20 / 69
20・ゴブリンとご対面
しおりを挟む
俺は腰を浮かせて立ち上がる。
まだ森の奥にはゴブリンの姿は見えない。
俺はゴブリンたちが居ると思われる方向を睨み付けながら、側に居るキルルに言った。
「よし、キルル。行くぞ!」
『えっ、僕もですか!?』
「仕方ないだろ。お前は俺から離れられないんだからさ」
そう、キルルは俺の体に取り憑いているから10メートルほどしか離れられないのだ。
俺が移動したのならば強引に引っ張られてしまう。
だからトイレもお風呂も扉の前で待機してもらわなければならない。
俺的にはトイレもお風呂もキルルが望むならば一緒に入っても構わないのだけれどもね。
彼女には、お風呂で背中を流してもらい、トイレではお尻を拭いてもらいたい。
まあ、その辺は乙女の意見を優先するならば拒否されるだろう。
それは仕方ないよね。
セクハラで魔王が訴えられたら世も末だからな。
ハートジャックが笑顔で囁いた。
「お二方は、仲が良いのですね~。本当にラブラブカップルですね~!」
「てれるな~」
『僕たちはカップルじゃあありませんよ!!』
キルルが赤面しながら否定した。
俺はキルルの霊体の肩をポンポンっと叩きながら言ってやる。
「キルル、そんなに照れなくてもいいんだぞ。カップルだって認めちゃいなよ。俺は構わないぜ」
キルルが冷めた真顔で述べた。
『すみません、魔王様……。僕は暴力的な男性はちょっと……』
ガーーーン!!
「駄目か、暴力的な魔王は男性として失格ですか!?」
『ごめんなさい……』
「フラれちゃったよ……。ぐすん」
『本当にごめんなさい……。あと、露出狂も、ちょっと……』
「恋愛沙汰に全裸は関係ないだろ!」
キルルは申し訳なさそうにお辞儀で謝罪する。
それにしても連続で二回もフラれたわん……。
すげ~情けねえ……。
「ショックだわ~! 相手がゴーストでもフラれるとショックだわ~!!」
「エリク様、声が大きいですよ~……」
ハートジャックが俺とキルルのやり取りに割り込んで来たときである。
森の奥からゴブリンの怒鳴り声が飛んで来た。
「誰か居るゴブか!?」
「何者ゴブ!?」
俺たち三名の声が揃う。
「『「あっ、ばれた……」』」
それにしても語尾にゴブが付いている。
なんともゴブリンらしい語尾であった。
もうテンプレだな。
そして、怒鳴り声と共に、こちらに向かってゴブリンたちが走り迫ってくる音がガサガサと聞こえて来る。
立ち上がっていた俺は揺れる草木の方向を睨み付けた。
キルルは俺の背中に隠れる。
「よ~し、ゴブリンとご対面だぜ!」
するとハートジャックが鉈を構えて俺と並んだ。
「加戦しますよ~、エリク様~!」
俺はハートジャックの横っ腹を貫手で突いた。
「うらっ!」
ズブリと指先が腹にめり込むとハートジャックのしなやかな体が苦痛に揺れる。
「ゲフッ! 何をするんですか~、エリク様~!?」
怒ったハートジャックがプリプリと吠えていたが俺は冷たい口調で言ってやった。
「だから余計だって行ってるだろ。それよりお前は安全な場所で見ていやがれ」
「ですが~!?」
納得しないハートジャックは引かないで吠え続けた。
「分かんねえ雌犬だな!!」
俺は眉間に威嚇的な深い皺を寄せながらハートジャックを睨み付けた。
額が接触しそうな距離まで顔面を近付ける。
そして、更に脅すように言った
「いいから引っ込んでろって言ってるだろ! またぶっ殺すぞ!!」
俺がゴブリンと遊ぶんだから、オモチャを取るなと言いたいのだ。
そのぐらいは魔王の配下として悟ってもらいたいな。
「いいから引っ込んでろ、ハートジャック!!」
俺の眼光から殺意が放たれた。
すると表情を青ざめたハートジャックが喉を鳴らして唾を飲み込む。
犬の喉がゴクリと鳴った。
ハートジャックは数時間前に上顎を砕かれて殺されたことを思い出していたのだろう。
あの時は俺もハートジャックが雌っ子だとは知らなかったから思いっきり殴ってしまったのだ。
女の子だと分かっていたら、あそこまで強烈に殴りはしなかったのにさ。
「わ、分かりました~、エリク様~……」
視線を逃げるように外したハートジャックは一歩下がると頭を下げた。
そして、そのまま高く跳躍して木の上に姿を隠す。
俺が見上げると、ハートジャックは忍びのように木の枝の陰に潜んでいた。
あいつ、あんなに身軽だったっけ?
あれじゃあ狩人と言うより忍者そのものだな。
くの一なのか?
それとも忍犬なのか?
魔王の生き血の効果なのだろうが、本人がそれに気が付いているかは不明だった。
「よし!」
ハートジャックを見送った俺が振り返った刹那である。
森の奥から数本の矢が飛んできた。
『きゃっ!!』
キルルが悲鳴を上げながら木の陰に隠れる。
「普通の矢なんか当たらない幽霊なのにビビりだな、キルルはさ」
『それでも怖いんですよ! 僕はか弱い乙女なんですからね!』
そう言い訳をキルルが言った瞬間であった。
俺の頭に矢が刺さる。
「うほっ!」
『魔王さまーーー!!』
「落ち着けキルル、平気だからさ」
矢が刺さっても死にはしないけれど痛くないわけではない。
何よりちょっぴりビックリしたぞ。
俺が頭に刺さった矢を引き抜くとゴブリンたちが藪の中から姿を表す。
ゴブリンの数は五匹だ。
「ギギギキィ!!」
「これがゴブリンか」
ゴブリンの身長は140センチ程度の小人型だった。
ボロボロの服を着込んだ体型は、頭が大きく手足が細い。
胸板は薄く腹が出ている四頭身だ。
肌の色は深緑で、怒りに歪んだ表情は醜い小鬼を連想させる。
忌々しくもおぞましい形相だ。
頭はほとんど剥げていて、疎らな髪の毛がおぞましくも雑に生えていた。
尖った鼻と尖った耳が小悪魔的である。
俺がゴブリンの第一印象を口に出した。
「見てくれは、まるで妖怪だな」
そう、おぞましい。
ゴブリンはコボルトよりも怪奇に伺えた。
そしてゴブリンの一匹が忌々しい口調で叫んだ。
「人間ゴブか!?」
他のゴブリンが続く。
「なんでこんなところに人間が居るゴブか!?」
「女の子も居るゴブよ!!」
「ふひょー、捕まえて食っちまおうぜぇゴブ!!」
なんだ、こいつらは人食いなのか?
まあ、モンスターなんだもの、そう言うこともあるよね。
俺は森の中に矢を投げ捨てるとゴブリンたちに警告した。
「良く聞けゴブリンども。俺は魔王エリク様だ。今日からお前らの支配者になる人物だ!」
俺の警告を聞いたゴブリンたちがキョトンとしながら俺を見ていた。
そして、囁きだした。
「おい、この人間は頭が可笑しいゴブ……」
「たぶん暑さのあまりに脳味噌が茹で上がったんじゃないゴブか?」
「でも、久々の人間だから、贅沢言わずにご馳走になろうゴブ……」
「そ、そうゴブな……」
「とにかく食ってしまおうゴブ」
ゴブリンたちはコソコソと話したのちに俺のほうを同時に見た。
そして哀れな生き物を見るような眼差しで俺を凝視する。
「おい、こら、舐めてるだろ、ゴブリンども!!」
「ギィぃイイイイ!!!」
我に戻ったゴブリンたちが威嚇的に声を荒立てる。
持っていた弓を捨てて腰や背中から武器を抜く。
武器はダガーやショートソードだった。
ハンドアックスのゴブリンも居る。
「やる気満々に戻ってくれたようだな!!」
「殺すゴブ! 殺すゴブ! 殺すゴブ!!」
「食うゴブ! 食うゴブ! 食うゴブ!!」
「小五月蝿いな~」
俺は指間接をポキポキと鳴らしながら言ってやった。
「俺を殺すのは構わないが、お前らが負けたら俺の配下になってもらうぞ! 魔王軍の配下にな!!」
「何故に訳が分からないことを言ってやがるゴブ!!」
「皆、一斉に飛び掛かるゴブ!!」
「「「「おーゴブ!!!」」」」
俺に向かって走り出したゴブリンが同時に飛び掛かってきた。
五匹の同時攻撃だ。
体が小さい分だけコボルトたちより動きは速いようだな。
跳躍も小柄なのに高い。
だが、人間の戦士よりは戦闘力が低いだろう。
「「「「「キェェエエエイイ!!」」」」」
ダガー、逆手に持ったダガー、ショートソード、ハンドアックス。
それぞれの武器が俺の体に突き立てられた。
そして命中。
俺は回避も防御もなしでゴブリンたちの攻撃を全身で受け止めた。
ドツドツっと音を鳴らして五本の刃物が俺の体に突き刺さる。
『きゃっ!!』
キルルが悲鳴を上げた。
「キャハハハハ!!!」
自分たちの手に伝わる刃物の感触にゴブリンたちが大声で笑っていた。
命を取ったと確信しているところだろう。
しかし、その次の瞬間、俺も微笑みながら拳を振るう。
「オラっ!!」
「ゴブっ!?」
たまたま俺の前に居たダガー持ちのゴブリンを俺は拳で殴り付けた。
上から下に拳を振り下ろしてゴブリンの脳天を打ち殴ったのだ。
殴られたゴブリンは頭をへこませながら地面に顔面を強打する。
その一撃で地面に鮮血が花開く。
頭がスイカのように砕けて割れたのだ。
「ひいっ!!」
俺の強烈な反撃を目の当たりにしたゴブリンたちが俺の周りから逃げるように跳ね退いた。
ゴブリンたちが俺の周りから逃げると、血塗れの俺の体が露になる。
刺された傷口から鮮血が流れ落ちていた。
だが、俺は倒れない。
それどころかニヤリと微笑んだ。
「痛いじゃあねえか、ゴブリンどもが!」
ゴブリンたちが呆然と俺の傷口を凝視していた。
今頃は何故に死なないと疑問に混乱しているのだろう。
そんな中で俺の傷が塞がり出血が止まる。
更には傷口が消えてなくなった。
ゴブリンの一匹が震えた声で述べる。
「ば、化け物ゴブ……」
「チッチッチッ!」
俺は自分の口元で人差し指を左右に振るった。
そして、力強く言う。
「化け物じゃあねえよ。俺様は魔王だ!!」
するとハートジャックが木の上から陽気な声を飛ばしてきた。
「よっ、魔王エリク様~! 格好いい~!!」
あいつは狩人でも忍者でもないな、ただの太鼓持ちだな。
ヨイショがお上手である。
まだ森の奥にはゴブリンの姿は見えない。
俺はゴブリンたちが居ると思われる方向を睨み付けながら、側に居るキルルに言った。
「よし、キルル。行くぞ!」
『えっ、僕もですか!?』
「仕方ないだろ。お前は俺から離れられないんだからさ」
そう、キルルは俺の体に取り憑いているから10メートルほどしか離れられないのだ。
俺が移動したのならば強引に引っ張られてしまう。
だからトイレもお風呂も扉の前で待機してもらわなければならない。
俺的にはトイレもお風呂もキルルが望むならば一緒に入っても構わないのだけれどもね。
彼女には、お風呂で背中を流してもらい、トイレではお尻を拭いてもらいたい。
まあ、その辺は乙女の意見を優先するならば拒否されるだろう。
それは仕方ないよね。
セクハラで魔王が訴えられたら世も末だからな。
ハートジャックが笑顔で囁いた。
「お二方は、仲が良いのですね~。本当にラブラブカップルですね~!」
「てれるな~」
『僕たちはカップルじゃあありませんよ!!』
キルルが赤面しながら否定した。
俺はキルルの霊体の肩をポンポンっと叩きながら言ってやる。
「キルル、そんなに照れなくてもいいんだぞ。カップルだって認めちゃいなよ。俺は構わないぜ」
キルルが冷めた真顔で述べた。
『すみません、魔王様……。僕は暴力的な男性はちょっと……』
ガーーーン!!
「駄目か、暴力的な魔王は男性として失格ですか!?」
『ごめんなさい……』
「フラれちゃったよ……。ぐすん」
『本当にごめんなさい……。あと、露出狂も、ちょっと……』
「恋愛沙汰に全裸は関係ないだろ!」
キルルは申し訳なさそうにお辞儀で謝罪する。
それにしても連続で二回もフラれたわん……。
すげ~情けねえ……。
「ショックだわ~! 相手がゴーストでもフラれるとショックだわ~!!」
「エリク様、声が大きいですよ~……」
ハートジャックが俺とキルルのやり取りに割り込んで来たときである。
森の奥からゴブリンの怒鳴り声が飛んで来た。
「誰か居るゴブか!?」
「何者ゴブ!?」
俺たち三名の声が揃う。
「『「あっ、ばれた……」』」
それにしても語尾にゴブが付いている。
なんともゴブリンらしい語尾であった。
もうテンプレだな。
そして、怒鳴り声と共に、こちらに向かってゴブリンたちが走り迫ってくる音がガサガサと聞こえて来る。
立ち上がっていた俺は揺れる草木の方向を睨み付けた。
キルルは俺の背中に隠れる。
「よ~し、ゴブリンとご対面だぜ!」
するとハートジャックが鉈を構えて俺と並んだ。
「加戦しますよ~、エリク様~!」
俺はハートジャックの横っ腹を貫手で突いた。
「うらっ!」
ズブリと指先が腹にめり込むとハートジャックのしなやかな体が苦痛に揺れる。
「ゲフッ! 何をするんですか~、エリク様~!?」
怒ったハートジャックがプリプリと吠えていたが俺は冷たい口調で言ってやった。
「だから余計だって行ってるだろ。それよりお前は安全な場所で見ていやがれ」
「ですが~!?」
納得しないハートジャックは引かないで吠え続けた。
「分かんねえ雌犬だな!!」
俺は眉間に威嚇的な深い皺を寄せながらハートジャックを睨み付けた。
額が接触しそうな距離まで顔面を近付ける。
そして、更に脅すように言った
「いいから引っ込んでろって言ってるだろ! またぶっ殺すぞ!!」
俺がゴブリンと遊ぶんだから、オモチャを取るなと言いたいのだ。
そのぐらいは魔王の配下として悟ってもらいたいな。
「いいから引っ込んでろ、ハートジャック!!」
俺の眼光から殺意が放たれた。
すると表情を青ざめたハートジャックが喉を鳴らして唾を飲み込む。
犬の喉がゴクリと鳴った。
ハートジャックは数時間前に上顎を砕かれて殺されたことを思い出していたのだろう。
あの時は俺もハートジャックが雌っ子だとは知らなかったから思いっきり殴ってしまったのだ。
女の子だと分かっていたら、あそこまで強烈に殴りはしなかったのにさ。
「わ、分かりました~、エリク様~……」
視線を逃げるように外したハートジャックは一歩下がると頭を下げた。
そして、そのまま高く跳躍して木の上に姿を隠す。
俺が見上げると、ハートジャックは忍びのように木の枝の陰に潜んでいた。
あいつ、あんなに身軽だったっけ?
あれじゃあ狩人と言うより忍者そのものだな。
くの一なのか?
それとも忍犬なのか?
魔王の生き血の効果なのだろうが、本人がそれに気が付いているかは不明だった。
「よし!」
ハートジャックを見送った俺が振り返った刹那である。
森の奥から数本の矢が飛んできた。
『きゃっ!!』
キルルが悲鳴を上げながら木の陰に隠れる。
「普通の矢なんか当たらない幽霊なのにビビりだな、キルルはさ」
『それでも怖いんですよ! 僕はか弱い乙女なんですからね!』
そう言い訳をキルルが言った瞬間であった。
俺の頭に矢が刺さる。
「うほっ!」
『魔王さまーーー!!』
「落ち着けキルル、平気だからさ」
矢が刺さっても死にはしないけれど痛くないわけではない。
何よりちょっぴりビックリしたぞ。
俺が頭に刺さった矢を引き抜くとゴブリンたちが藪の中から姿を表す。
ゴブリンの数は五匹だ。
「ギギギキィ!!」
「これがゴブリンか」
ゴブリンの身長は140センチ程度の小人型だった。
ボロボロの服を着込んだ体型は、頭が大きく手足が細い。
胸板は薄く腹が出ている四頭身だ。
肌の色は深緑で、怒りに歪んだ表情は醜い小鬼を連想させる。
忌々しくもおぞましい形相だ。
頭はほとんど剥げていて、疎らな髪の毛がおぞましくも雑に生えていた。
尖った鼻と尖った耳が小悪魔的である。
俺がゴブリンの第一印象を口に出した。
「見てくれは、まるで妖怪だな」
そう、おぞましい。
ゴブリンはコボルトよりも怪奇に伺えた。
そしてゴブリンの一匹が忌々しい口調で叫んだ。
「人間ゴブか!?」
他のゴブリンが続く。
「なんでこんなところに人間が居るゴブか!?」
「女の子も居るゴブよ!!」
「ふひょー、捕まえて食っちまおうぜぇゴブ!!」
なんだ、こいつらは人食いなのか?
まあ、モンスターなんだもの、そう言うこともあるよね。
俺は森の中に矢を投げ捨てるとゴブリンたちに警告した。
「良く聞けゴブリンども。俺は魔王エリク様だ。今日からお前らの支配者になる人物だ!」
俺の警告を聞いたゴブリンたちがキョトンとしながら俺を見ていた。
そして、囁きだした。
「おい、この人間は頭が可笑しいゴブ……」
「たぶん暑さのあまりに脳味噌が茹で上がったんじゃないゴブか?」
「でも、久々の人間だから、贅沢言わずにご馳走になろうゴブ……」
「そ、そうゴブな……」
「とにかく食ってしまおうゴブ」
ゴブリンたちはコソコソと話したのちに俺のほうを同時に見た。
そして哀れな生き物を見るような眼差しで俺を凝視する。
「おい、こら、舐めてるだろ、ゴブリンども!!」
「ギィぃイイイイ!!!」
我に戻ったゴブリンたちが威嚇的に声を荒立てる。
持っていた弓を捨てて腰や背中から武器を抜く。
武器はダガーやショートソードだった。
ハンドアックスのゴブリンも居る。
「やる気満々に戻ってくれたようだな!!」
「殺すゴブ! 殺すゴブ! 殺すゴブ!!」
「食うゴブ! 食うゴブ! 食うゴブ!!」
「小五月蝿いな~」
俺は指間接をポキポキと鳴らしながら言ってやった。
「俺を殺すのは構わないが、お前らが負けたら俺の配下になってもらうぞ! 魔王軍の配下にな!!」
「何故に訳が分からないことを言ってやがるゴブ!!」
「皆、一斉に飛び掛かるゴブ!!」
「「「「おーゴブ!!!」」」」
俺に向かって走り出したゴブリンが同時に飛び掛かってきた。
五匹の同時攻撃だ。
体が小さい分だけコボルトたちより動きは速いようだな。
跳躍も小柄なのに高い。
だが、人間の戦士よりは戦闘力が低いだろう。
「「「「「キェェエエエイイ!!」」」」」
ダガー、逆手に持ったダガー、ショートソード、ハンドアックス。
それぞれの武器が俺の体に突き立てられた。
そして命中。
俺は回避も防御もなしでゴブリンたちの攻撃を全身で受け止めた。
ドツドツっと音を鳴らして五本の刃物が俺の体に突き刺さる。
『きゃっ!!』
キルルが悲鳴を上げた。
「キャハハハハ!!!」
自分たちの手に伝わる刃物の感触にゴブリンたちが大声で笑っていた。
命を取ったと確信しているところだろう。
しかし、その次の瞬間、俺も微笑みながら拳を振るう。
「オラっ!!」
「ゴブっ!?」
たまたま俺の前に居たダガー持ちのゴブリンを俺は拳で殴り付けた。
上から下に拳を振り下ろしてゴブリンの脳天を打ち殴ったのだ。
殴られたゴブリンは頭をへこませながら地面に顔面を強打する。
その一撃で地面に鮮血が花開く。
頭がスイカのように砕けて割れたのだ。
「ひいっ!!」
俺の強烈な反撃を目の当たりにしたゴブリンたちが俺の周りから逃げるように跳ね退いた。
ゴブリンたちが俺の周りから逃げると、血塗れの俺の体が露になる。
刺された傷口から鮮血が流れ落ちていた。
だが、俺は倒れない。
それどころかニヤリと微笑んだ。
「痛いじゃあねえか、ゴブリンどもが!」
ゴブリンたちが呆然と俺の傷口を凝視していた。
今頃は何故に死なないと疑問に混乱しているのだろう。
そんな中で俺の傷が塞がり出血が止まる。
更には傷口が消えてなくなった。
ゴブリンの一匹が震えた声で述べる。
「ば、化け物ゴブ……」
「チッチッチッ!」
俺は自分の口元で人差し指を左右に振るった。
そして、力強く言う。
「化け物じゃあねえよ。俺様は魔王だ!!」
するとハートジャックが木の上から陽気な声を飛ばしてきた。
「よっ、魔王エリク様~! 格好いい~!!」
あいつは狩人でも忍者でもないな、ただの太鼓持ちだな。
ヨイショがお上手である。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる