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転移
第五皇女
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豪奢な扉を出ると、奥が見えない長い廊下が現れた。
「では、ご案内します」
異世界に来てしまったのは不運でしかないが、その日のうちに寝床を確保出来るとは。
不幸中の幸いとはこのことか。
「おじいちゃん、だれ?」
「ん?」
ズボンをくいくい引っ張られる。そこには七、八歳程の女の子が立っていた。大きい瞳に鉄次郎の顔が映っている。
「お、シルアさんの妹さんかな」
鉄次郎は屈み、女の子に視線を合わせて挨拶をした。
「私は岡村鉄次郎。シルアさんのお友だちです。宜しくお願いします」
「お姉様のお友だち? そしたらわたしのお友だち?」
「ふふ、いいですよ。お友だちだね」
「わ~~~い! わたし、ルル。第五皇女、です!」
無邪気で可愛らしく、やはり孫を思い出す。鉄次郎は目頭を押さえた。
「鉄さん、また孫!? 孫関連なると途端に弱いですね」
「ああ、すまない。孫に明日会えるはずだったから、つい涙腺が緩くなってしまって」
「そうだったんですか。軽率な発言すみません」
「いいんだいいんだ」
嘆いても、それで現状が良くなるわけではない。周りに悪い空気を伝染させるだけだ。
「孫が元気でいてくれたら、私は満足なんだ」
本当だ。目に入れても痛くない可愛い子。笑っていてくれさえいれば、何も言うことはない。ただちょっと、会えないのは寂しいけれど。ルルがぎゅうと抱き着いてきた。
「ルル、一緒に遊んであげる」
事情を知らないはずなのに、大人たちの雰囲気を読んでか実に愛らしい提案をしてくれた。鉄次郎がお返しにぽんぽんと優しく背中を叩く。
「ありがとう。暇な毎日を送る身ですから、是非今度遊んでください」
「うん!」
「ルル様、そろそろお時間です」
ルル付きの侍女らしき女性が、近くの扉から出てきて声をかけた。ルルが文句を垂れながらもおとなしく離れ、手を振る。鉄次郎たちも笑顔で手を振った。
「こちらで御座います」
数分歩いたところで、用意された部屋に着いた。
「おお、随分と広くて立派な。有難う御座います」
「これでは足りないくらいです。ゆっくり休まれてください。何か食べたいものなどありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
時計が日本の読み方と変わりなければ、今は午前十一時。まもなく昼時となる。しかし鉄次郎はこのタイミングしかないと、思い切ってキリにお願いした。
「ええと、では……お酒を少々頂けますか」
「では、ご案内します」
異世界に来てしまったのは不運でしかないが、その日のうちに寝床を確保出来るとは。
不幸中の幸いとはこのことか。
「おじいちゃん、だれ?」
「ん?」
ズボンをくいくい引っ張られる。そこには七、八歳程の女の子が立っていた。大きい瞳に鉄次郎の顔が映っている。
「お、シルアさんの妹さんかな」
鉄次郎は屈み、女の子に視線を合わせて挨拶をした。
「私は岡村鉄次郎。シルアさんのお友だちです。宜しくお願いします」
「お姉様のお友だち? そしたらわたしのお友だち?」
「ふふ、いいですよ。お友だちだね」
「わ~~~い! わたし、ルル。第五皇女、です!」
無邪気で可愛らしく、やはり孫を思い出す。鉄次郎は目頭を押さえた。
「鉄さん、また孫!? 孫関連なると途端に弱いですね」
「ああ、すまない。孫に明日会えるはずだったから、つい涙腺が緩くなってしまって」
「そうだったんですか。軽率な発言すみません」
「いいんだいいんだ」
嘆いても、それで現状が良くなるわけではない。周りに悪い空気を伝染させるだけだ。
「孫が元気でいてくれたら、私は満足なんだ」
本当だ。目に入れても痛くない可愛い子。笑っていてくれさえいれば、何も言うことはない。ただちょっと、会えないのは寂しいけれど。ルルがぎゅうと抱き着いてきた。
「ルル、一緒に遊んであげる」
事情を知らないはずなのに、大人たちの雰囲気を読んでか実に愛らしい提案をしてくれた。鉄次郎がお返しにぽんぽんと優しく背中を叩く。
「ありがとう。暇な毎日を送る身ですから、是非今度遊んでください」
「うん!」
「ルル様、そろそろお時間です」
ルル付きの侍女らしき女性が、近くの扉から出てきて声をかけた。ルルが文句を垂れながらもおとなしく離れ、手を振る。鉄次郎たちも笑顔で手を振った。
「こちらで御座います」
数分歩いたところで、用意された部屋に着いた。
「おお、随分と広くて立派な。有難う御座います」
「これでは足りないくらいです。ゆっくり休まれてください。何か食べたいものなどありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
時計が日本の読み方と変わりなければ、今は午前十一時。まもなく昼時となる。しかし鉄次郎はこのタイミングしかないと、思い切ってキリにお願いした。
「ええと、では……お酒を少々頂けますか」
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