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 アメリア様から贈り物攻撃を受け続け、はや1ヶ月。誰もが彼女を好意的に見るようになっていた。もちろん、”賄賂でどうにかしようなんてさすが商人の娘“なんて嫌味を言う人間もいたけど。

 ルカ様に問いかけられた質問にも、今なら“彼女を信じたい”とはっきり言えるような気がしていた。

「いた、エミィ!」

 普段は何があっても落ち着いて対処するカエラが走り寄ってきた。

「どうかしたの?」

「変な噂を聞いたの。」

「どんな噂だ。今直ぐ聞かせろ。」

「ちょっとルカ様、カエラを離してください!これじゃ話したくても落ち着いて話などできませんわ。」

 彼の手をカエラの首元から引き離す。

「落ち着いてられるか。慌ててここに来たということは、リアのことなのだろう?」

「えぇ、そうなのです。私も知らない噂ばかりで・・・。」

 今更、誰が私に恨みなどあるのだろう。カエラが驚くほどの噂を流したところで、果たしてその意図は?

「それで、どんな内容だったの?」

「それが・・・」

 カエラはチラッとルカ様を見た。

「噂は噂。嘘なのはカエラが一番わかってるでしょ?気にしなくていいから、話して。」

「えぇ・・・そうね。あなたの無罪はそこのストーカーが証明してくれるもの。」

 ストーカー、もとい私の婚約者は目線だけで先を促し、自分のことについてはノーコメント。

「どうやらここ最近、下町の娼館に出入りしてるっていう噂が立っているの。」

「誰に?」

「もう、あなたよ!エミィの噂だって前置きしたじゃない。」

 そうでした。でも、あまりにもどうして?な噂だったものだから。

 あぁあぁ、後ろから殺気を感じますね。

「ルカ様はどうせ、エミィの行動を監視してますでしょう?」

「もちろんだ。」

 うん・・・普通はそんな自信を持っていうことじゃないのよ。まぁ、それを許容しているのは私だけども。

「噂の出どころはまだわかってないわ。私もさっき聞いたことだから。でも、他の生徒には前から伝わっていたことみたい。」

「リアを狙うなんて、死にたいのかな、」

ルカ様は脳内で直ぐに人を殺しますよね。

「とりあえず、この噂の意図と出所を確認したいところですね。」

「自分のことなのに、あなた呑気ね。」

「だって、こういう時に一番嫌なのって大切な人に誤解されることでしょう?でも、私の周りでこんな噂を信じる人なんていないと思うわ。」

「それはそうだけど・・・。」

「リアの日頃の行いがいいからね。」

それだけじゃなく、ルカ様の異常さをわかってるんじゃないかしら。もし本当に私が娼館に行ったら、入り口前で捕まってしばらくベッドから抜け出せないんじゃないかしら。

「・・・ルカ様のおかげもありますわ。」

「あなた、だいぶ濁したわね。」

いいんです。ルカ様が満足そうですから。
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