桓武天皇に助言してうっかり京都を消滅させてしまったので、陰陽師のあやかしパワーで取り戻す

文字の大きさ
上 下
35 / 66
おはぎ覚醒

1

しおりを挟む
「毎日楽しいね」

 すっかり早朝散歩が日課になり、心身ともに健康になった清仁。たまに貴族の青年に追突されることはあるが、二三言会話をすれば薄笑いを浮かべながら帰っていくのでたいした負担にはなっていない。

 このままここでスローライフを送るのかと思ったところで、当初の目的を思い出す。

「ヤバイ。ちゃんと忘れないで達成しないと」

 もたもたしていたら最近涼しくなってきた。秋になったのかもしれない。というより、夏だったと思われる数週間もわりと過ごしやすい気温だった。熱中症とはなんだろうという気温だった。地球温暖化はこんなところで実感した。

 しかし、今日も今日とて特にすることはない。清麻呂が再進言する様子も無い。こちらから強く頼める立場ではないのがツライ。自分が勝手にやらかして、天皇から清麻呂が罰を与えられたら困る。

「散歩が終わったら、大根とネギの水やりしよっか」
『ぷ』
「そこの貴族」
「はい!?」

 通りには誰もいなかった。隣は林である。話しかけられると思っていなかったので、声が裏返ってしまった。しかもなんだろう。嫌な予感がする。

「服をここに置いて去れ。そうすれば、命だけは助けてやる」

──盗賊だぁ!!

 初めて出会ったこの時代の犯罪者に逃げ出すことも出来ず、その場に固まる。それも仕方がない、こちらは丸腰、相手は武器持ちかつ三人組なのだから。

「俺を殺しても何も出ません」
「だから、服を置いていけば命は助けてやるって言ってんだろうが!」

 さっそく盗賊を怒らせてしまった。ここは言うことをきくべきだ。しかし、この服は清麻呂からもらった大切な正四位下のものである。簡単には渡せない。清仁が迷っていると、包丁をもった一番前にいる盗賊が声を荒げた。

「死にてぇのか!」
「ひぃッ脱ぎます!」
『ぷぅッ!』

 これに怒ったのはおはぎだ。清仁の前に立ち、盗賊から守る仕草をしている。それに感動した清仁だったが、男三人対小さな式神兎ではどう見ても負ける未来しか見えない。相手が式神を認識出来ていないのが幸いだが、おはぎが盗賊に突撃したら大変だ。

「おはぎ、大丈夫だから。すぐ逃げれば俺は平気だから」
「何一人でぶつぶつ言ってんだ」
「今すぐ脱ぎますので!」

 清仁の焦りが頂点に達した瞬間、それを感知したおはぎの体が光り出した。驚いたのは清仁のみ、ではなかった。三人もぼんやりとした光を感じ取ったらしく、地面の辺りを観察し始めた。

「なんだ? 何か光って──うわぁぁぁ!」

 いったい何が起きたのか。気付いた時には男たちは林の中に吹き飛んでいた。木に当たり、目を回している者、痛みに呻いている者。全く理解出来ないが、逃げるなら今しかない。清仁はおはぎを抱っこして全力で走り出した。

「さよなら!!」
「おまッくそッッ!」

 追いかけてくる元気はないようで、一人と一羽は無事長岡京に帰ることが出来た。

「はぁ……はぁ……すごいね、おはぎちゃん」
『ぷ?』
「あはは、とりあえずありがと」

 本兎もあまり分かっていないらしく、とりあえずおはぎの頭を優しく撫でて礼を言った。

「それにしても、盗賊っているんだな。これからはあまり遠出しないようにしよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~

保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。 迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。 ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。 昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!? 夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。 ハートフルサイコダイブコメディです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...