箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

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69・三章の始まり

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俺はリザードマン村から城下町ソドムに帰還すると、幹部クラスの面々とリザードマン族との顔合わせを済ませた。

最初は緊張していたリザードマン族も直ぐにソドムの空気に馴染んで溶け込んで行った。

案外とムサシがシャイでモジモジしていたのが笑えて面白かった。

あの糞爺は、どうやら人見知りが激しいようである。

そして、幹部同士の話し合いでリザードマン族の村で酒の作り方を学ぶメンバーや、逆にリザードマン族の村に大工の技術を伝授する役割が決められて、話は俺の知らないところでどんどんと進んで行った。

こう言う政治的な話は俺には難しい。

だからキルルたちに任せっぱなしだ。

キルルは秘書として実に優秀である。

社長の俺に代わって頑張ってくれているからな。

最終的な決定だけを俺が企画書類に判子を押すように決定している。

まあ、それでなんとなく魔王国作りは進行しているので問題ないだろう。

そして、リザードマン村には建築家のペルシャと数人の大工たちが送られた。

その大工たちがリザードマン村の家を新築しながらリザードマンたちに建築技術を伝授することになっている。

それと同時に大工たちが酒造りの技術を学んでくることになっていた。

大工の中からは、この仕事を志願する者が多かった。

酒を飲みながら作り方を学べるとあって大人気の企画となったのである。

キルルの話では、第五陣までの酒造りメンバーが予約されているそうな。

もしかしたら城下町ソドムの住人全員が酒造りを志願しているのかも知れない。

まあ、そんなこんなで順調に祭りの準備も進んで行った。

更にキルルによって、リザードマン村の名前も命名された。

リザードマン村を改めて、酒造砦アンコールワットと名付けられたのだ。

酒造砦ってなんだよ?

しかもアンコールワットって良いのかな?

アンコールじゃなくてアルコールなのかな?

しかも、キルルによって命名された名前を聞いて、建築家のペルシャがリザードマン村を立派な砦として再開発すると意気込んでいやがった。

建築家としての腕が鳴るそうな。

ペルシャ曰く、難攻不落の大砦に仕上げるらしい。

本当に、どいつもこいつもである。

まあ、俺的には構わんし、そこで暮らすリザードマンたちが良いのならば問題ないんだけどね。

そして、月日はそれから三ヶ月があっという間に過ぎて行った。

その間にもいろいろとあった。

まずは魔物たちの間で役職がハッキリと明確に決められ始めたのだ。

コボルトリーダーのキングに、ホブゴブリンリーダーのローランド、それにオークたちのリーダーであるルートリッヒたちにリザードマンのジュウベイが、魔王軍の将軍としての役職が決定した。

四大将軍である。

しかも悪乗りしたキルルが各自に二つ名を命名しやがった。

キングのことを、犬王将軍と名付ける。

ローランドのことを、大鬼将軍と名付ける。

ルートリッヒのことを、突撃将軍と名付ける。

そして、ジュウベイのことを、侍将軍と名付けやがった。

まさに古臭い感じの中二病全快である。

更にアンドレアを精霊使い参謀と名付け、ガラシャが魔術師参謀と名付けられた。

それとムサシを武術師範と名付けやがった。

ムサシは老体のために自ら前線の指揮権を若者に譲り、己は裏方に回ったのである。

更に更に、ハートジャックを偵察隊長に任命して、カンドレア&チンドレアを魔王近衛隊長にしやがった。

とにかくキルルが名のある強者たちにどんどんと役職を与えているのだ。

もう、完全に設定付けを楽しんでやがる。

困ったもんだ。

更にコボルトの婆さんを捕まえて、以前までアンドレアが行っていたポーションの管理を任せ始める。

その婆さんの名前が、クロー婆さんらしいのだ……。

これでコボルトたちのカードが着々と揃い始めている。

キングにクイーン。

鍛冶屋のスペードに大工のダイア。

偵察隊長のハートジャック。

そして、今回のクロー婆さんだ。

あと足りないのはエースとジョーカーだけである。

それもたぶんキングとクイーンの子供に、その名前がつけられることだろう。

そのぐらいは俺にだって予想が出来た。

まあ、構わんけれどね。

好きにやってくれって感じだ。

そんな感じで少しづつ魔王国の形がハッキリとし始めたころの定例会議である。

その日は各地から幹部に任命されている数名の魔物たちが集められた。

場所はいつもの魔王城ヴァルハラの霊安室だ。

集められた面々は、四大将軍のキング、ローランド、ルートリッヒ、ジュウベイ。

それに参謀のアンドレアとガラシャである。

俺の前の長テーブルに六名の幹部が並んでいて、俺の背後に秘書のキルルと近衛隊のカンドレア&チンドレアが並んでいた。

最近では魔王国は、このメンバーで回しているのだ。

そして、今後について俺から提案が出される。

「そろそろさ~、俺も人間界に進出したいんだけねど、皆はどう思う?」

キング、アンドレア、ローランドは俺の意見に賛成した。

しかし、ルートリッヒにジュウベイ、それにガラシャの三名は反対を意見する。

投票が三々に別れた。

それを見ていたキルルが俺に代わって反対の三名に理由を問うた。

その質問にガラシャが代表して答える。

「人間界に打って出る前に、まずは魔地域の統一を磐石にしたほうが良いと思います」

ルートリッヒとジュウベイも頷いている。

「磐石とは、どう言うことだ。もうほとんど魔地域の魔物は魔王軍に引き入れただろう?」

ガラシャが目を細目ながら返す。

「小者と言う概念ならば、すべての魔物を魔王軍に引き入れたかも知れませぬ」

「小者?」

「まだ、一番厄介な者たちが残っております。その者たちを引き入れない限り、我々魔王軍が魔地域を統一した魔王国とは呼べないでしょうぞ」

「厄介な者たちとは、何者だ?」

ガラシャは少し間を置いてから答えた。

「ダークエルフ族です……」

黒い妖精族か~。

この魔地域にもダークエルフっているんだな。

その名を聞いて俺は満面に微笑んだ。

ダークエルフって、間違いなく人型に近い種族だよね。

少し肌が黒くて、耳が尖っているけれど、間違いなくエルフと同じで美形の種族だよね!

やったぜ!

今まで仲間になる種族が犬面だったり豚顔だったりさ、挙げ句の果てが蜥蜴だったんだぜ。

やっと人型美形の種族が仲間になるってことだよな。

これぞハーレムへの道だぜ!

「良し、ならば早速ダークエルフを仲間にするぞ!」

俺は拳を強く握り締めながら熱く言った。

その俺にルートリッヒが助言する。

「ですが、ダークエルフは気難しい種族ですぞ」

「気難しいって?」

「強者な上に気高い種族です。おそらく俺たちのようなオークやゴブリンと組むようなことを恥じだと思うやも知れません」

「人種差別ってやつか?」

「はい……」

あ~、あるんだ~。

この世界にも詰まらない人種差別ってさ~。

面倒臭い話だよな~。

更にルートリッヒが言う。

「更にダークエルフ族よりも問題なのは、山脈に住むブラックドラゴンのドゴスギアです」

「ブラックドラゴン!?」

この辺にも居るんだ~……。

モンスターの頂点に君臨するって言うドラゴンさんがさ~……。

更にジュウベイが述べる。

「それと、タイタン族の生き残り、タルカス!」

「タイタン族ってなんぞな?」

「巨人です。かつて神々との対戦に敗れて、この地に逃げてきた10メートルクラスの身長を有する巨人族です」

「うわぁ~、スゲー大きい人が居るんだね~……」

更に更にとガラシャが言う。

「そして、旧魔王城の遺跡跡地に巣くうネクロマンサーのマミーレイス婦人。この三大脅威をどうにかしなければ、魔地域を支配したとは呼べぬと思いまする」

うぬぬ……。

思った以上に、魔地域統一って厳しいんだね……。

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