桓武天皇に助言してうっかり京都を消滅させてしまったので、陰陽師のあやかしパワーで取り戻す

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そうだ、進言しよう

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「そうだ。後で写真見ましょ。趣味じゃないから数は少ないけど、未来の写真ありますよ」
「ほぉぉぉぉ! 私がもらった服を着ている者がこんなに沢山!」

 想像以上に食いつかれた。確かに、清仁も令和よりさらに未来の風景を見ることが出来ると言われたら、言葉にならない感情が生まれるだろう。

「この髪の毛が金色の男は妖怪か?」
「友人ですね」
「この耳たぶに棒を突き刺した坊主は生臭和尚か。耳に異物を入れるのは宗教上の理由なのでは?」
「友人ですね」

「おおッ赤髪をおっ立てておる! これこそ妖怪」
「友人です」
「清仁の友人は百鬼夜行なのか?」

 かなり失礼な感想を述べられたが、長岡京の人間からしたら令和は妖怪パーティーで合っているのかもしれない。生臭和尚と言われた友人のピアスは先月両耳で十個に達したらしい。

 他にも友人と遊んだ時に撮ったものを見せていく。面白みに欠ける石ころでも、清麻呂には十分の娯楽となったようだ。

「車は無いのか? 牛がいないぞ」
「ほら、これが現代の車です」
「この鉄の塊が? 動物がいない」
「人間が操作しているんです」

 電気もガソリンも知らない相手には説明が難しく、清麻呂も詳しい回答を望んではいなかった。ビルを指差しては驚き、ランドセルのような鞄が欲しいと言った。

「いいなあ。素晴らしい。実に素晴らしい。未来は光で溢れている」
「そんな未来を俺は……すみません」
「いやッ再遷都出来なくとも、未来はそう変わらないやもしれないぞ」
「未来破壊人を慰めてくれるなんて優しいですね」

 清麻呂があまりにも眩しく言うものだから、急に罪悪感が轢き逃げしてきた。もしかしたら先祖かもしれない人を悲しませている。

「あの」
「ははは! 見てみろ清仁! 牛のうんこ!」

 距離ゼロで見せられた画面には、牛の落とし物を写した写真が五十枚連写されていた。

「お前! 貴族! 電池無くなるだろ!」
「でででんちとは……? お前時々無礼になるなぁ」
「うるせぇうんこ貴族! 男子小学生か!」
「正四位下だが」

 正四位下だろうが貴族だろうが、この際関係ない。清仁自身が貸したわけだがそれもちょっと横に置いておく。このスマートフォンが唯一未来を視覚的に思い出させてくれる。しかし、電池には限りがある。清仁はスマートフォンを握り締めた。

「あと電池半分も無いな……」

 どうせ電話がかかってくることもないので電源を切っておく。また写真を撮る時にでも入れたらいい。

「清仁。そういえば、国守の家から追い出されただろう。どうだ、私の家に来ないか? 家の者もきっと歓迎してくれる」
「え? うーん」

 あれは追い出されたと理解していいのか。鞄もまだ国守の家にある。歓迎はされていないと思うが。

「じゃあお邪魔させてもらおうかな。ぅおッ」

 言い終わるのを待っていたかのように、後ろから衝撃が来た。確認すると、因縁の狐。まさか付いてきていたのか。

『あれだけ世話になっておきながら勝手に行く奴があるか』
「えっだって迷惑でしょ」
『迷惑かどうかはされている方が判断する。本人が分かった口を聞くな』
「怖」
『とにかく日が暮れる前に戻れ』

 こちらが反応する前に消えてしまった。呆然と立ち尽くす。狐がそう言うということは、国守の意見ということなのだろう。ツンデレここに極まれり。

「なんか戻らないといけないみたいなので、せっかくですけど」
「ずるい」
「誰が?」
「国守が。私だって未来人と生活したい!」
「全然ずるくなくない?」

 都の人間はみんなこんなに我が強いのだろうか。身分が高いのも考えものだ。もしかしたらこの二人だけ特別なのかもしれないが、桓武天皇も少々おかしいので、やはりこれがデフォルトなのかと疑ってしまう。

「ま、いいや。俺戻りますね。なんか五月蠅いし」
「私を置いていくのか! 私はお前の先祖だぞ!」
「知らないし。とりあえずお世話になりました。桓武天皇のことはまた話し合いましょう」
「遊びに行くからな!」

 ぶんぶん手を振られる。小学生より小学生な勢いに笑いながら手を振り返す。あまりに純粋過ぎて、こちらも強張った肩がいくらか解れた。

 帰宅して国守からぐちぐちと文句を頂いたが、夕飯はしっかり出してくれた。おかわりもくれた。従者もおらず人嫌いかと思っていた。もしかしたら違うのかもしれない。

「ところで、お前はこれからどうするんだ? 進言が失敗したんだろう」
「そ、そうでした。出来たらしばらく居候させてほしいなぁと。無理だったら清麻呂さんのところへ行くので」
「ふん」

 そっぽを向かれた。しかし、清仁は知っている。狐が帰ってこいと言ったのだから、これ以上聞く必要は無いことを。

 いそいそと服を敷き、その上に寝転がる。普段の癖で繋がらないスマートフォンを開いてしまったので、とりあえず今日撮られた写真を眺める。うんこは消した。

「おやすみスマホちゃん」

 適当にスマートフォンを頭上に置いて目を閉じる。一瞬で睡魔がやってきて、気付いたら朝だった。衝撃の声とともに。
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