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第4章
帰還
しおりを挟む「アカリ、また来いよ!絶対だからな!」
「うん。また遊びにくるね。」
ラムさんの足にしがみついたカイ君は今にも泣きそうだ。大きな目をウルウルとさせ、それでも泣くまいと我慢している。
「アカリちゃん、そろそろ行こうか。」
「はい、お待たせしました。」
ノアさんが用意してくれていた荷馬車に乗り込んだ。本当は馬とかの方が速いんだけど、私が馬に乗れないからこの方法しかなかった。
動き出した車内で考えるのは、ジェイドのことばかり。竜が木になるなんて、現世でも聞いたことがない。私はラノベとかよく読む方だったのに、どうしたらジェイドを助けられるか少しもわからない。
乗馬ができるノアさんは、私より先にジェイドの元へ向かうことになった。仕入れや発送するのに、野営とかも慣れているらしい。
あぁ、私も馬に乗れたらよかったのに。こんなこと、今になって考えてもどうもならないけど。
自分の無力さがもどかしくて、唇を噛んだ。
嫌な予感ばかりが頭をよぎる。
もう既に、ジェイドは完全に木になってしまだているのではないだろうか。見てもジェイドだとわからない状態にまでなっているんじゃないだろうか。もう2度と、ジェイドには会えないんじゃないだろうか。話すこともできないんじゃないのか。
私は、またジェイドに会うことができる前提で家を出た。その結果、ジェイドを想像以上に傷つけてしまった。会えなくなるかもしれないなんて、考えていなかった。
なんて自分勝手なんだろう。助けてもらって、勝手に家を出て、また勝手に会いに行くつもりだったなんて。ジェイドの優しさに甘え過ぎではないだろうか。自分本位過ぎて、嫌になる。後悔してもしきれない。
「アカリさん、もうすぐで街に着きます。夜はこちらに泊まりましょうか?」
ノアさんのお店の従業員、ハオさんがこの馬車を運転してくれている。
「いいえ、食料とか必要なものを買い足したら街を出ましょう。野営でもかまいません。少しでも早く、彼の元に行きたいんです。」
「わかりました。そうしましょう。」
ハオさんは、ノアさんのお兄さん的存在だそうだ。古くからいる従業員で、彼が学生になる前からノアさんの家で働いているらしい。父親が早くに亡くなり、母親は体が弱く長時間働くことができなかった。結果的に、彼が働きに出るしかなかったそうだ。もちろん、ジェイドのこともよく知っている。
ハオさんは私を落ち着かせるためか、たくさん話しかけてくれた。例えば、ノアさんはすごく気が動転していて、私に会うまでに事故を起こしそうだと思い、ここまで着いてきたこと。幼い時にノアさんと悪戯をしてビオレットさんにしこたま怒られたこととか、陽気に色々な話をしてくれた。私の知らないジェイドやノアさんがそこにいて、少しだけ元気が出た。
街でドライフルーツや硬めのパン、チーズなどの保存食を買った。あまり食欲はなかったけど、元気な笑顔でジェイドに会いに行かないと、心配させてしまうよ?とハオさんに言われてしまった。
容易にジェイドが私を見てオロオロしている姿が浮かんで、少し笑ってしまった。
ラムさんたちがいた町を出て、1週間と少し。ジェイドが待つ家に、やっと到着した。外観はちっとも変わらなくて、ドアを開けたらあの優しい笑顔が出迎えてくれるんじゃないかと思ってしまった。
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