箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい！

7・通路の開通

霊安室からの通路を進むと、そこは行き止まりだった。

通路の先が崩れて、これ以上は進めない。

壁や天井の石面が崩壊して土砂が通路を塞ぐように流れ込んでいるのだ。

通路は完全に塞がれていた。

どうやらここは地下のようだ。

巫女幽霊のキルルが言う。

『この先が墓城への出口だったのですが……。この数千年の月日で古くなって崩れてしまったようですね……』

俺は崩れた岩の山を見詰めながらキルルに訊いた。

「なあ、キルル。他に通路は無いのか？」

『残念ながら、僕が知ってる限りでは別の出入り口はありません……』

「じゃあ、掘るしかないのか……？」

キルルが拳を握り締めながら力強く応援を始めた。

『頑張ってください、魔王様！ ファイトー！！』

「お前も手伝えよ！」

『僕には無理です！』

即答かよ。

「ポルターガイスト現象とかでパパパッと岩を動かせたりしないのかよ！」

『無理です！ 僕は美少女幽霊ですが、そんな念力は持ち合わせていません！ だから魔王様、御自身で頑張ってください！ ファイトー！！』

「ただの可愛いだけのマスコットだな……」

『はいっ！』

「はいじゃあねえよ！」

『僕が動かせる重さは女の子が運べそうな重さまでです』

「幽霊になっても非力な女の子設定なんだな……」

『はいっ！』

くそ～、面倒臭い……。

でも、仕方ないか……。

しゃあないので俺は自慢の怪力を生かして岩を動かしだした。

手っぱで作業を開始する。

そこから何時間も掘り続けた。

大きな岩をどかして土を素手で掘り進んだ。

普通ならば素手で土を掘り進めれば指の爪が剥がれるだろうが、この体は異常なまでに頑丈だった。

効率は悪いが、なんとか素手でも掘り進めたのだ。

「バンデラスの体、スゲ～な～……」

そして、数時間後に通路が開通する。

掘り進んだトンネルの先に明かりが見えた。

「や、やっとだ……。開通したぞ！」

『おめでとうございます、魔王様！ 僕も頑張って応援を続けたかいがありましたよ！！』

「黙れ！ この役に立たない穀潰しの幽霊が！！」

『酷いよ、魔王様……。そんな怖い言い方ないのに……。僕だって頑張って応援し続けたのにさ、ぐすん……』

キルルが泣きそうな顔で俯いた。

やべぇ、言い過ぎたかな……。

マジで泣き出しそうだ。

「す、すまん。言い過ぎた……。もう怒っていないから」

『ぐすん……』

「頭を撫でてやるから泣くのをやめろ！」

俺はフワフワの金髪を優しく撫でてやった。

幽霊なのに触れるんだな。

撫でごごちも柔らかい。

「撫で撫で、撫で撫で……」

すると俺に頭を撫でられていたキルルが少し微笑んだ。

『てへへ……』

どうやら機嫌が直ったようだな。

まあ、このぐらいで許してくれるだろう。

「よし、外に出るぞ、キルル！」

『はい、魔王様！』

踵を返した俺は、掘り進んだ穴から霊安室の通路を出る。

俺は狭い穴を土竜のように這いつくばって進んだ。

そして、俺の後ろをキルルが付いてくる。

俺が狭い穴から頭を出して周囲を確認すると、そこは再び廃墟だった。

廃墟の古城だった。

しかし上を見上げれば暖かい太陽光が降ってくる。

そこには崩れ掛けた墓城の景色が広がっていた。

「こりゃあ、酷い廃墟だな……」

俺は穴から這い出ると、体についた土の汚れを手で払う。

俺の全裸が砂だらけで汚れていた。

続いて崩れた瓦礫をすり抜けてキルルがこちら側に現れる。

キルルが周りを見回してから言った。

『ですね……。完全な廃墟です……』

天界から落下してきたときに、そこそこ見えていたから予想はできていたけれど、それにしても墓城の荒れかたは酷かった。

天井はあるにはあるが、あちらこちらが崩れている。

壁も穴だらけだ。

穴と言うより壁が崩れて無くなっている。

外の景色から寒々とした突風が吹き込んできていた。

前方には高い位置からの絶景が広がっている。

「これは住むには難しいぞ……」

てか、住めるレベルではない。

『そうですね。僕の記憶だと、もっと綺麗なお城だったのですが、時の流れとは、本当に怖いですね。風化って残酷です……』

俺は隣に立つ僕っ娘幽霊に言ってやった。

「キルル、お前だって幽霊じゃなければ、もうお婆ちゃんなんだぞ」

キルルが拳を握りながら力強く言った。

『でも、僕はピチピチの美少女幽霊です！ それは風化してませんよ！』

「ピチピチの幽霊ってなんだよ。それに、美少女って自覚はあるんだな……」

『美少女だから人柱に選ばれたのですからね！』

「いや、違うだろう。人柱はオッドアイが原因だろ……」

そんな感じで俺とキルルは楽しくトークを繰り広げながら墓城の中の探索を開始した。