46 / 66
新たな風
5
しおりを挟む
「遅かったな。どこぞれ野垂れ死んでいるのかと思った」
「それが聞いてくださいよ」
国守に今日のことを興奮しながら話してみたものの、Wi-Fiや電波の概念を上手く説明出来ず、悲しみは全く伝わらなかった。しかし、おはぎの変化については興味を示したらしく、狐姿の仙までやってきておはぎを観察した。
「仙、おはぎの状態をどう思う」
『今朝までと何も変わりませぬ』
「だろうな。私も何も感じん」
これでは清仁の白昼夢説が濃くなってしまう。清仁が慌てて提案をする。
「じゃあ、明日仙さんも行きましょ。なんなら国守さんも」
「しかし、二度目はおはぎの変化は無かったのだろう」
「一度あったんだから、またあるかもしれないじゃないですか」
「ふむ、一理ある」
いつもなら清仁の意見なんぞ一蹴されるのに、珍しく国守が意見を聞き入れてくれた。一つお手伝いをして褒められた子どものように清仁は嬉しくなった。
『小童の戯言もたまには付き合ってやらんと、拗ねて暴れる。主、いってみましょう』
「そうだな」
「仙さんから見た俺ってそんな感じなんだ……」
三十代にして小童と言われるのは心外だが、あやかしからすれば人間の数十年などあっという間なのかもしれない。仙が何歳かは知らないが、主である国守の何倍も生きている可能性は十分にある。
なんにせよ、自分の提案が通ったことを素直に喜ぶ。呼応して、おはぎもぴょんぴょん飛び跳ねた。すかさず動画を撮った。
翌日、全員で古墳を目指して出発した。朝方おはぎが人型に戻りはしたが、まだ万全ではないので、力を蓄えてもらおうと今は兎の姿でいる。
古墳まで近くてよかった。もし遠ければ、途中で飽きて帰られてしまったかもしれない。
「ここか」
「はい」
昨日と同じ場所に立つ。古墳だ。どこから見ても古墳以外の何ものでもない。
──古墳パワーよ出ろ出ろ!
そうしないと、清仁の立場が悪くなる。国守が歩いている横で清仁は必死に祈った。
「ふむ」
「ど、どうですか」
国守が両手を組む清仁に振り向く。
「無いな」
「無い、無いですか」
「古墳に特別な何かは無い」
「無い……」
無い無い言われて気分が地に這ってしまった。本当に白昼夢だったのか。清仁は自分が信じられなくなった。その時、一つの希望が降る。
「しかし、何かがいた形跡はある」
「やったぁ!」
「お前、単純だな」
「でも、何かはいたんですよね。何か分からないけど、何かいたってことは、おはぎの変化もスマホの電波も俺の妄想じゃなかったってことですよね!」
小躍りして喜ぶ清仁を国守が可哀想な目で見る。どんな風に見られたっていい。またその何かに出会えれば、現代との繋がりが生まれるかもしれないのだ。
「その何かって、少しでも分かりますか?」
国守が小首を傾げながら、二三歩歩いて言った。
「恐らくはあやかし……しかも、相当な」
「それが聞いてくださいよ」
国守に今日のことを興奮しながら話してみたものの、Wi-Fiや電波の概念を上手く説明出来ず、悲しみは全く伝わらなかった。しかし、おはぎの変化については興味を示したらしく、狐姿の仙までやってきておはぎを観察した。
「仙、おはぎの状態をどう思う」
『今朝までと何も変わりませぬ』
「だろうな。私も何も感じん」
これでは清仁の白昼夢説が濃くなってしまう。清仁が慌てて提案をする。
「じゃあ、明日仙さんも行きましょ。なんなら国守さんも」
「しかし、二度目はおはぎの変化は無かったのだろう」
「一度あったんだから、またあるかもしれないじゃないですか」
「ふむ、一理ある」
いつもなら清仁の意見なんぞ一蹴されるのに、珍しく国守が意見を聞き入れてくれた。一つお手伝いをして褒められた子どものように清仁は嬉しくなった。
『小童の戯言もたまには付き合ってやらんと、拗ねて暴れる。主、いってみましょう』
「そうだな」
「仙さんから見た俺ってそんな感じなんだ……」
三十代にして小童と言われるのは心外だが、あやかしからすれば人間の数十年などあっという間なのかもしれない。仙が何歳かは知らないが、主である国守の何倍も生きている可能性は十分にある。
なんにせよ、自分の提案が通ったことを素直に喜ぶ。呼応して、おはぎもぴょんぴょん飛び跳ねた。すかさず動画を撮った。
翌日、全員で古墳を目指して出発した。朝方おはぎが人型に戻りはしたが、まだ万全ではないので、力を蓄えてもらおうと今は兎の姿でいる。
古墳まで近くてよかった。もし遠ければ、途中で飽きて帰られてしまったかもしれない。
「ここか」
「はい」
昨日と同じ場所に立つ。古墳だ。どこから見ても古墳以外の何ものでもない。
──古墳パワーよ出ろ出ろ!
そうしないと、清仁の立場が悪くなる。国守が歩いている横で清仁は必死に祈った。
「ふむ」
「ど、どうですか」
国守が両手を組む清仁に振り向く。
「無いな」
「無い、無いですか」
「古墳に特別な何かは無い」
「無い……」
無い無い言われて気分が地に這ってしまった。本当に白昼夢だったのか。清仁は自分が信じられなくなった。その時、一つの希望が降る。
「しかし、何かがいた形跡はある」
「やったぁ!」
「お前、単純だな」
「でも、何かはいたんですよね。何か分からないけど、何かいたってことは、おはぎの変化もスマホの電波も俺の妄想じゃなかったってことですよね!」
小躍りして喜ぶ清仁を国守が可哀想な目で見る。どんな風に見られたっていい。またその何かに出会えれば、現代との繋がりが生まれるかもしれないのだ。
「その何かって、少しでも分かりますか?」
国守が小首を傾げながら、二三歩歩いて言った。
「恐らくはあやかし……しかも、相当な」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
裏公務の神様事件簿 ─神様のバディはじめました─
只深
ファンタジー
20xx年、日本は謎の天変地異に悩まされていた。
相次ぐ河川の氾濫、季節を無視した気温の変化、突然大地が隆起し、建物は倒壊。
全ての基礎が壊れ、人々の生活は自給自足の時代──まるで、時代が巻き戻ってしまったかのような貧困生活を余儀なくされていた。
クビにならないと言われていた公務員をクビになり、謎の力に目覚めた主人公はある日突然神様に出会う。
「そなたといたら、何か面白いことがあるのか?」
自分への問いかけと思わず適当に答えたが、それよって依代に選ばれ、見たことも聞いたこともない陰陽師…現代の陰陽寮、秘匿された存在の【裏公務員】として仕事をする事になった。
「恋してちゅーすると言ったのは嘘か」
「勘弁してくれ」
そんな二人のバディが織りなす和風ファンタジー、陰陽師の世直し事件簿が始まる。
優しさと悲しさと、切なさと暖かさ…そして心の中に大切な何かが生まれる物語。
※BLに見える表現がありますがBLではありません。
※現在一話から改稿中。毎日近況ノートにご報告しておりますので是非また一話からご覧ください♪
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
CODE:HEXA
青出 風太
キャラ文芸
舞台は近未来の日本。
AI技術の発展によってAIを搭載したロボットの社会進出が進む中、発展の陰に隠された事故は多くの孤児を生んでいた。
孤児である主人公の吹雪六花はAIの暴走を阻止する組織の一員として暗躍する。
※「小説家になろう」「カクヨム」の方にも投稿しています。
※毎週金曜日の投稿を予定しています。変更の可能性があります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています
後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜
逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】
姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。
だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。
夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる