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第2章

留守番

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ジェイドが知り合いのお店に行っている間、私は畑仕事をしていた。ここにきてから色々な野菜を育てているため、食べごろのものやどんなものがより美味しいかなど、わかるようになってきていた。今なら、1人でスーパーに買い物に行っても新鮮で美味しい野菜を選べる自信がある。・・・まぁ、スーパー自体がこっちにないんだけど。

赤く艶々と輝くトマト。

現世では仕事が忙しかったため、野菜を買ってもご飯を作る時間がなかった。野菜なんて買ったら、すぐに腐らせてしまう。だから、いつの間にか野菜を買わなくなった。
トマトなんて、ここに来て久しぶりに食べた。
ここで生活していると、以前の私はどれだけ死に向かった暮らしをしていたのかと恐ろしくなる。

「収穫できたのはトマトにズッキーニ、ナス、コーン、きゅうり・・・。確かにジャガイモと玉ねぎが倉庫にあったよね。」

野菜たっぷりのミネストローネとチーズをのせてこんがり焼いたフランスパン、マッシュドポテトあたりを作ろうかな・・・。
きゅうりは漬物にするため仕込んでおこう。浅漬けだったら簡単にできそうだしな。そうしよう。

昨日、多めに村へ出荷したから今日は最低限の量しか収穫していない。
収穫した野菜を簡単に洗ってキッチンに運んでおく。


ジェイドは3時間くらいで戻ると言っていた。家を出てから2時間くらい経ったから、後1時間くらいで帰ってくるのか。ちょうど帰りが15時頃なら、今からクッキーでも作って待ってようかな。

私がクッキーを作るときは、いつもアメリカンクッキーと決めている。
母がよく作ってくれていて、手伝っているうちにレシピを覚えた。母の味と言っても過言ではない。
大きめチョコチップとクルミが入っていて、ザクザク食感で美味しい。これなら紅茶にもコーヒーにも合うし、日持ちもする。
前に一度、ジェイドに作ったのだがとても喜んでくれた。その次の日には、保存用の瓶を買ってきたからまた作って欲しいとお願いされたくらいだ。

ボウルに入れた材料をさっくり混ぜて、天板にスプーンで形を作って並べる。天板に油をうす~く塗ることも忘れない。
・・・この世界にはクッキングシートがないのは、毎度不便だと思っている。


最後の生地を焼いていると、ジェイドが帰ってきた。

「甘い、美味しそうな匂いがするね。もしかしてクッキーかな?」

キッチンの方向に顔を向けてくんくんと匂いを嗅ぐ仕草が可愛い。

「正解!今最後の生地を焼いているから、焼き終えたら一緒に食べよ。」

「いいね!僕、コーヒー淹れるよ。アカリのクッキーと僕のコーヒーの相性は抜群だからね。ちょっと待ってて。手を洗ってくるから!」

そんな慌てなくても、そんなすぐに焼き上がらないのに。まぁ、喜んでもらえてよかったけど。

歴代の彼氏には、仕事が忙しくて料理や手作りお菓子を振る舞う機会がなかった。初めての彼氏は大学に入ってからで、手作りが苦手だった。

「より美味しいものが安価で手に入るのに、わざわざ冒険して手作りを食べる意味がわからない。」

そう言われた時は悲しかったな。私の手作りを食べることは望見なんだ・・・なんかごめんね・・・て。
だから、あんなに喜んでくれるジェイドが相手だと作りがいがある。・・・彼氏じゃないのが残念だけど。

それにしても、私とジェイドはどういう関係なんだろう。これは同棲?・・・いやいや、ただの居候と家主がちょっと仲良いってだけか。
ジェイドは私に対して、大型犬みたいな反応をする。だからか勘違いしそうになる時があるんだよね。うっかり好きだとか言っちゃったら、そんなつもりじゃなかったとか言って追い出されるかもしれない。気まずいのは嫌だし、すぐに出て行けと言われてもそこまでのお金がない。

・・・現実は厳しい。
勘違いしない!しちゃいけない!ジェイドはおじいさんが亡くなった寂しいタイミングで私が来たから、私で寂しさを紛らわせているだけよ。寂しがり屋のウサギジェイドって言い聞かせよう。うん・・・想像したら、うさ耳のジェイド超可愛いな・・・・・・。

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