箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
上 下
29 / 69

29・アイテムの実験

しおりを挟む
俺はホブゴブリンのローランドたちに鮮血を分け与えるとキルルと二人で霊安室に戻ってきていた。

下ではローランドたち新メンバーたちがワイワイと騒いでいる。

ローランドたちも魔王の鮮血での進化変身に感動している様子だった。

俺は陶器のワイングラスに入れて持ってきた砂を石棺の蓋の上に出す。

砂で小さな山を作る。

その横に外から持ってきた雑草の束、それに枯れ木の棒を置いた。

更には近くに落ちていた石を一つ拾い上げて横に並べる。

石棺の上に、砂山、雑草の束、枝の棒、小石、陶器のワイングラスの順で並べたのだ。

そんな俺の様子を不思議そうな眼差しで見ていたキルルが訊いてきた。

『魔王様、何をしているのですか?』

「これか~。これは実験だ」

『実験ですか?』

キルルが首を傾げると霊安室に俺の鮮血で変貌したローランドが入って来る。

ローランドは俺の鮮血で美男子に変身していた。

ちょっと太ったプロレスラーのような体格だったローランドの体から脂肪がそげ落ちてスマートに変わったのだ。

しかも顔がイケメンだった。

乙女ゲーでちょい悪風のバンドマンでもやっていそうなキャラで、イカした金髪ヘアーなのだ。

ワイルドな美男子系キャラってやつである。

それがなんだかムカついた。

唯一の欠点は尖った耳と緑の肌、それに右瞼に刻まれた傷痕ぐらいだろう。

その傷痕だって、人によっては勇ましくも格好良く見えることだろうさ。

「エリク様、言われた物を運んで参りましたダ」

ローランドは部下のホブゴブリンを連れて複数の武器を運んで来ていた。

こいつらが装備してきた武器の一部である。

今回の実験のために借りたのだ。

それとローランド以外のホブゴブリンはスマートなマッチョマンに変貌してはいるが、見てくれはどこにでも居そうな特徴の薄いモブキャラ顔である。

どうやらホブゴブリン全てが美男美女に変身するわけでもないらしい。

ローランドや大木槌双子姉妹が例外のようだった。

少し安堵する。

俺は石棺を指差しながらローランドに指示を出す。

「それじゃあ、武器は石棺の横に置いといてくれ」

「はいダス」

ダス?

語尾に変ななまりがあるぞ。

おお、このイケメンモンスターは、言葉がなまってやがるぞ!

よし、イケメン野郎の恥ずかしい欠点を見つけてやったぜ!!

ちょっと嬉しい。

「エリク様、本当にあとで返してくれるダスか?」

「ああ、実験が済んだら返してやる。しかも高品質に変えてな」

「はぁ……?」

ローランドは言葉の意味が分からないと首を傾げていた。

「それよりもお前はこれから村に帰って、女子供をここに連れてこい。そいつらにも俺の鮮血を与えて進化させてやるからよ」

「あ、ありがとうございますダ、エリク様!!」

するとローランドは仲間と一緒に霊安室を出て行った。

墓城を出たら自分の村にスキップですぐさま帰ることだろう。

あいつらが村の連中を連れてきたら再び鮮血の儀式だ。

それまでに実験の準備をすませておかねばなるまい。

俺はローランドたちが置いていった武器を床の上に並べる。

ダガー、ショートソード、ロングソードの順番で並べた。

その下側に、再びダガー、ショートソード、ロングソードの順で並べる。

それらを三列に並べたのだ。

計九本の武器を並べる。

それから俺はダガーで手首を切るとカップに鮮血を溜めた。

「よ~し、実験開始だぜ!」

キルルが何を始めるのかと俺を見守っている。

「実験、実験、実験!」

まずは一列目の武器に一滴ずつ鮮血を垂らす。

次は二列目の武器にも一滴だけ鮮血を垂らした。

そして、三列目の武器にはダブダブと鮮血を溢す。

最後に砂山、雑草の束、枯れ木の棒、小石に鮮血を掛ける。

「よし、終わりっと」

キルルは鮮血を浴びせた武器を眺めながら訊いてきた。

『魔王様、これはどういった実験なんですか?』

俺はドヤ顔で丁寧に答えてやる。

「どうやら俺の鮮血には、モンスターを進化させる力以外に、アイテムを強化する力があるようなんだ」

『そうなんですか?』

「それで、細かいアイテムの変化を探るための実験だ」

『ふむふむ』

「一列目の武器に鮮血を一日一滴だけ垂らす。二列目の武器は朝昼晩と三回垂らす。三列目の武器には一日一回大漁の鮮血を垂らす」

『なるほど。鮮血量による変化の違いを見るのですね』

正解だ。

「そして、ダガー、ショートソード、ロングソードに分けているのは、武器の大きさによって強化に違いが見られるかを試しているんだ」

『大中小で違いが出るかってことですね』

「そういうことだ」

『それでは、その石とか砂はなんですか?』

「これはどんな物が俺の鮮血に反応するかの実験だ。草でも石でも俺の鮮血を浴びたら変化するのかなって思ってさ」

『魔王様、意外にちゃんと考えているのですね。僕はびっくりですよ!』

「おまえ、俺を舐めているだろ!」

『てへへ』

「可愛らしく誤魔化しても許さないからな!」

『僕は魔王様を褒めているのですよ。格好いいな~って思ってさ』

「そ、そうか~。俺、格好いいか~」

俺は照れながら後頭部をボリボリとかいた。

おだてられているのは理解できていたが嬉しいのには変わらなかった。

やはり美少女に褒められて悪い気になる男はいないだろう。

俺がデレデレしていると霊安室にゴブロンが俺たちを呼びに来る。

「エリク様、下で会議の準備ができましたから呼びにまいりましたでやんす」

「ああ、分かった。今行くぞ。それじゃあキルル、行こうか」

『はい、魔王様』

俺はキルルと下の広場に向かう。

そして、始めての会議に挑むのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...