【変態ゴレてん】少年が異世界転生したらゴーレムだったので魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも女の子にモテたいです

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
上 下
12 / 47

第12話【亜種の犬面】

しおりを挟む
俺とクレアは森の中の藪に隠れながら洞窟の様子を窺っていた。

屈みながら先を見る。

『居るな、コボルト……』

「居るわね、コボルトが」

やはりクレアが言う通り、件の洞窟にはコボルトが巣くっていた。

俺たちが潜んでいる森の中から洞窟までは20メートルほどの距離がある。

洞窟の前は30センチほどの雑草が繁る広場になっていた。

その広場の先に高さで30メートルほどの岩の崖があり、その崖の腹に横長の洞窟が口を開いている。

洞窟の横幅は15メートルぐらいだ。

天井は一番高いところで5メートルって言ったところだろうか。

俺は洞窟と聞いていたからトンネルのような洞穴を想像していたが、実際は崖を掘り出した窪みのような横長な洞窟であった。

中は広いが奥行きは浅そうだ。

その窪みのような洞窟に数匹のコボルトが屯している。

三匹のコボルトが焚き火を囲んで何やら動物の串焼きを料理していた。

ちょっと大きなネズミである。

三匹のコボルトは粗末な服を着て、腰には武器を下げていた。

短い剣、手斧、木の棍棒だ。

焚き火を囲む三匹の他に、洞窟の奥で寝ている二体のコボルトの姿もあった。

汚れたシーツを掛けて横になっていたり、壁に背を預けて大口を開きながら寝ているコボルトも居る。

まだ時刻は早朝のはずだ。

コボルトもお寝坊さんなのだろう。

俺は横に潜むクレアに小声で話し掛けた。

『起きているのが三匹で、寝ているのが二匹だな』

「違うは、寝ているのは四匹よ」

俺は目を凝らしたが残りの二匹を確認出来なかった。

『どこに居るんだ……?』

「右の大岩の陰よ」

確かに洞窟の中には幾つかの大岩がある。

その陰で涼みながら寝ているのだろうか。

『お前には居場所が見えるのか?』

「風の流れで分かるわ」

『へぇ~……』

ダークエルフって、すげ~な~……。

普段の空気は読めないが、こんな時の風は読めるんだ~……。

『じゃあ、全部でコボルトは合計で7匹だな』

「そうよ」

『さっきの話だと、10匹以内なら俺ら二人でも勝てるんだろ』

「簡単な計算よ。コボルト1匹の戦力が数値だと1点。7匹で計7点。貴様の戦力が5点、私が4点。数値から見ても単純に私たちが上よ」

なるほどね。

コボルトが7点。

俺らが5+4=9点。

俺でも分かる数値の差だ。

ならば勝てるよね。

『じゃあ、作戦はどうする?』

「正面から貴様が突っ込む。後方から私が魔法で援護する。それだけだ」

『単純な作戦だな……』

「コボルトが相手なら、それで十分よ」

俺はクレアの腰のレイピアを指差しながら言った。

『後方から魔法で援護するなら武器は要らんだろ。そのレイピアを貸してくれないか?』

「嫌よ」

『なんでだよ!!』

「貴様の腕力で折られたら堪らないだろ」

『じゃあ俺に素手で戦えと!?』

「お前はゴーレムだろ。その手は棍棒と同じだ。人間と比べれば、その拳が鈍器その物だ」

俺は自分の拳を眺めながら呟いた。

確かに硬そうだ。

『なるほどね~……』

両拳両脚が棍棒並みの武器なのね。

「貴様も自分がゴーレムだと少しは自覚しろ。早く慣れたほうがいいぞ」

『はいはい、分かりましたよ~』

俺は投げやりに言うと藪から立ち上がる。

自分がゴーレムってのに慣れたくないわな……。

『じゃあ、俺は速攻で突っ込むぞ、援護を頼むぜ!』

「任せろ」

俺はクレアの返事を聞くと藪から前に出た。

洞窟に向かって走り出す。

戦闘開始だ。

『おらっ、コボルトども、ぶっ殺すぞ!!』

「ガルルッ!?」

俺の声に反応したコボルドたちが立ち上がった。

三匹が武器を手に取る。

すると二匹が俺に向かって走り出して、残りの一匹が寝ている仲間をお越しに回った。

「「ガルルルルッ!!」」

牙を剥いた二匹のコボルトが俺に迫る。

そして、早くもクレアが後方で援護魔法を放った。

「ドライアードスネアっ!」

すると一匹のコボルトが足を止めた。

コボルトの両足に半透明な茨が絡み付いて移動を妨げている。

『足止めの魔法か。やるなクレアも。これでまずはタイマンだ!』

「ガルルルルッ!!」

俺は走り迫るコボルト一匹と差しの勝負になった。

ショートソードを振りかぶったコボルトが俺に切りかかる。

だが、俺のストレートパンチのほうが早くコボルトの顔面を殴っていた。

固い木製の拳がコボルトの犬顔を打つ。

「キャン!」

鼻血を散らしたコボルトがよろめいた。

その隙に俺は犬頭の顎と額を鷲掴む。

そして、力任せに首を捻った。

ゴキゴキっと鈍い粉砕音がコボルトの首から聞こえてくる。

完璧に折ってやった。

首の骨を折られたコボルトは膝から崩れ落ちる。

生き物の命を絶つ──。

俺は初めてじゃない。

実家は田舎で農家だった。

庭にニワトリを飼っていて、そのニワトリが食卓に並ぶ事は珍しくなかった。

母ちゃんに言われて飼っていたニワトリを絞めた事が何度もある。

だから、動物の首の骨を折るのも慣れていた。

小学生の高学年ごろには猪の肉を一人で捌けるようになっていた。

熊も何度か捌いた。

命を絶つことに、躊躇も差別もない。

生きるために他の命を絶つのは自然なのだ。

動物を殺すのが可愛そうだと文句を言っている野郎がスーパーでトンカツを買って食う。

矛盾だと俺は思う。

それならば徹底した草食主義のビーガンのほうが、まだ正しく思える。

俺は倒したコボルトを見下ろしながら言う。

『安心しろ、お前たちの死は無駄にしないぞ。お前らの分まで俺が生きてやる!』

俺は拳を背後に振りかぶりながらドライアードスネアで足を止められているコボルトに迫った。

そして、全力で拳を打ち込んだ。

地面スレスレに振るった拳がコボルトのボディーを突き上げる。

コボルトは移動も回避も出来なかった。

直撃。

俺の拳がガードを突き破る。

『どらっ!!』

「キャンっ!!」

更に俺はコボルトの体にめり込んだ拳を振り切ろうとしたが、コボルトの足に絡み付いた茨の魔法がそれを邪魔した。

コボルトの体は飛ばずに止まる。

『うらっ!!』

代わりに俺は逆の拳で二撃目を繰り出した。

背後に振りかぶった拳を上から下へと虹を描くように振るう。

ガッンっと音が鳴る。

俺の打ち下ろした拳がコボルトの脳天を殴り付けて首が縮こまっていた。

そして、ワンテンポ遅れてコボルトが大量の血を口から垂れ流す。

それから後ろにパタリと倒れた。

事切れたようだ。

『よし、二匹目撃破だっ!!』

俺が一歩前に踏み出すと、洞窟の前でコボルト5匹が呆然とこちらを見ていた。

犬の顔が青い。

そして、俺と視線が合うと、武器を捨てて逃げ出した。

キャンキャンっと鳴きながら蜘蛛の子を散らすように洞窟の前から走り出す。

『あれれ……、逃げるの?』

俺は呆れながらコボルトたちを見送った。

すると俺の背後にクレアが寄ってくる。

「まあ、逃げるのも仕方ないだろう。戦力差がコボルトにも一目で理解が出来たのだろうさ」

『そうなのか……?』

「戦力の差が大きすぎる。向こうの戦力は7点で、こちらは20点だからな」

『20点……。5+4で9点だろ?』

「何を言っているのだ、貴様は?」

『えっ……?』

「5×4は20だろ。貴様は計算も出来ないのか」

『掛け算なのかよ!!』

「当然だ。ゴーレムとゴーレムマスターのコンビだぞ。足し算で戦力を計算するほうが間違いだ」

「なるほどね……」

まあ、労せずに勝てたからいいのかな。

それに、これで洞窟もゲットだしさ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜

アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。 だが、そんな彼は…? Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み… パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。 その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。 テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。 いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。 そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや? ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。 そんなテルパの受け持つ生徒達だが…? サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。 態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。 テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか? 【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】 今回もHOTランキングは、最高6位でした。 皆様、有り難う御座います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...