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新生活

酒を浴びる

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 帰宅し、買い物した食材や酒を棚に仕舞う。冷却具ももらってあるので、ばっちりだ。

 早々に酒を浴びたくなったが、きちんと冷やしてから味わいたい。鉄次郎は鉄佳を手に庭へ出た。

 有難いことに広い土地を与えられたので、家が建っても十分素振りや軽いトレーニングが出来る広さの庭がある。誰もいないそこで、鉄佳を構え、精神を集中させた。

 どれくらい経っただろうか。気が付くと汗びっしょりだった。慌てて家に入る。

「いかんいかん、風邪を引いてしまう」

 風呂場に行き、湯舟に湯を溜める。本来、シャワーが基本らしいが、鉄次郎の願いを聞いて取り付けてくれた。

 十五分程待ち、ゆっくりと体を湯舟に沈ませる。

「あ~~~~」

 自然と声が出てしまうが、ここには誰もいないので気兼ねなく鼻歌を歌った。



「ふう、さっぱりした」

 風呂を出た鉄次郎の顔は明るい。軽い足取りで冷蔵庫の扉を開ける。キンキンに冷えた酒が出迎えてくれた。

「これだこれ。ここへ来てからというもの、肝臓の調子がすこぶる良いからなおさら酒が美味い」

 コップに注ぎ、ぐいと一気に呷る。初めて飲む酒だが、好みの味がしてさらに上機嫌になった。

「この美味しさを佳代に伝えたいが、伝えたら没収されるだけだろうなぁ。いつも酒は一日一杯までとうるさかったから……そこも可愛らしいが」

 亡き妻を想い、さらに一杯飲む。結局、この日だけで鉄次郎はコップ四杯を飲み干した。

「しまった。もう酒が少ない。このままでは毎日買うことになってしまうな。さすがに自重するか」

 本当はもう一杯飲みたいところを我慢し、さらに明日からは二杯までの制限をつけることにした。今日は偶然金を稼ぐことができたが、まだクエストを引き受けておらず、定期的にまとまった金が入ってくるかは分からない。

「年金も貯金も無いのだから、なるべく節約しよう。贅沢するのはしっかり蓄えてからだ」

 まとまった金となるとDランクの仕事を複数回した方が早いが、まだ慣れておらず、どこにモンスターが潜んでいるかも把握できていない。まずはEランクの簡単なものから始めることに決めた。

「まずは植物採集がいい。シルアさんと出会った場所辺りなら行き方も分かる。あの辺りには植物が沢山あるから、そこで採集できるものがあるとよいな」

 それにしても、この歳になって仕事をすることになるとは思わなかった。体調も良くなり、なんだか体も軽い。鉄次郎は楽し気に寝る準備を始めた。
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