そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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シルアのお家

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「うわああ……」
「来てくださいよ~ッ」

 服を引っ張られ、がくがく揺さぶられる。この感じ、あれに似ている。孫がまだ小さかった頃、おもちゃ売り場で欲しい物があって駄々をこねられた、あれに。

──十六歳と言っていたか。優夏とそんなに変わらないのだな。

 十二歳と十六歳では四歳差があるのだが、鉄次郎にとっては四歳など誤差も誤差。一年なんて気が付いたら過ぎているし、一日なんて欠伸をしたら終わっている。であるから、四年は先週くらいの認識だ。
 孫と同じくらいだと思うと、この一生懸命鉄次郎を誘おうとする人間が愛おしくなってきた。テレビで初めてのダンスを間違えながらぎこちなく踊る幼稚園児を観て泣いてしまうのと同義だ。

「ううん。しかし、初めての方々に負担をかけるのはあまりしたくない」
「なら! 私の家族が喜んでいたらいいってことですね!」
「まあ……うむ、本心から言ってくださるなら……」

 やはりじじいは孫に弱い。孫ではないけれども孫に近いので弱かった。シルアの拘束がやっと解ける。

「やった! 言質取った!」
「子どもながらにやり手だ……」

 これは将来大物になる。鉄次郎は感心した。



 言っていた通り、程なくして街が見えた。想像以上に立派な街だ。街というより、王都と言った方が正しいかもしれない。奥の方に城らしきものまで見えてきた。

「良い街だ」
「でしょ!」

 自分が住む街が褒められて嬉しいらしい。頭を思い切り撫で回したくなるのを寸でで我慢する。いくら孫みたいでも他人だ。距離を間違えてはいけない。

「どうしたんですか?」

 右手を浮かせて震える鉄次郎に問いかける。我慢はしたが、右手を引っ込めるまでは出来なかったのだ。

「シルアさんが可愛いことを言うので頭を撫でたくなったのだ」

 それにシルアが首を傾げる。

「撫でてもいいですよ?」
「……いいのか?」

 思いがけず許可をもらってしまった。鉄次郎が咳払いをする。

「こほん。ありがとう。では、撫でさせて頂く」
「あはは。面白いおじいちゃん」

 シルアの言葉に甘えて、鉄次郎は心ゆくまで撫でさせてもらった。
 ひとしきり満足したところで、ミングがゆっくり降下した。どうやら着いたらしい。どんな家だろうか。見上げて鉄次郎が口を大きく開けた。

「ここはお城か……!」
「うん。私のお家です」
「では、君は皇女……かな?」
「いちおう皇女です! 兄妹いっぱいだから、第四皇女だけどね」

 とんでもない人物を助けたのかもしれない。鉄次郎はシルアに手を引かれるままに城へ入っていった。
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