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二人で帰宅
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ひとしきり再会を喜んだ後、僕は神妙に尋ねた。
「その、家族のところは行かなくて平気なの?」
「うん、平気」
迷いなく言いきった夏季に首を傾げる。
そうか、僕の前に行ったんだ。夏季が死んでしまったのは昨日だから。一日だけでよかったのかな。僕のところは最後でよかったのに。
とりあえず、ここにいつまでもいるわけにはいかないので、家に帰ることにした。
二人で歩き出す。夏季はふわふわ浮かないで僕と一緒に歩いている。まるで生きている人だ。変な気持ちになる。通行人だって、誰も夏季を見て驚かない。視えているのか、いないのか。
家が見えたところで深呼吸をする。緊張しながら、鍵を開けて中に入った。
「ただいま」
「おかえり~」
キッチンにいたお母さんが玄関に一瞬顔を出した。どきどきしたが、何も言われなかった。やっぱり視えないんだ、僕にしか。そっか。
夏季がこの世にいないってことが証明された気がして、勝手に傷ついてしまった。それは夏季のものなのに。
「わぁ、類君の部屋だ」
「そこ座って」
あちこち観察されて僕は焦った。見られてまずいものはないけれども、何もかもが恥ずかしい気がしてくる。ベッドを背もたれにして座った夏季は平然とした顔をしている。混乱しているのは僕だけらしい。
すぐに夕食の時間になった。夏季は部屋で待つと言った。食べられないのに、人の家の食卓囲んでいる姿見るのつまらないもんね。
お父さんが帰ってきていたけど、お父さんも何も言わない。誰も知らない、夏季がいることを。
部屋に戻ると夏季はテレビを観ていた。部屋には小さい液晶があって、付けっぱなしにしていた。
「おかえり」
どうやら、僕以外には何も触れないらしく、暇つぶしに漫画を読んだりすることもできなかった。
隣に座って一緒にテレビを観る。こうして部屋に二人でいるのは中学以来だ。高校ではもう、こんなことはできなかった。
「夏季」
「何?」
「明日は部活があるんだけど、見に来る?」
「行く!」
夏季は即答した。
僕は合唱部で、部活自体は夏の合唱コンクールを最後に引退している。ただ、三月に定期演奏会があるため、受験が終わって練習にまた参加するのだ。
何気なく提案したことだったが、嬉しそうな彼女の笑顔が見られて僕の心が浮上した。
寝る時間になると、夏季は外へ行くと言った。このまま会えなったらどうしよう。思わずその腕を掴んでしまった。
「大丈夫。部活一緒に行くんでしょ」
「うん」
「おやすみ。また明日」
「おやすみ」
「その、家族のところは行かなくて平気なの?」
「うん、平気」
迷いなく言いきった夏季に首を傾げる。
そうか、僕の前に行ったんだ。夏季が死んでしまったのは昨日だから。一日だけでよかったのかな。僕のところは最後でよかったのに。
とりあえず、ここにいつまでもいるわけにはいかないので、家に帰ることにした。
二人で歩き出す。夏季はふわふわ浮かないで僕と一緒に歩いている。まるで生きている人だ。変な気持ちになる。通行人だって、誰も夏季を見て驚かない。視えているのか、いないのか。
家が見えたところで深呼吸をする。緊張しながら、鍵を開けて中に入った。
「ただいま」
「おかえり~」
キッチンにいたお母さんが玄関に一瞬顔を出した。どきどきしたが、何も言われなかった。やっぱり視えないんだ、僕にしか。そっか。
夏季がこの世にいないってことが証明された気がして、勝手に傷ついてしまった。それは夏季のものなのに。
「わぁ、類君の部屋だ」
「そこ座って」
あちこち観察されて僕は焦った。見られてまずいものはないけれども、何もかもが恥ずかしい気がしてくる。ベッドを背もたれにして座った夏季は平然とした顔をしている。混乱しているのは僕だけらしい。
すぐに夕食の時間になった。夏季は部屋で待つと言った。食べられないのに、人の家の食卓囲んでいる姿見るのつまらないもんね。
お父さんが帰ってきていたけど、お父さんも何も言わない。誰も知らない、夏季がいることを。
部屋に戻ると夏季はテレビを観ていた。部屋には小さい液晶があって、付けっぱなしにしていた。
「おかえり」
どうやら、僕以外には何も触れないらしく、暇つぶしに漫画を読んだりすることもできなかった。
隣に座って一緒にテレビを観る。こうして部屋に二人でいるのは中学以来だ。高校ではもう、こんなことはできなかった。
「夏季」
「何?」
「明日は部活があるんだけど、見に来る?」
「行く!」
夏季は即答した。
僕は合唱部で、部活自体は夏の合唱コンクールを最後に引退している。ただ、三月に定期演奏会があるため、受験が終わって練習にまた参加するのだ。
何気なく提案したことだったが、嬉しそうな彼女の笑顔が見られて僕の心が浮上した。
寝る時間になると、夏季は外へ行くと言った。このまま会えなったらどうしよう。思わずその腕を掴んでしまった。
「大丈夫。部活一緒に行くんでしょ」
「うん」
「おやすみ。また明日」
「おやすみ」
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