47 / 66
新たな風
6
しおりを挟む
国守に言われて、傍で遊んでいたおはぎを抱きしめた。もうここにはいないらしいが、周囲を警戒してしまう。国守が首を振った。
「この辺りにいたら、すでに私が反応している。そうかりかりするな」
「そっか」
国守の言う通り、いた形跡を感知出来るなら気配も分かるはず。つまり、もう遠くに行ったということだ。
「じゃあ、そのあやかしが原因でおはぎに力が戻ったんですよね。俺たちがいた時は近くにいたってこと?」
「そうだ。食われなくてよかったな」
「そんな危険なあやかしがいるんですか!?」
「いないとは言い切れない。野良のあやかしはいくらでもいる。力が付けば、神もどきになるし、人間に危害を加えることも十分にある」
恐ろしい話を聞いてしまった。電波を求めて二度も行ってしまった自分も怖い。無知とは時に暴力になる。あやかしの姿は見えなかったが、もしかしたら姿を消すことが出来る類かもしれない。どんなあやかしにせよ、二度とエンカウントしないことを望む。
「他のあやかしに作用する程力を蓄えているあやかしが存在することを察知出来たのは収穫だ。お前が私の家に来て一番役に立った」
「そですか。それはよかったなぁ」
家事はわりとしているのだが、それはカウントされていないらしい。厳しい宿主だ。それくらいここにいたあやかしの存在が大きいともとれる。
「まあ、危ない輩ではないだろう。それか、お前がよほど不味そうに見えたか」
「不味いなら不味いでいいです。死にたくないし」
国守にじろじろ不躾に観察される。非常に居心地が悪い。
「よし、お前であやかしの居場所を突き止めるか」
「なんでそうなるの!?」
脳内のどの回路を通したらその結果になるのか詳細を教えてほしい。教えてもらったところで解決はしないが。清仁は懇願した。
「俺、食べられなかったから、あやかしからしたら不味いんですよ。だから、俺を囮にしたって出てこない」
「別にあやかしをどうこうするつもりはない。上が依頼しない限りはな。ただ、現状は把握した方がいい。お前、そのすまあとふぉんで感じ取れるのだろう。電波とやらが入ったらすぐ知らせろ」
「俺の安全については無視ですか」
「食べられないのだから問題無い」
昨日はたまたま食べられなかっただけかもしれないのに。清仁の不安をよそに、囮作戦は決行されることとなった。居候は予想以上に立場が低かった。
とはいっても積極的に探すわけではなく、散歩時にスマートフォンを持って歩き、たまに電波が入っているかを確認する程度と決まった。ホラー展開で怖い方にわざわざ行かなければならないかと思っていたので安心する。
おはぎはすでに人型になれるまで力が戻ってきているので、おはぎが人型になったところでそこにあやかしがいるとは限らない。結局スマートフォン頼み。かなり地道だ。
「今日のところは帰る」
「はい。付き合ってくれて有難う御座います」
清仁の後ろで冷たい風が一つ吹いた。
「この辺りにいたら、すでに私が反応している。そうかりかりするな」
「そっか」
国守の言う通り、いた形跡を感知出来るなら気配も分かるはず。つまり、もう遠くに行ったということだ。
「じゃあ、そのあやかしが原因でおはぎに力が戻ったんですよね。俺たちがいた時は近くにいたってこと?」
「そうだ。食われなくてよかったな」
「そんな危険なあやかしがいるんですか!?」
「いないとは言い切れない。野良のあやかしはいくらでもいる。力が付けば、神もどきになるし、人間に危害を加えることも十分にある」
恐ろしい話を聞いてしまった。電波を求めて二度も行ってしまった自分も怖い。無知とは時に暴力になる。あやかしの姿は見えなかったが、もしかしたら姿を消すことが出来る類かもしれない。どんなあやかしにせよ、二度とエンカウントしないことを望む。
「他のあやかしに作用する程力を蓄えているあやかしが存在することを察知出来たのは収穫だ。お前が私の家に来て一番役に立った」
「そですか。それはよかったなぁ」
家事はわりとしているのだが、それはカウントされていないらしい。厳しい宿主だ。それくらいここにいたあやかしの存在が大きいともとれる。
「まあ、危ない輩ではないだろう。それか、お前がよほど不味そうに見えたか」
「不味いなら不味いでいいです。死にたくないし」
国守にじろじろ不躾に観察される。非常に居心地が悪い。
「よし、お前であやかしの居場所を突き止めるか」
「なんでそうなるの!?」
脳内のどの回路を通したらその結果になるのか詳細を教えてほしい。教えてもらったところで解決はしないが。清仁は懇願した。
「俺、食べられなかったから、あやかしからしたら不味いんですよ。だから、俺を囮にしたって出てこない」
「別にあやかしをどうこうするつもりはない。上が依頼しない限りはな。ただ、現状は把握した方がいい。お前、そのすまあとふぉんで感じ取れるのだろう。電波とやらが入ったらすぐ知らせろ」
「俺の安全については無視ですか」
「食べられないのだから問題無い」
昨日はたまたま食べられなかっただけかもしれないのに。清仁の不安をよそに、囮作戦は決行されることとなった。居候は予想以上に立場が低かった。
とはいっても積極的に探すわけではなく、散歩時にスマートフォンを持って歩き、たまに電波が入っているかを確認する程度と決まった。ホラー展開で怖い方にわざわざ行かなければならないかと思っていたので安心する。
おはぎはすでに人型になれるまで力が戻ってきているので、おはぎが人型になったところでそこにあやかしがいるとは限らない。結局スマートフォン頼み。かなり地道だ。
「今日のところは帰る」
「はい。付き合ってくれて有難う御座います」
清仁の後ろで冷たい風が一つ吹いた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
裏公務の神様事件簿 ─神様のバディはじめました─
只深
ファンタジー
20xx年、日本は謎の天変地異に悩まされていた。
相次ぐ河川の氾濫、季節を無視した気温の変化、突然大地が隆起し、建物は倒壊。
全ての基礎が壊れ、人々の生活は自給自足の時代──まるで、時代が巻き戻ってしまったかのような貧困生活を余儀なくされていた。
クビにならないと言われていた公務員をクビになり、謎の力に目覚めた主人公はある日突然神様に出会う。
「そなたといたら、何か面白いことがあるのか?」
自分への問いかけと思わず適当に答えたが、それよって依代に選ばれ、見たことも聞いたこともない陰陽師…現代の陰陽寮、秘匿された存在の【裏公務員】として仕事をする事になった。
「恋してちゅーすると言ったのは嘘か」
「勘弁してくれ」
そんな二人のバディが織りなす和風ファンタジー、陰陽師の世直し事件簿が始まる。
優しさと悲しさと、切なさと暖かさ…そして心の中に大切な何かが生まれる物語。
※BLに見える表現がありますがBLではありません。
※現在一話から改稿中。毎日近況ノートにご報告しておりますので是非また一話からご覧ください♪
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
CODE:HEXA
青出 風太
キャラ文芸
舞台は近未来の日本。
AI技術の発展によってAIを搭載したロボットの社会進出が進む中、発展の陰に隠された事故は多くの孤児を生んでいた。
孤児である主人公の吹雪六花はAIの暴走を阻止する組織の一員として暗躍する。
※「小説家になろう」「カクヨム」の方にも投稿しています。
※毎週金曜日の投稿を予定しています。変更の可能性があります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる