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昼前に支度を整えた私たちは、疲労も考慮しゆっくりとイーグルフロストに帰還した。ついたころにはもう夕暮れ時だ。
帰りながら、ナンシーにいろいろ私が追放された後のことを聞いていた。
エリカの我儘が悪化したこととか、前の街は居心地が悪いと言うエリカの発言でわざわざこんなとこまで来てることとか。
「ちょうどガルシアに行ってみたいと思ってて。いいでしょ?」
という謎の宣言にエドワードもレオンもすぐ頷いてしまったという。
クレアがいなくなってからエリカは手に余るしエドワードはポンコツになるし大変だった、さっさと見切りつけときゃよかったと呟いたナンシーの顔は本当に疲れ切っていた。
「エドワードがそんなにエリカの言いなりになるなんて……ちょっと想像できないかも」
「あたしもびっくりしたんだけどさ、エド、エリカに惚れてるらしくて。惚れた弱みってやつかね」
「え、え?」
「クレアがいなくなってからなんかいろいろ変わったんだよねぇ」
そして私たちは宿屋やギルドがある一画にたどり着く。
「さて、どうします? 一応ナンシーさんを救出しにいくとき、騒ぎがあると面倒なのでエリカさんたちの身柄を押さえてもらってはいるんですけど」
「あいつらのパーティ、あたしはもう抜けてると思ってるし顔も見たくないね。クレアは?」
「え、っと……私は……」
正直言って、エドワードは追放されて以来会ってないとはいえ数年以上旅をしてきた恩人でもある。エリカも大切に思っていた妹だ。
けど、私の話も聞かずに追放したり、死ぬかもしれないのにナンシーを森に放置したり。正直、恩とか親愛とかを上回るくらい、理解できないしもう会いたくないって気持ちもある。
「私も、会いたくはない、かな。でも、エリカが今回のナンシーみたいに、もし誰かを傷つけたりするようなことがあったらって思うと……どうしたらいいんだろう」
「クレア。エリカさんの行動についてあなたが責任を感じる必要はありません。肉親といえど別の存在でしょう」
ヒューゴにそう言われ、すこし沈み込んでいた気持ちがマシになる。
エリカに会って話をしてみたい、もしナンシーを置き去りにしたときのような行為を続けそうなら止めないといけない、と思っていたけど……正直、私を追放したときのエリカの顔がずっと頭から離れなくて、正直辛かった。
「うん、私はもうみんなに会わなくてもいいかな。でも、エリカたちが他の人に危害を加えるようなことはさせたくない」
「それはあたしもそうさ。迷惑かけられる奴に申し訳ないしね。警備隊にでも連絡するかい?」
「クレアへの襲撃の件でエーデルランドへの強制送還は申請できると思います」
「あとは、ギルドからのペナルティがどれだけ出るかって感じかね」
「私の追放はもう終わったことだし、ナンシーの置き去りの件、だよね」
「ええ、そういう感じです。では……」
と、ヒューゴが言った時だった。ギルドの方から甲高い声や物音が響く。そして、ギルドの壁が一部ばらばらに崩壊して、中から人が走ってきた。
「見つけた! あたしの運命の王子様!」
それはエリカだった。爛々とした目つきで、こちらに迫ってくる。後ろから、レナードも追いかけている。
「は?! なんだその馬鹿火力!」
予想外の状況につい固まってしまう。ナンシーも固まってるみたいだった。
そしてエリカはそのまま私たちの……いや、おそらくヒューゴの元へ走ろうとして、発光した鎖のようなものに足をくくられその場に転倒する。
鎖はそのまま腕と背中も縛っていく。バインドの魔法だ。
「きゃ、ちょっと、どうしてですか、王子様!」
「王子様ってなんのことだかわかりませんが……レナードさん、ちょっと事情を説明してもらっても?」
「あー、こりゃ完全にこっちのミスだわ。本当にすまん」
爆音でなにごとかと集まってくる人々に怪訝な目で見られつつも、人ごみを避けて私たちは移動するしかなかった。
エリカは、バインドされた状態でレナードに担がれている。その視線は相変わらずヒューゴから動かず、王子様だとか、赤い糸だとか言っていた。
(本当に、どういうこと……?)
帰りながら、ナンシーにいろいろ私が追放された後のことを聞いていた。
エリカの我儘が悪化したこととか、前の街は居心地が悪いと言うエリカの発言でわざわざこんなとこまで来てることとか。
「ちょうどガルシアに行ってみたいと思ってて。いいでしょ?」
という謎の宣言にエドワードもレオンもすぐ頷いてしまったという。
クレアがいなくなってからエリカは手に余るしエドワードはポンコツになるし大変だった、さっさと見切りつけときゃよかったと呟いたナンシーの顔は本当に疲れ切っていた。
「エドワードがそんなにエリカの言いなりになるなんて……ちょっと想像できないかも」
「あたしもびっくりしたんだけどさ、エド、エリカに惚れてるらしくて。惚れた弱みってやつかね」
「え、え?」
「クレアがいなくなってからなんかいろいろ変わったんだよねぇ」
そして私たちは宿屋やギルドがある一画にたどり着く。
「さて、どうします? 一応ナンシーさんを救出しにいくとき、騒ぎがあると面倒なのでエリカさんたちの身柄を押さえてもらってはいるんですけど」
「あいつらのパーティ、あたしはもう抜けてると思ってるし顔も見たくないね。クレアは?」
「え、っと……私は……」
正直言って、エドワードは追放されて以来会ってないとはいえ数年以上旅をしてきた恩人でもある。エリカも大切に思っていた妹だ。
けど、私の話も聞かずに追放したり、死ぬかもしれないのにナンシーを森に放置したり。正直、恩とか親愛とかを上回るくらい、理解できないしもう会いたくないって気持ちもある。
「私も、会いたくはない、かな。でも、エリカが今回のナンシーみたいに、もし誰かを傷つけたりするようなことがあったらって思うと……どうしたらいいんだろう」
「クレア。エリカさんの行動についてあなたが責任を感じる必要はありません。肉親といえど別の存在でしょう」
ヒューゴにそう言われ、すこし沈み込んでいた気持ちがマシになる。
エリカに会って話をしてみたい、もしナンシーを置き去りにしたときのような行為を続けそうなら止めないといけない、と思っていたけど……正直、私を追放したときのエリカの顔がずっと頭から離れなくて、正直辛かった。
「うん、私はもうみんなに会わなくてもいいかな。でも、エリカたちが他の人に危害を加えるようなことはさせたくない」
「それはあたしもそうさ。迷惑かけられる奴に申し訳ないしね。警備隊にでも連絡するかい?」
「クレアへの襲撃の件でエーデルランドへの強制送還は申請できると思います」
「あとは、ギルドからのペナルティがどれだけ出るかって感じかね」
「私の追放はもう終わったことだし、ナンシーの置き去りの件、だよね」
「ええ、そういう感じです。では……」
と、ヒューゴが言った時だった。ギルドの方から甲高い声や物音が響く。そして、ギルドの壁が一部ばらばらに崩壊して、中から人が走ってきた。
「見つけた! あたしの運命の王子様!」
それはエリカだった。爛々とした目つきで、こちらに迫ってくる。後ろから、レナードも追いかけている。
「は?! なんだその馬鹿火力!」
予想外の状況につい固まってしまう。ナンシーも固まってるみたいだった。
そしてエリカはそのまま私たちの……いや、おそらくヒューゴの元へ走ろうとして、発光した鎖のようなものに足をくくられその場に転倒する。
鎖はそのまま腕と背中も縛っていく。バインドの魔法だ。
「きゃ、ちょっと、どうしてですか、王子様!」
「王子様ってなんのことだかわかりませんが……レナードさん、ちょっと事情を説明してもらっても?」
「あー、こりゃ完全にこっちのミスだわ。本当にすまん」
爆音でなにごとかと集まってくる人々に怪訝な目で見られつつも、人ごみを避けて私たちは移動するしかなかった。
エリカは、バインドされた状態でレナードに担がれている。その視線は相変わらずヒューゴから動かず、王子様だとか、赤い糸だとか言っていた。
(本当に、どういうこと……?)
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