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24・アンドレア、カンドレア、チンドレア
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「ホブホブホブっ!!」
「ふごっホブ!!」
二匹のホブゴブリンが前に走って来た。
二匹は大きな木槌を構えている。
その表情は鬼だ。
だが、ゴブリンたちと異なり小鬼ではない。
まさに鬼の形相である。
そして体格も太くて、まさに鬼の成りである。
まるで巨漢の悪役プロレスラーが凶器を振るって大暴れしているようだった。
「ヒィィイイ!!」
「こっち来たゴブっ!!」
俺の前にひざまついていたゴブリンたちが左右に逃げ出した。
モーゼの十戒のように道を開ける。
しかし、俺の鮮血を受けたハートジャックと四匹のゴブリンたちは逃げ出さない。
それぞれが武器を構えてホブゴブリンたちが迫り来るのを待ち構えていた。
「お前らは逃げないんだな」
ホブゴブリンを睨み付けたままハートジャックが答えた。
「当然でありま~す! ここでエリク様を残して逃げていたら、いつ忠義を誓えば良いのですか~!?」
更にゴブロンが言う。
「あっしらはもうエリク様の配下なんですよ。例え相手が巨漢のホブゴブリンでも引けやしやせんがな!!」
角刈り、アフロ、モヒカンが声を揃える。
「「「同感です!!」」」
こいつらの忠義を見ていると、俺も少しは魔王らしくなってきたのだと思う。
なんか、照れくさいな。
機嫌が良くなった俺は配下のモンスターたちに言う。
「ふむ、勇ましいね~。ならば今回はお前らが好きなように戦って良いぞ。ただし、あいつらを殺すなよ!」
「了解!!」
返事を返したハートジャックがスレンダーなボディーをしならせながらダッシュした。
鉈を振りかぶり一番に飛び掛かる。
「行くぞ、ホブゴブリン!!」
「ふがっホブ!!」
走り迫るハートジャックにホブゴブリンの一匹が木槌を振るった。
右から左に振るわれる木槌の強打。
その横振りをハートジャックは蜥蜴のように四つん這いになって回避する。
その低い姿勢から今度は高く跳躍した。
ハートジャックは木槌を振り切ったホブゴブリンの頭よりも高く跳躍していた。
「食らえ~!!」
そこからハートジャックは鉈でホブゴブリンの顔面を切りつける。
「ホブゴブっ!!」
ハートジャックの一振りはホブゴブリンの顔面に斜めの切り傷を刻んだ。
しかし浅い。
「浅かったかな~?」
顔を切られたホブゴブリンは片手で傷を押さえながら後ろによろめいた。
「痛いホブ……」
「カンドレアっ、大丈夫ホブか!?」
もう一匹のホブゴブリンが気遣った刹那であった。
そのホブゴブリンにゴブロンがダガーを振りかざして飛び掛かる。
「クソがホブ!!」
ホブゴブリンは飛び迫るゴブロンを打ち落とそうと大木槌を振るう。
その横振りの大木槌をゴブロンは空中で体を捻って回避した。
それを見て俺が顎を撫でながら感想を述べる。
「ほほう、空中に居ながらも体を捻って攻撃を回避するか。やるな」
そして、空中で攻撃を躱したゴブロンはホブゴブリンの背後に着地した。
それを追ってホブゴブリンが振り返りながら大木槌を頭の上に振りかぶる。
「ふごぉぉおおお!!」
だが、大木槌を振り下ろすよりも先に角刈りゴブリンに背中をダガーで切付けられた。
「ギャッ!!」っとホブゴブリンが叫んだ。
角刈りゴブリンが言う。
「そっちは二匹だぞ。こっちは五匹だぜ。我らを忘れるな!」
「ホブコブっ!!」
「ホブゴブ~!!」
ホブゴブリンの二匹が走って引いた。
羽根飾りのゴブリンの元に戻る。
「アンドレア姉さん、回復してくれホブ!!」
「分かったゴブよ!!」
羽根飾りのゴブリンの手が緑色に輝いてホブゴブリンたちの傷を癒しだした。
その様子を見たアフロゴブリンが追撃を仕掛けようとする。
「回復魔法なんてさせるか!!」
「まて、お前たち!」
「「「「えっ?」」」」
突然俺がゴブリンたちを止める。
ハートジャックとゴブリンたちが振り返って俺を見た。
「相手は三匹だ。こっちも数を合わせよう」
「えっ、そうするのでやんすか?」
「アフロ、モヒカン、お前らは下がれ。ハートジャックとゴブロン、それに角刈りだけで戦え」
アフロとモヒカンが俺の言葉を聞いてブウたれた。
「なんで俺らだけ戦っちゃあダメなんすか!?」
「そうですよ、不公平ですよ!!」
「お前らはヘアースタイルが格好よすぎるから我慢しろ。ナイスなヘアースタイルなのだから、我慢ぐらい出来るよな!」
「「へいっ!!」」
二匹のゴブリンは親指を立てながら陽気に返答した。
ヘアースタイルを誉められると上機嫌で俺の元に退いてくる。
そのころにはホブゴブリンの治療は終わっていた。
鬼の形相で再びホブゴブリンたちが前に出て来る。
待ち構えるは三匹の配下だ。
ハートジャックを中心に右にゴブロンで左に角刈りが立っていた。
こいつらも待っていたようだ。
ゴブロンが静かに言った。
「こいつら、どうってことないでやんす!」
ハートジャックが言う。
「我々が強くなっているんだよ~。エリク様の鮮血でね~」
角刈りが言う。
「ほんの少し前なら俺らがホブゴブリンと戦うなんてあり得ない夢だったのに、今じゃあホブゴブリンと五分だぜ」
ゴブロンが言う。
「五分どころじゃあないでやんす。五分以上でやんすよ。もしかしたらあっし一匹でホブゴブリン二匹を倒せるんじゃあないでやんすかね?」
三匹の会話を後ろで聞いていた俺が提案した。
「なら、ゴブロン。お前一匹でホブゴブリン二匹を倒して見せろ」
ゴブロンが首だけで振り返り俺に問う。
「そんな贅沢して良いんでやんすか!?」
「二匹が良いならな」
すると角刈りが踵を返して戻ってきた。
「俺は構わないですよ~。ゴブロンがホブゴブリンを倒せるなら、俺にも倒せるって証ですからね~」
そう言いながら前線から角刈りが降りた。
すると角刈りゴブリンを見送ったハートジャックが言う。
「じゃあ私はゴブリンシャーマンを相手しちゃいますよ~」
ゴブロンがコボルトの腰を叩きながら言う。
「任せるでやんすよ、コボルトのお姉ちゃん!」
「じゃあ、始めましょうか~!」
どうやらマッチメイキングが確定したようだ。
ロン毛ゴブリンのゴブロンvsホブゴブリンのカンドレアとチンドレア組。
そして、コボルト狩人のハートジャックvsゴブリンシャーマンのアンドレアのようだ。
始まりのゴングはないが、俺らの心の中で戦いのゴングが鳴り響いた。
戦闘開始だ。
そして、早々にハートジャックが瞬速のダッシュを試みる。
その速さは疾風のようだった。
一瞬でホブゴブリン二匹の間を走り抜けてゴブリンシャーマンの眼前に迫った。
「速いっゴブ!!!」
「トロイ~」
ゴブリンシャーマンが叫んだ刹那にはハートジャックの鉈が縦に降られていた。
振り下ろされたハートジャックの鉈がピタリとアンドレアの額の前で止まる。
「チェックメイトですよ~!」
「ゴブゴブコブっ!?!?」
頭を鉈で真っ二つにしようと思えば出来るだろう状況であった。
ハートジャックがアンドレアに言う。
「私の勝ちでいいよね~?」
「ぬぐぐぐぐぅ……ゴブ」
開幕一番の王手に、対戦相手サイドの三匹が顔を青ざめていた。
それだけハートジャックの動きは速くて迅速だったのだ。
アンドレアが歯軋りをしている。
しかし、ハートジャックが振り返ると言う。
「さあ、こっちは終わったけれど、そっちは続きを初めてくれたまえ~、ゴブロン君よ~」
「かたじけないでやんす、ハートジャック殿!!」
ゴブロンはダガーを持った手をグルグルと回しながら自身に気合いを入れていた。
ゴブロンはヤル気だ。
まだホブゴブリンたちと戦うつもりらしい。
ニッコリと微笑んでいる。
その笑顔を見てホブゴブリンたちの額に青筋が複数浮かび上がる。
怒りがついに頂点に達したようだ。
「ホーブーゴーブー!!」
唐突にカンドレアが大木槌を振り下ろした。
頭上から迫る大木槌をゴブロンはヒョコリと横に飛んで回避する。
更に今度はチンドレアが大木槌を振り下ろす。
「ホブっ!!!」
「よっと~」
それもゴブロンは身軽に回避した。
その動きは呑気にスキップするような動きであった。
「大振り過ぎて当たらないすよ~。そんな遅い攻撃じゃあトロいトロい~」
「ホブゴブっ!!」
「ホブホブっ!!」
その後も二匹のホブゴブリンが力任せに大木槌を振るった。
上下左右からメチャクチャに振るう。
しかしゴブロンにはかすりもしなかった。
楽しげにスキップで攻撃を避けている。
俺は背後に並ぶアフロとモヒカンに言ってやった。
「あれが俺の鮮血を飲んだ魔物の実力だ。おそらく同じだけお前らもパワーアップしているだろうさ。その辺のヘッポコモンスターじゃあ、もうお前らに勝てないぞ」
アフロが訊いてきた。
「人間の冒険者にも勝てるでしょうかね?」
「勝てるだろうさ。並みの冒険者じゃあ、もうレベルが違うってばよ」
「「マジっすか!」」
アフロとモヒカンの表情には感激と驚きが入り交じっていた。
とにかく嬉しそうである。
「ただし、俺の許可無しに人間を殺すのは禁止な。食うなんてもっての他だ」
「そ、そうなんすか……」
二匹は少しガッカリしている。
「俺だって元は人間なんだよ。その辺は気を使え」
「「へいっ、エリク様!!」」
アフロとモヒカンが頭を下げた瞬間にゴブロンがホブゴブリンたちを飛び蹴りでぶっ倒した。
飛び後ろ回し蹴りで顔面を蹴り飛ばして、更にそのまま飛んで、もう一匹のホブゴブリンの顔面に飛び膝蹴りを打ち込む。
二匹のホブゴブリンは白目を剥きながらダウンした。
ダガーを使わずに蹴り技だけでホブゴブリン二匹を気絶させたのだ。
スチャリと空中から着地したゴブロンが親指を立てて勝利を宣言する。
「イエーーイ、勝ったでやんす!!」
俺はゴブリンシャーマンに言ってやった。
「これで、完全決着だろう。ゴブリンのリーダーさんよ」
俺がゴブリンシャーマンに問うと、首元に鉈の刃を押し付けられていたアンドレアが悔しそうに一つ頷いた。
俺が述べた通り完全決着である。
「ふごっホブ!!」
二匹のホブゴブリンが前に走って来た。
二匹は大きな木槌を構えている。
その表情は鬼だ。
だが、ゴブリンたちと異なり小鬼ではない。
まさに鬼の形相である。
そして体格も太くて、まさに鬼の成りである。
まるで巨漢の悪役プロレスラーが凶器を振るって大暴れしているようだった。
「ヒィィイイ!!」
「こっち来たゴブっ!!」
俺の前にひざまついていたゴブリンたちが左右に逃げ出した。
モーゼの十戒のように道を開ける。
しかし、俺の鮮血を受けたハートジャックと四匹のゴブリンたちは逃げ出さない。
それぞれが武器を構えてホブゴブリンたちが迫り来るのを待ち構えていた。
「お前らは逃げないんだな」
ホブゴブリンを睨み付けたままハートジャックが答えた。
「当然でありま~す! ここでエリク様を残して逃げていたら、いつ忠義を誓えば良いのですか~!?」
更にゴブロンが言う。
「あっしらはもうエリク様の配下なんですよ。例え相手が巨漢のホブゴブリンでも引けやしやせんがな!!」
角刈り、アフロ、モヒカンが声を揃える。
「「「同感です!!」」」
こいつらの忠義を見ていると、俺も少しは魔王らしくなってきたのだと思う。
なんか、照れくさいな。
機嫌が良くなった俺は配下のモンスターたちに言う。
「ふむ、勇ましいね~。ならば今回はお前らが好きなように戦って良いぞ。ただし、あいつらを殺すなよ!」
「了解!!」
返事を返したハートジャックがスレンダーなボディーをしならせながらダッシュした。
鉈を振りかぶり一番に飛び掛かる。
「行くぞ、ホブゴブリン!!」
「ふがっホブ!!」
走り迫るハートジャックにホブゴブリンの一匹が木槌を振るった。
右から左に振るわれる木槌の強打。
その横振りをハートジャックは蜥蜴のように四つん這いになって回避する。
その低い姿勢から今度は高く跳躍した。
ハートジャックは木槌を振り切ったホブゴブリンの頭よりも高く跳躍していた。
「食らえ~!!」
そこからハートジャックは鉈でホブゴブリンの顔面を切りつける。
「ホブゴブっ!!」
ハートジャックの一振りはホブゴブリンの顔面に斜めの切り傷を刻んだ。
しかし浅い。
「浅かったかな~?」
顔を切られたホブゴブリンは片手で傷を押さえながら後ろによろめいた。
「痛いホブ……」
「カンドレアっ、大丈夫ホブか!?」
もう一匹のホブゴブリンが気遣った刹那であった。
そのホブゴブリンにゴブロンがダガーを振りかざして飛び掛かる。
「クソがホブ!!」
ホブゴブリンは飛び迫るゴブロンを打ち落とそうと大木槌を振るう。
その横振りの大木槌をゴブロンは空中で体を捻って回避した。
それを見て俺が顎を撫でながら感想を述べる。
「ほほう、空中に居ながらも体を捻って攻撃を回避するか。やるな」
そして、空中で攻撃を躱したゴブロンはホブゴブリンの背後に着地した。
それを追ってホブゴブリンが振り返りながら大木槌を頭の上に振りかぶる。
「ふごぉぉおおお!!」
だが、大木槌を振り下ろすよりも先に角刈りゴブリンに背中をダガーで切付けられた。
「ギャッ!!」っとホブゴブリンが叫んだ。
角刈りゴブリンが言う。
「そっちは二匹だぞ。こっちは五匹だぜ。我らを忘れるな!」
「ホブコブっ!!」
「ホブゴブ~!!」
ホブゴブリンの二匹が走って引いた。
羽根飾りのゴブリンの元に戻る。
「アンドレア姉さん、回復してくれホブ!!」
「分かったゴブよ!!」
羽根飾りのゴブリンの手が緑色に輝いてホブゴブリンたちの傷を癒しだした。
その様子を見たアフロゴブリンが追撃を仕掛けようとする。
「回復魔法なんてさせるか!!」
「まて、お前たち!」
「「「「えっ?」」」」
突然俺がゴブリンたちを止める。
ハートジャックとゴブリンたちが振り返って俺を見た。
「相手は三匹だ。こっちも数を合わせよう」
「えっ、そうするのでやんすか?」
「アフロ、モヒカン、お前らは下がれ。ハートジャックとゴブロン、それに角刈りだけで戦え」
アフロとモヒカンが俺の言葉を聞いてブウたれた。
「なんで俺らだけ戦っちゃあダメなんすか!?」
「そうですよ、不公平ですよ!!」
「お前らはヘアースタイルが格好よすぎるから我慢しろ。ナイスなヘアースタイルなのだから、我慢ぐらい出来るよな!」
「「へいっ!!」」
二匹のゴブリンは親指を立てながら陽気に返答した。
ヘアースタイルを誉められると上機嫌で俺の元に退いてくる。
そのころにはホブゴブリンの治療は終わっていた。
鬼の形相で再びホブゴブリンたちが前に出て来る。
待ち構えるは三匹の配下だ。
ハートジャックを中心に右にゴブロンで左に角刈りが立っていた。
こいつらも待っていたようだ。
ゴブロンが静かに言った。
「こいつら、どうってことないでやんす!」
ハートジャックが言う。
「我々が強くなっているんだよ~。エリク様の鮮血でね~」
角刈りが言う。
「ほんの少し前なら俺らがホブゴブリンと戦うなんてあり得ない夢だったのに、今じゃあホブゴブリンと五分だぜ」
ゴブロンが言う。
「五分どころじゃあないでやんす。五分以上でやんすよ。もしかしたらあっし一匹でホブゴブリン二匹を倒せるんじゃあないでやんすかね?」
三匹の会話を後ろで聞いていた俺が提案した。
「なら、ゴブロン。お前一匹でホブゴブリン二匹を倒して見せろ」
ゴブロンが首だけで振り返り俺に問う。
「そんな贅沢して良いんでやんすか!?」
「二匹が良いならな」
すると角刈りが踵を返して戻ってきた。
「俺は構わないですよ~。ゴブロンがホブゴブリンを倒せるなら、俺にも倒せるって証ですからね~」
そう言いながら前線から角刈りが降りた。
すると角刈りゴブリンを見送ったハートジャックが言う。
「じゃあ私はゴブリンシャーマンを相手しちゃいますよ~」
ゴブロンがコボルトの腰を叩きながら言う。
「任せるでやんすよ、コボルトのお姉ちゃん!」
「じゃあ、始めましょうか~!」
どうやらマッチメイキングが確定したようだ。
ロン毛ゴブリンのゴブロンvsホブゴブリンのカンドレアとチンドレア組。
そして、コボルト狩人のハートジャックvsゴブリンシャーマンのアンドレアのようだ。
始まりのゴングはないが、俺らの心の中で戦いのゴングが鳴り響いた。
戦闘開始だ。
そして、早々にハートジャックが瞬速のダッシュを試みる。
その速さは疾風のようだった。
一瞬でホブゴブリン二匹の間を走り抜けてゴブリンシャーマンの眼前に迫った。
「速いっゴブ!!!」
「トロイ~」
ゴブリンシャーマンが叫んだ刹那にはハートジャックの鉈が縦に降られていた。
振り下ろされたハートジャックの鉈がピタリとアンドレアの額の前で止まる。
「チェックメイトですよ~!」
「ゴブゴブコブっ!?!?」
頭を鉈で真っ二つにしようと思えば出来るだろう状況であった。
ハートジャックがアンドレアに言う。
「私の勝ちでいいよね~?」
「ぬぐぐぐぐぅ……ゴブ」
開幕一番の王手に、対戦相手サイドの三匹が顔を青ざめていた。
それだけハートジャックの動きは速くて迅速だったのだ。
アンドレアが歯軋りをしている。
しかし、ハートジャックが振り返ると言う。
「さあ、こっちは終わったけれど、そっちは続きを初めてくれたまえ~、ゴブロン君よ~」
「かたじけないでやんす、ハートジャック殿!!」
ゴブロンはダガーを持った手をグルグルと回しながら自身に気合いを入れていた。
ゴブロンはヤル気だ。
まだホブゴブリンたちと戦うつもりらしい。
ニッコリと微笑んでいる。
その笑顔を見てホブゴブリンたちの額に青筋が複数浮かび上がる。
怒りがついに頂点に達したようだ。
「ホーブーゴーブー!!」
唐突にカンドレアが大木槌を振り下ろした。
頭上から迫る大木槌をゴブロンはヒョコリと横に飛んで回避する。
更に今度はチンドレアが大木槌を振り下ろす。
「ホブっ!!!」
「よっと~」
それもゴブロンは身軽に回避した。
その動きは呑気にスキップするような動きであった。
「大振り過ぎて当たらないすよ~。そんな遅い攻撃じゃあトロいトロい~」
「ホブゴブっ!!」
「ホブホブっ!!」
その後も二匹のホブゴブリンが力任せに大木槌を振るった。
上下左右からメチャクチャに振るう。
しかしゴブロンにはかすりもしなかった。
楽しげにスキップで攻撃を避けている。
俺は背後に並ぶアフロとモヒカンに言ってやった。
「あれが俺の鮮血を飲んだ魔物の実力だ。おそらく同じだけお前らもパワーアップしているだろうさ。その辺のヘッポコモンスターじゃあ、もうお前らに勝てないぞ」
アフロが訊いてきた。
「人間の冒険者にも勝てるでしょうかね?」
「勝てるだろうさ。並みの冒険者じゃあ、もうレベルが違うってばよ」
「「マジっすか!」」
アフロとモヒカンの表情には感激と驚きが入り交じっていた。
とにかく嬉しそうである。
「ただし、俺の許可無しに人間を殺すのは禁止な。食うなんてもっての他だ」
「そ、そうなんすか……」
二匹は少しガッカリしている。
「俺だって元は人間なんだよ。その辺は気を使え」
「「へいっ、エリク様!!」」
アフロとモヒカンが頭を下げた瞬間にゴブロンがホブゴブリンたちを飛び蹴りでぶっ倒した。
飛び後ろ回し蹴りで顔面を蹴り飛ばして、更にそのまま飛んで、もう一匹のホブゴブリンの顔面に飛び膝蹴りを打ち込む。
二匹のホブゴブリンは白目を剥きながらダウンした。
ダガーを使わずに蹴り技だけでホブゴブリン二匹を気絶させたのだ。
スチャリと空中から着地したゴブロンが親指を立てて勝利を宣言する。
「イエーーイ、勝ったでやんす!!」
俺はゴブリンシャーマンに言ってやった。
「これで、完全決着だろう。ゴブリンのリーダーさんよ」
俺がゴブリンシャーマンに問うと、首元に鉈の刃を押し付けられていたアンドレアが悔しそうに一つ頷いた。
俺が述べた通り完全決着である。
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