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第516話【魔王城街の工事】
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まずはレベルアップしているので、覚えた新スキルのご紹介からスタートするぜい。
今回は一つだけだった。
まあ、ほとんど見ているだけだったからな~。
見るも経験の内って言うけれど、見ているだけだとスキルの覚えも悪いようだ。
まあ、兎に角覚えたスキルはこれですわん。
【出血耐性スキル。出血に対して耐久力が向上する。出血による意識低下を軽減する】
確かに今回は刺されて血がドバドバと出たもんな~。
出血多量で死ぬかと思ったぐらいだもん。
まあ、これで、流血戦にも強くなったってことだよね。
兎に角、強くなることは良いことだ。
そんでもって今俺は、魔王城街のメインストリートを歩いていた。
まだまだ作業員たちが慌ただしく行き来しているだけである。
観光客どころか一般市民すら見当たらない。
まるで町全体が工事現場のようだった。
大工がトッテンカッタンとハンマーで釘を打つ音があちらこちらから聴こえて来る。
俺が呑気に歩いていると、土が剥き出しの路上を全裸のノームたちが煉瓦を敷き詰める作業に励んでいた。
遠くを見たら、おそらく石切場から運んで来たと思われる大きな岩のブロックをミケランジェロが担いで歩いていた。
あの岩が石橋の素材になるのだろう。
頑張っている作業員たちには感謝だわ。
俺に建築作業なんて無理だもの。
「さて、これからどうするかな……」
少し疲れたので俺は、路上の隅に置かれていた丸太に腰掛けながら呟いた。
まだ少し背中の傷が痛むので冒険には出れない。
冒険に関してはスカル姉さんにも止められている。
少なくてもあと一週間は大人しくして、それから少しずつ筋トレをリハビリとして開始するのが良いだろうと言われているのだ。
まあ、しばらくは見聞を広げることに専念するしかないだろう。
体を使わず頭を使うことに専念だ。
丸太から腰を上げた俺は石橋のほうを目指して歩き出す。
倒壊した石橋に到着すると、バイマンが運ばれてきた岩のブロックの個数を数えて書類に記載していた。
こいつも真面目に働いているんだな。
「よう、バイマン。頑張ってるかい~」
「やあ、アスランさんじゃあないですか。もう傷は大丈夫なのですか?」
俺は腰をグルグルと回しながら言った。
「まあ、乱暴に動かなければ大丈夫なぐらいには回復したぜ」
「それは、良かったですね、アスランさん」
微笑みながら返したバイマンに石橋を指差しながら訊いた。
「なあ、橋はいつごろに修復が終わるんだ?」
バイマンはポケットから手帳を取り出すとスケジュールを確認する。
「ええ~っと、ハドリアヌスさんの計画だと、順調に進んで、あと十三日後に作業が終わるのかな~」
「なに、あのアナル野郎は、こまかく予定を組んでやがるのか?」
「いえ、違いますよ」
「違う?」
「あの人は、現在進行中の作業を見て、その作業の終了時期を予想しているだけですよ」
「自分の予定を押し付けているわけじゃあないんだ」
「そうなんですよね」
「それで、石橋の完成は十三日後ってことかいな」
俺とバイマンが話していると、四角い大岩ブロックを担いだミケランジェロが現れた。
石切場から岩を背負って歩いてきたのだろう。
まさにダンプカー並みのパワーだな。
サイクロプスも意思疏通が出来れば人間の役に立つってことだろう。
この光景を、今後来るだろうソドムタウンからの観光客が見たらビックリするだろうさ。
俺が感心しながらミケランジェロを見上げていると、サイクロプスの彼が背負っていた四角い岩を地面に下ろした。
それだけでドシンっと地が跳ねる。
岩を置いたミケランジェロが俺に気付いて話し掛けて来た。
「よぉ~う、アスランじゃあないか、女の子に恨まれてて刺されたって訊いたが、もう大丈夫なのか?」
「どんな噂が流れてたんだ……」
ミケランジェロは大きなタオルで汗を拭きながら言う。
「アインシュタインが言ってたぞ。ソドムタウンでウンコの世話までさせていた盗賊の女の子に別れ話をしたら後ろからズブリって刺されて重体だとか」
「あの糞チビポビットめ……。いろいろな噂を混沌させながらバラ撒いてやがるな……」
「まあ、ホビットって奴は適当だからな。お前も気にするな」
「それよりも、お前はどうなんだ?」
ミケランジェロは下ろした岩ブロックに腰を下ろして休憩に入る。
「どうだって、何がさ?」
「ここでの暮らしは慣れたのか? 皆と上手くやってるのか?」
「ああ、ここは人間だけじゃあなく、いろんな亜種が揃っているからな。魔王城の幽霊たち。エルフ界から疎外された一族。一人きりになったホビット。服を絶対に着ないノームたち。ダンジョンから出てきたばかりのゴーレムマスター。ソード人の一族。人に化けたクラーケンまで移住してきたからな」
「そうだな、ここは魔王城らしくなってきたってことか……」
良いのか、それで!?
本物の魔王城っぽくなって良いのかな!?
ミケランジェロが一つ目を微笑ませながら言った。
「ここはきっと、将来的にはモンスターの楽園になるはずだ」
違う!!
そんな楽園は目指していないぞ!!
俺が顔を青ざめていると、鳶職の格好をしたエルフが一人走って来る。
その表情は血相を変えていた。
何やら怒鳴っている。
「ミケランジェロさーーん、ミケランジェロさーーーーん!!!」
「おい、ヤンキーが呼んでるぞ?」
「なんだろう?」
俺たち三人が怒鳴って走って来た鳶ヤンキーエルフを並んで待った。
名前を呼ばれたミケランジェロが問う。
「どうかしたのか?」
「それが、石切場に洞窟が出現して!!」
「洞窟が?」
岩を切り出しててダンジョンでも堀当てたのかな?
ミケランジェロは冷静に言う。
「ダンジョンぐらいで慌てるな。お前らエルフはダンジョンも見たことないのか?」
「ないでやんす!!」
やんす?
本当に可笑しな口調のエルフたちなんだな……。
「それが、ダンジョンよりも、その中からモンスターが雪崩出て来て石切場はパニックでやんすよ!!」
「モンスターが出てきただと!?」
俺はミケランジェロの前に出て鳶ヤンキーエルフに訊いた。
「モンスターって、名前は?」
「分かりません。見たことないモンスターでやんす!!」
「じゃあ、外観は?」
「鋼鉄でやんす!!」
「鋼鉄のゴーレムか?」
「いや、鋼鉄の肌でやんすが、生きていやす。生々しく動いていやす!!」
魔法生命体の部類かな?
「数は?」
「一体でしたが、仲間を取り込んで数を増やしていやす!!」
「取り込む、数を増やしてる?」
「その鋼鉄のモンスターに触れられると、鋼鉄に変貌されて仲間を襲い始めるんでやんすよ!!」
バイマンが心配そうに言う
「感染型のモンスターか……。なんか、ヤバそうなモンスターを堀当てたようですね……」
俺は走り出しながらミケランジェロとバイマンに指示を出した。
「ミケランジェロは俺についてこい。バイマンはエルフと一緒に皆に報告して回れ。その後に応援を頼むぞ!!」
「分かりました!」
走り出した俺をミケランジェロが鷲掴みにして抱え上げる。
「俺が運んだほうが速い」
「サ、サンキュー」
「それに走り出すのは良いが、石切場はこっちだ。お前、場所も分からずに走り出しただろ」
「す、すんまそ~ん……」
俺はミケランジェロの肩に抱え上げられながら石切場を目指した。
【つづく】
今回は一つだけだった。
まあ、ほとんど見ているだけだったからな~。
見るも経験の内って言うけれど、見ているだけだとスキルの覚えも悪いようだ。
まあ、兎に角覚えたスキルはこれですわん。
【出血耐性スキル。出血に対して耐久力が向上する。出血による意識低下を軽減する】
確かに今回は刺されて血がドバドバと出たもんな~。
出血多量で死ぬかと思ったぐらいだもん。
まあ、これで、流血戦にも強くなったってことだよね。
兎に角、強くなることは良いことだ。
そんでもって今俺は、魔王城街のメインストリートを歩いていた。
まだまだ作業員たちが慌ただしく行き来しているだけである。
観光客どころか一般市民すら見当たらない。
まるで町全体が工事現場のようだった。
大工がトッテンカッタンとハンマーで釘を打つ音があちらこちらから聴こえて来る。
俺が呑気に歩いていると、土が剥き出しの路上を全裸のノームたちが煉瓦を敷き詰める作業に励んでいた。
遠くを見たら、おそらく石切場から運んで来たと思われる大きな岩のブロックをミケランジェロが担いで歩いていた。
あの岩が石橋の素材になるのだろう。
頑張っている作業員たちには感謝だわ。
俺に建築作業なんて無理だもの。
「さて、これからどうするかな……」
少し疲れたので俺は、路上の隅に置かれていた丸太に腰掛けながら呟いた。
まだ少し背中の傷が痛むので冒険には出れない。
冒険に関してはスカル姉さんにも止められている。
少なくてもあと一週間は大人しくして、それから少しずつ筋トレをリハビリとして開始するのが良いだろうと言われているのだ。
まあ、しばらくは見聞を広げることに専念するしかないだろう。
体を使わず頭を使うことに専念だ。
丸太から腰を上げた俺は石橋のほうを目指して歩き出す。
倒壊した石橋に到着すると、バイマンが運ばれてきた岩のブロックの個数を数えて書類に記載していた。
こいつも真面目に働いているんだな。
「よう、バイマン。頑張ってるかい~」
「やあ、アスランさんじゃあないですか。もう傷は大丈夫なのですか?」
俺は腰をグルグルと回しながら言った。
「まあ、乱暴に動かなければ大丈夫なぐらいには回復したぜ」
「それは、良かったですね、アスランさん」
微笑みながら返したバイマンに石橋を指差しながら訊いた。
「なあ、橋はいつごろに修復が終わるんだ?」
バイマンはポケットから手帳を取り出すとスケジュールを確認する。
「ええ~っと、ハドリアヌスさんの計画だと、順調に進んで、あと十三日後に作業が終わるのかな~」
「なに、あのアナル野郎は、こまかく予定を組んでやがるのか?」
「いえ、違いますよ」
「違う?」
「あの人は、現在進行中の作業を見て、その作業の終了時期を予想しているだけですよ」
「自分の予定を押し付けているわけじゃあないんだ」
「そうなんですよね」
「それで、石橋の完成は十三日後ってことかいな」
俺とバイマンが話していると、四角い大岩ブロックを担いだミケランジェロが現れた。
石切場から岩を背負って歩いてきたのだろう。
まさにダンプカー並みのパワーだな。
サイクロプスも意思疏通が出来れば人間の役に立つってことだろう。
この光景を、今後来るだろうソドムタウンからの観光客が見たらビックリするだろうさ。
俺が感心しながらミケランジェロを見上げていると、サイクロプスの彼が背負っていた四角い岩を地面に下ろした。
それだけでドシンっと地が跳ねる。
岩を置いたミケランジェロが俺に気付いて話し掛けて来た。
「よぉ~う、アスランじゃあないか、女の子に恨まれてて刺されたって訊いたが、もう大丈夫なのか?」
「どんな噂が流れてたんだ……」
ミケランジェロは大きなタオルで汗を拭きながら言う。
「アインシュタインが言ってたぞ。ソドムタウンでウンコの世話までさせていた盗賊の女の子に別れ話をしたら後ろからズブリって刺されて重体だとか」
「あの糞チビポビットめ……。いろいろな噂を混沌させながらバラ撒いてやがるな……」
「まあ、ホビットって奴は適当だからな。お前も気にするな」
「それよりも、お前はどうなんだ?」
ミケランジェロは下ろした岩ブロックに腰を下ろして休憩に入る。
「どうだって、何がさ?」
「ここでの暮らしは慣れたのか? 皆と上手くやってるのか?」
「ああ、ここは人間だけじゃあなく、いろんな亜種が揃っているからな。魔王城の幽霊たち。エルフ界から疎外された一族。一人きりになったホビット。服を絶対に着ないノームたち。ダンジョンから出てきたばかりのゴーレムマスター。ソード人の一族。人に化けたクラーケンまで移住してきたからな」
「そうだな、ここは魔王城らしくなってきたってことか……」
良いのか、それで!?
本物の魔王城っぽくなって良いのかな!?
ミケランジェロが一つ目を微笑ませながら言った。
「ここはきっと、将来的にはモンスターの楽園になるはずだ」
違う!!
そんな楽園は目指していないぞ!!
俺が顔を青ざめていると、鳶職の格好をしたエルフが一人走って来る。
その表情は血相を変えていた。
何やら怒鳴っている。
「ミケランジェロさーーん、ミケランジェロさーーーーん!!!」
「おい、ヤンキーが呼んでるぞ?」
「なんだろう?」
俺たち三人が怒鳴って走って来た鳶ヤンキーエルフを並んで待った。
名前を呼ばれたミケランジェロが問う。
「どうかしたのか?」
「それが、石切場に洞窟が出現して!!」
「洞窟が?」
岩を切り出しててダンジョンでも堀当てたのかな?
ミケランジェロは冷静に言う。
「ダンジョンぐらいで慌てるな。お前らエルフはダンジョンも見たことないのか?」
「ないでやんす!!」
やんす?
本当に可笑しな口調のエルフたちなんだな……。
「それが、ダンジョンよりも、その中からモンスターが雪崩出て来て石切場はパニックでやんすよ!!」
「モンスターが出てきただと!?」
俺はミケランジェロの前に出て鳶ヤンキーエルフに訊いた。
「モンスターって、名前は?」
「分かりません。見たことないモンスターでやんす!!」
「じゃあ、外観は?」
「鋼鉄でやんす!!」
「鋼鉄のゴーレムか?」
「いや、鋼鉄の肌でやんすが、生きていやす。生々しく動いていやす!!」
魔法生命体の部類かな?
「数は?」
「一体でしたが、仲間を取り込んで数を増やしていやす!!」
「取り込む、数を増やしてる?」
「その鋼鉄のモンスターに触れられると、鋼鉄に変貌されて仲間を襲い始めるんでやんすよ!!」
バイマンが心配そうに言う
「感染型のモンスターか……。なんか、ヤバそうなモンスターを堀当てたようですね……」
俺は走り出しながらミケランジェロとバイマンに指示を出した。
「ミケランジェロは俺についてこい。バイマンはエルフと一緒に皆に報告して回れ。その後に応援を頼むぞ!!」
「分かりました!」
走り出した俺をミケランジェロが鷲掴みにして抱え上げる。
「俺が運んだほうが速い」
「サ、サンキュー」
「それに走り出すのは良いが、石切場はこっちだ。お前、場所も分からずに走り出しただろ」
「す、すんまそ~ん……」
俺はミケランジェロの肩に抱え上げられながら石切場を目指した。
【つづく】
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