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新生活
アルトと対面
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ダイオンへ向かう準備をするべく、鉄次郎は家に帰った。鉄佳をしっかり磨き上げ、綻びがないか確認する。
「うん、いつ見ても素晴らしい。異能力で鉄佳も強化されているのかもしれんな」
ソードフルを出ることは初めてのため、少しの緊張もある。しかし、皇帝の護衛という大切な立場を任されたので、全力で任務を全うしたい。
「ダイオンはどのような国なのだろうか。美味い酒があるといいな」
食べ物にこだわりはないが、とりあえずそこに酒があってほしい。
「そういえば、移動は馬か」
乗馬経験はある。しかし、それも若い頃だったため、今できるか自信はない。
「明日練習させてもらおう」
護衛が誰かに乗せてもらっていたら示しがつかない。鉄次郎は明日一日かけて乗馬の特訓をすることにした。
翌日、予定通り特訓を行った。しかし、鉄次郎の心配を他所に、乗馬は一回目で上手くいった。手綱に魔法がかけられており、馬を落ち着かせる作用があるらしい。実に便利なものだ。これなら、少々の嵐が来ても馬が暴れずに済む。
それから鉄佳での素振りして、夕方にはゆっくり風呂に浸かり体を休めた。明日から長距離となるため、他の人たちに迷惑がかからないようしっかり体調を整えた。
「さて、どんなことが待っているやら」
「鉄次郎さん、今日からお世話になります」
「こちらこそ、末席に加えていただき光栄で御座います」
腰を折り曲げ、緊張した面持ちで皇帝に挨拶する。やはり、初めての旅とあって、鉄次郎はいつもとは違う何かを感じていた。
──今日は何かが起こる気がする。
それが良いことなのか悪いことなのか分からない。ただ、それを真摯に受け止めるだけだ。
「鉄次郎さん、紹介します。第二皇子のアルトです」
アルトが皇帝の後ろから出てきた。鉄次郎はその顔を見て目を丸くさせた。
「あはは、どうも」
「クウリさん!? いや、アルト様でしょうか……」
「なんだ、二人は知り合いでしたか」
アルトと名乗ったのは、先日パーティーを組んだクウリだったのだ。名前が違うので全く予想できず驚かされてしまった。
「実は偽名で冒険者をしていまして。そのままだと遠巻きにされてしまうので」
「なるほど、そうでしたか」
「僕もまさか鉄次郎さんが噂の方だとは存じ上げていませんでした」
アルトの発言で、またしても鉄次郎が驚愕する。
「私が噂になっているのですか?」
「ええ、城ではもっぱらの噂です」
「うん、いつ見ても素晴らしい。異能力で鉄佳も強化されているのかもしれんな」
ソードフルを出ることは初めてのため、少しの緊張もある。しかし、皇帝の護衛という大切な立場を任されたので、全力で任務を全うしたい。
「ダイオンはどのような国なのだろうか。美味い酒があるといいな」
食べ物にこだわりはないが、とりあえずそこに酒があってほしい。
「そういえば、移動は馬か」
乗馬経験はある。しかし、それも若い頃だったため、今できるか自信はない。
「明日練習させてもらおう」
護衛が誰かに乗せてもらっていたら示しがつかない。鉄次郎は明日一日かけて乗馬の特訓をすることにした。
翌日、予定通り特訓を行った。しかし、鉄次郎の心配を他所に、乗馬は一回目で上手くいった。手綱に魔法がかけられており、馬を落ち着かせる作用があるらしい。実に便利なものだ。これなら、少々の嵐が来ても馬が暴れずに済む。
それから鉄佳での素振りして、夕方にはゆっくり風呂に浸かり体を休めた。明日から長距離となるため、他の人たちに迷惑がかからないようしっかり体調を整えた。
「さて、どんなことが待っているやら」
「鉄次郎さん、今日からお世話になります」
「こちらこそ、末席に加えていただき光栄で御座います」
腰を折り曲げ、緊張した面持ちで皇帝に挨拶する。やはり、初めての旅とあって、鉄次郎はいつもとは違う何かを感じていた。
──今日は何かが起こる気がする。
それが良いことなのか悪いことなのか分からない。ただ、それを真摯に受け止めるだけだ。
「鉄次郎さん、紹介します。第二皇子のアルトです」
アルトが皇帝の後ろから出てきた。鉄次郎はその顔を見て目を丸くさせた。
「あはは、どうも」
「クウリさん!? いや、アルト様でしょうか……」
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「実は偽名で冒険者をしていまして。そのままだと遠巻きにされてしまうので」
「なるほど、そうでしたか」
「僕もまさか鉄次郎さんが噂の方だとは存じ上げていませんでした」
アルトの発言で、またしても鉄次郎が驚愕する。
「私が噂になっているのですか?」
「ええ、城ではもっぱらの噂です」
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