【変態ゴレてん】少年が異世界転生したらゴーレムだったので魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも女の子にモテたいです

ヒィッツカラルド

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第34話【死人の騎兵】

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草原の真ん中で出合ったゾンビ騎馬兵士の数は七体だった。

おそらくオーガ討伐に放たれたアッバーワクー城の騎兵だろう。

全騎が甲冑を着込み腰には剣を下げている。

中には槍を手にしているゾンビもいた。

そのゾンビたちが扇型に広がり騎乗した状態で、ジリジリと俺たちに迫ってくる。

そして、ゾンビ騎馬兵士たちが腰からロングソードを引き抜いた。

『ゾンビなのに武器を使うのか……』

俺の隣に立つクレアが言った。

「ゾンビと言うアンデッドモンスターは生前の記憶によって戦闘力が大きく左右されるのだ。平民農民がゾンビになればただの死者だが、兵士がゾンビ化すれば武器だって使う。魔術師がゾンビかしたのならば、魔法を使う場合も珍しくないぞ」

『うへぇー、ゾンビも舐められたもんじゃあないんだな~。お馬鹿ってわけでもないのね』

そう返しながら俺は背中に背負った鞘からバスタードソードを引き抜いた。

両手で確りと構える。

こっちも戦闘体制だぜ。

「まあ、ゾンビは貴様同様に体力は無限だが、貴様同様に速度も遅く、貴様同様に知恵も低い。そして、貴様同様に下等なアンデッドモンスターの中でも、貴様同様に最下位だからな」

『ク~レ~ア~さ~ん~。俺同様ってところを誇張しすぎじゃあねぇか!!』

「気にするな」

『気になるだろ……』

俺たちが賑やかに離していると、ゾンビナイトたちがジリジリと迫ってきた。

クレアも腰からぶら下げたレイピアを引き抜いて身構える。

そして、あることに俺は気がついた。

『なあ、クレア』

「なんだ?」

『ゾンビどもが、お前ばかりをガン見してないか? こいつらも乳の大きさに引かれるのか?』

クレアが明確な推測を語る。

「おそらくゾンビたちは貴様を敵として認識していないのだろう」

『なんでだ? 男女差別か? ゴーレム差別か? それともやっぱり乳の大きさなのか?』

「貴様は木偶で、私は肉だからだ」

どうやらゴーレム差別のようだ。

『あ~、なるほどね~。要するに、お前はゾンビから見て、餌として見なされていて、俺はただの置物だと言うことだな』

「そうだ」

良かった~。

またクレアだけ美人で巨乳だからってモテモテなのかと思ったぜ。

本当に乳がデカイと有利だもんな。

「まあ、ゾンビの欲求は食欲だけだからな。食えない物には興味がないのだろう」

かわいそ~。

性欲はないらしい。

『じゃあ俺は戦わないで、見ているだけでいいのか?』

俺はちょっと意地悪なことを言ってみた。

「構わん。 ゾンビナイトぐらい、私一人で捌ける」

『もう、クレアさんったら~、強がっちゃって~』

「強気ではないぞ」

ダンっ!!

言うなりクレアがゾンビナイトに向かって一飛びで跳ね飛んだ。

その跳躍は乗馬しているゾンビナイトの頭上を軽々と越えている。

3メートルの高さを飛んでいるってことだ。

「ふんっ!!」

そして、上空に逆さまに舞うクレアがレイピアの一突きでゾンビナイトの頭部を貫いた。

脳天から顎の下にレイピアの刃先が貫通する。

それを見て俺もすぐさまに動いた。

『なるほどね。どこの世界でもゾンビの弱点は脳味噌なのね~』

そして騎兵が落馬した騎馬に俺が走り寄る。

そこから俺が力を込めた斜めの袈裟斬りで騎馬の顔面を深々と切り裂いた。

剣圧に馬の脳味噌が飛び散る。

まだ剣技スキルを持っていない俺でもこの程度は出来るようだな。

ほとんど力技だけれどね。

そして、騎士騎馬共に頭部を破壊されると、ゾンビナイトの一騎が大きく体勢を崩して転倒する。

「うがぁがぁあがが!!!」

それを見てゾンビたちが一斉に叫んだ。

俺たちの先制を合図に戦闘が始まる。

残りの六騎すべてがクレアを追っていた。

やはり生命体でない俺には興味がないようだ。

てか、もしかしたら見えてもいないのかも知れない。

「ファイアーボルト!!」

クレアが掌から炎の弾丸を放ってゾンビナイトの顔面を焼く。

だが、ダメージは小さい。

流石のクレアも六体のゾンビナイトに追われて逃げ腰だった。

数に押されている。

下がりながら牽制の魔法で距離を保つ。

そして、ノーマークな俺は騎馬の背後から馬の後ろ足を斬り落とした。

すると騎馬が尻餅を付いて騎兵がゴロンっと後方に転がり落馬した。

落馬した騎兵は俺の足元に転がり頭を向ける。

『それっ』

そのゾンビの頭に俺は剣を突き下ろした。

顔面を串刺しにしてやった。

そして、剣を引き抜くと、そのままの流れで天高く剣を振り上げた俺は、眼前でジタバタしている三本足の騎馬の首を全力で跳ねてやった。

『そらっ!!』

騎馬の太い首から頭部が落ちる。

騎馬の体は力なく崩れたが、斬り落とされた馬の頭部の口はまだ動いていた。

血走った瞳をギョロギョロとさせている。

キモイ……。

『なるほど。首を跳ねられても脳味噌が破壊されてなければ死にはしないのね。でも、体は動かなくなるわけだ』

「うがぁあがあああがが!!!」

『おっ』

やっと俺を敵だと認識したのか一騎のゾンビナイトが俺に走り迫る。

『こっちに来るか。ならば──』

全力で走り迫る騎馬兵ゾンビ。

ゾンビ騎兵は乗馬しながら俺とすれ違う際にロングソードを振るった。

俺はその一振りを屈んで躱しながらバスタードソードを横に振るう。

ガンガンっと二度の衝撃が剣柄から俺に伝わる。

俺は横振りの一打でゾンビ騎馬の右前足と右後ろ足を同時に斬り落としたのだ。

「ひぃひひぃぃいい!!」

二本の足を失った騎馬が派手に転倒して砂埃を高々と上げる。

「うがぁがぁあ!!」

転倒したゾンビ騎兵がすぐに立ち上がろうとしていた。

だが、倒れた騎馬に片足を挟まれて立ち上がれない。

ゾンビ兵が馬と地面との間から抜け出そうと必死に踠いているところを俺は横振りにゾンビの頭を斬り割った。

器のように開かれた頭部が地面に転がる。

そして続いて俺は、今度は縦振りで転倒している騎馬の頭を切り裂いた。

力一杯バスタードソードを叩き下ろす。

俺は馬の頭部を残撃で破壊する。

『これで、三騎目だ!』

残るは四騎。

俺が振り返ると同時にクレアが四騎目のナイトとホースを倒していた。

可憐な連続突きでゾンビの頭を突き刺して、すぐさま馬の横っ面を串刺す。

これで残るは三騎だ。

「ひひぃぃいい!!」

『うおっ!!』

唐突だった。

俺は背後から騎馬に体当たりを食らって撥ね飛ばされる。

その衝撃で転倒しそうになった。

しかし、バスタードソードを杖の支えに転倒を免れる。

俺を突き飛ばしたゾンビナイトはそのままの速度で今度はクレアに突っ込んで行った。

しかし、クレアは流れる微風のような動きで横に躱すと、すれ違いに馬の顔をレイピアで切り裂いた。

更にクレアは振り返ると同時に腰からダガーを引き抜くと、綺麗なフォームでダガーを投擲する。

投擲されたダガーは騎兵の後頭部に突き刺さった。

それと同時に騎馬も騎兵も揃って転倒する。

そのまま馬も兵士も動かなくなった。

『可憐だね~』

「力任せな貴様とは真逆だからな」

『またまた~、このツンデレダークエルフさんが~』

あとゾンビナイトは二騎である。

そして俺は突進してくるゾンビホースの頭部をバスタードソードで切り裂いた。

それと同時に跳躍していたクレアがゾンビナイトの首を跳ねる。

鮮やかな連携技だった。

『やれば出来るじゃん、俺たちもさ。相性抜群じゃあねえの?』

「次は貴様が合わせて見せろ」

『マジでツンデレだな~』

残りの一騎である。

『もう、あとは余裕だよね』

まだゾンビナイトと距離があるのに俺はバスタードソードを大きく振りかぶってから力強く振るう。

そして、バスタードソードを勢い良く投擲する。

グルングルンと回転しながらバスタードソードが飛んで行くと、飛翔した剣が騎馬の頭部に突き刺さった。

それで騎馬が転倒して騎兵が前方に投げ出される。

その騎兵に俺は素早く近付いた。

『どれ、ここで一発だけ試させてもらうぜ』

「うががぁあっ!!」

俺は左手を伸ばしてロングソードを振るおうとしたゾンビナイトの手首を掴んだ。

攻撃の動きを力で封じる。

明らかにパワーでは俺が勝っていた。

ゾンビナイトは踠くが武器を振るえない。

武器を振るうどころか掴まれた腕すら外せない。

『よっ──』

そして、俺は逆手を伸ばしてゾンビナイトの顔に掌を添えた。

「うがぁ……かぁ!?」

『点火っ!!』

途端、ゾンビナイトの眼前に添えていた俺の掌が爆発した。

地雷の設置魔法陣の爆発だ。

チュドーーンっと爆音が轟く。

大爆発と言うほどの爆発でもなかった。

むしろ小爆発のレベルだ。

だが、眼前で爆発を浴びたゾンビナイトは仰け反り項垂れた。

俺が掴んでいた手を離してやるとその場にダウンする。

ゾンビナイトは顔面から白い煙を上げていた。

頭部が砕けるほどの破壊力ではないようだ。

表情は見えないが顔は残っていた。

しかし、焼け焦げている。

それにまだ手足が痙攣していた。

ゾンビとして活動停止していないのだろう。

だが、動けないダメージを負っている。

俺は眼前でダウンしているゾンビナイトを見下ろしながらクレアに言った。

『自爆地雷の暗器、ボチボチのダメージのようだな』

腰の鞘にレイピアを戻しながらクレアがこちらに歩み寄る。

「これは珍しい。ゾンビ相手に脳震盪か。人間相手ならば絶命を誘えなくても、気絶は確実だな」

俺は煙を上げる自分の掌を見ながら言った。

『畜生……。小指と薬指の動きが可笑しくなったぞ。こりゃあ、使うなら切り札だな。同じ戦いで何度も使えないぞ』

「元々が地雷の護符を貼り直さなければならない一撃の技だ。まあ、同じ戦いで何度も使えんだろうさ。暗器の一つとして秘めておけ」

『だな~』

「どれ、手を見せてみろ。アーティファクトリペアを施してやる」

『サンキュー、クレア~♡』

クレアが俺の右手を両手で掴んで魔法を唱え始めた。

なんかクレアに手を握られてドキドキするな。

これはいいぞ~♡

恋人っぽい。

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