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どんな家を所望ですか

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 満足気に去っていった皇帝にファイティングポーズをしながら、シルアは青い顔をしていた。

「顔色が優れないが」
「大丈夫です。とりあえず今日は勉強しなくていいので」
「明日三倍らしいが」
「明日まで忘れます!」

 シルアが言い切ったところで、隣のキリが盛大な拍手を送っていた。こんな間近に甘やかす人間がいたのでは、勉強に関しては今後もあまり期待出来ないかもしれない。

「さて、家はどのようなものがお好みですか? この国は鉄次郎様の国とは違う様式なようですが」

 本当に家を一から建ててくれるらしい。しかも希望を聞くという。

「一人暮らし用のお城とかは?」
「さすがにそれは派手過ぎかな。私一人だけだし、山小屋みたいな小さなもので十分だ」

 鉄次郎の意見に二人が反対した。

「いけません! それが一番の希望とあれば引き受けますが、遠慮されているのなら、それは杞憂に御座います。こちらもお礼ですから、出来る限りのおもてなしをさせて頂ける方が嬉しいです」
「恐縮です。しかし、年寄りの体では広いと掃除も大変なので、平屋の、シンプルな外見にしてもらえると助かります」
「承知しました」

 そこでふと、鉄次郎が思い立った。

「もし材料をくださるなら、私が建てても問題ありませんか?」
「家をですか!?」
「はい」

 やはりだめだったか。我儘を言ってしまい反省した鉄次郎にキリが両手を振った。

「いえ、反対なわけでは御座いません! 少々驚いてしまっただけで……建築の技能をお持ちだなんてさすがです。鉄次郎様のお好きなように建ててください」
「技能という程ではないです。水回りなど分からないところもありますので、その時は専門の方にお手伝い頂けると助かります」

 家に隣接する倉庫や犬小屋を建てたことがある程度だ。ただ、ここに来てすることもなく一日一日を暇するならば、やることを作っておきたい。年寄りには腰にクるかもしれないが、自分の家を作るなんて楽しそうだ。

「それはもちろん! 何人でも連れていってください」
「はいはい! 私も手伝いたいです!」
「シルア様はまずお勉強からで御座います」
「じゃあ早く終わらせるからぁ!」

 それを聞いたキリが飛び上がった。

「まあ! シルア様からそんなお言葉が出るなんて! 鉄次郎様は救世主です!」

 鉄次郎が特別何かをしたわけではないが、皇女の勉強に対する姿勢が変わったなら役に立てて何よりだ。

「それでは明日までに材料を用意致します。本日はお部屋を用意しますので、そちらでお休みください」
「有難う御座います」
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