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新生活

助けて画力

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「おお……こんなに有難う御座います」

 翌日、家を建てるための材料が揃ったと従者に聞かされ付いていくと、王宮からほど近い場所に木材が積み上げられていた。ファミリータイプの一軒家が建てられそうな量だ。多めに用意したらしい。多すぎる。
 お礼を言い、従者を見送る。鉄次郎はその場に座り、鉄佳を触って言った。

「鉄佳、一緒に住む良い家を建てよう」

 日本で住んでいた家は作れないが、なるべく過ごしやすい、転びにくい家にしたい。今は肝臓以外なんともなくても、来年には足腰が立たなくなっていることも考えられる。

「まずはデザインからだな」

 持ってきた紙とペンで理想の家を描き始める。外観、内観と順に描いていき、出来上がったデザイン図を確認する。

「うん……うん、全然分からん」

 鉄次郎は首を傾げた。

「自分で書いたのに全然なんの絵だから分からん。これはどうしたことか……?」

 鉄次郎は幼児も逃げ出す程の画伯だった。

「さて、困った。頭にデザインがあっても、伝える術がなければ誰かに手伝ってもらうのは難しくなる」

 誰かに代わりに描いてもらおうか。最初にシルアが浮かんだが、彼女はダメだ。今日は夜まで勉強だと言っていた。ついでに泣いていた。

「とりあえず土台の石だけ並べたら、あそこへ行ってみよう」

 どうせいつかは行かなければと思っていた。紙を置き、鉄次郎は石を一つずつ運び始めた。
 土地の三分の一を石で囲う。あまり大きくない家にしたい。余った土地は庭にして、家庭菜園をしてみよう。隠居生活に自給自足、実に魅力的な響きだ。
 家を建てている途中に苗を植えれば、完成する頃にはちょうどよく育つだろう。

「このくらいでいいか」

 並んだ石を眺め、満足気に頷く。そして鉄次郎は紙とペンを持つと、昨日辿った道を戻っていった。






「この辺りかな」

 昨日振りなのに自信が無くてきょろきょろしてしまう。自分もミングを持っていたら苦労しないのに。だだっ広い大草原で鉄次郎は困っていた。

「あっちの方から来てたから」

 記憶を頼りに森へ足を踏み込んだ。人間があまり近寄らないのか、舗装された道は無く、獣道が伸びているだけだ。

「三十匹いるって言ってたし──あ」

──いた!

 鉄次郎の五メートル程先に、ゴブリンが一体歩いていた。
 声をかけたら逃げてしまいそうなので、そうっと付いていく。しかし、運悪く鉄佳が枝に当たり、小さな音がした。

「キィ!」
「まずいッ」

 感づかれてしまった。ゴブリンが逃げる。かなり速い。鉄次郎は見失わないよう、全力で追いかけた。
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