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第511話【若頭のバーツ】
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「いつになったら分かるんやら……」
唐突に登場した強面の男が言った。
巻き煙草を咥えながら困った困ったと頭を振っている。
「俺たち盗賊ギルドの人間は、表に堂々と出ちゃあならねえって、いつもいつも親父さんが言ってるだろ、天秤」
思い出したぞ。
あいつは盗賊ギルドの若頭のバーツだ。
後ろに二人のチンピラを連れているが、あいつらはサジとマジだったかな。
魔王城に町が出来たら盗賊ギルドの支部を作って裏社会を仕切りたいって言ってた奴らだ。
バーツが眉の無い顔を上げて二階の窓から覗き見ていた俺に言う。
「よう、アスランの大将、済まんかったな、うちの者がテロっちまってよ」
「うちの者?」
「そう、天秤……。あ~、ミーちゃんって言ったほうが分かりやすいか、あんたには」
「そこのライカンスロープね」
「ああ、こいつはうちのギルドの者だ」
あー、ミーちゃんって盗賊ギルドのメンバーだったのか。
まあ、この町で不動産泥棒を働いているなら当然なのかも知れない。
「それが、何をとち狂ったのか、昼間の街中で、堂々と爆破テロなんてブチかましやがってよ」
バーツは言い終わると咥えていた巻煙草を地面に投げ捨て踏みつける。
「まあ、あとはうちに任せて貰えねえか。こいつの呪いは心得ているからよ。あとは任せておけや」
任せるも何もマジで盗賊風情がライカンスロープと化したミーちゃんをどうにか出来るのか?
あの男からは強い気は感じられない。
強面で腕っ節が立つのは分かるが、それがどれほどかが計れない。
おそらく気を隠して力量を伏せているんだ。
「まあ、じゃあ、お手並み拝見といたしますか」
「ガルルルルルルルルっ!!!」
俺が二階の窓から見下ろしている中で、虎人間と化したミーちゃんがバーツに飛び掛かった。
だが、牙を剥いて飛び掛かるミーちゃんを余所にバーツは両手をズボンのポケットに入れたまま突っ立っていた。
大きく口を開いたミーちゃんの牙がバーツの頭部に迫る。
このままではバーツの頭がガブリと齧られてしまうぞ。
しかし、ミーちゃんが齧り付く寸前に、ハンドポケットのままバーツが身を屈めてワータイガーの足元に滑り込んだ。
屈んだバーツの肩がミーちゃんの膝を轢き打つ。
鎧から剥き出しになっている膝を叩かれたライカンスロープがバーツの背の上を回るように越えると背後に倒れた。
「ニャニャ!!」
地面を転がったワータイガーが俊敏に立ち上がるが、ズボンに両手を突っ込んだままのバーツが虎顔の前まで跳躍していた。
そこからジャンピング893キックが炸裂。
「オラッ!!」
「ニャーーーー!!」
蹴り脚の踵を振り切るバーツ。
顔面を蹴られたミーちゃんが再び地面を転がった。
「強いな……」
今の動きだけで理解できた。
このバーツたる男は気配を消すことで自分の力量を隠しながらも呪いの怪物をねじ伏せたのだ。
しかも両手はハンドポケットだ。
かなりバランスの悪い状況でありながら身長2メートル半でフルプレートを強奪して装着している怪物を蹴り倒したのだ。
普通はそんなことは出来やしない。
気を隠しているが、かなり強いぞ。
「ガルルルルルルルル!!!」
それでも相手は不死身の怪物だ。
蹴りの一つでどうこうなるような代物でも無い。
「さて、あの男の力量はなんとなく分かったが、これからミーちゃんをどうするつもりなんだ。取り押さえるか、気絶させるか、それとも絶命させるのか……?」
絶命は嫌だな……。
ミーちゃんには酷いめに逢わされているが、彼女が死ぬところを出来れば見たくない。
願うならば、命だけは助けてやりたいのだ。
「遊びはこのぐらいで終わりだ。俺も暇じゃあないんでね。そろそろ終わらせてもらうぜ、天秤」
バーツが片手をポケットからだすと、そこには黒い鋼の拳銃が握られていた。
「拳銃!?」
初めて見た。
拳銃その物を見るのが初めてだった。
この異世界でも、前の世界でも、拳銃なんで生で見たことない。
だから、拳銃なんて詳しくない。
でも、あれがリボルバー式の拳銃なのは見て分かった。
銃口が短い拳銃だ。
テレビドラマで警察官が持っているのを見たことがある。
「でも、なんで拳銃なんて持っているんだ……。マジックアイテムなのか?」
魔力感知スキルの範囲外だ。
あれがマジックアイテムかが分からない。
バーツが俺に話し掛けて来る。
「知ってるかい、アスランの大将」
「何を?」
「ライカンスロープってのは、一律で銀の武器に弱いっての」
「そうなのか?」
確かに昔の映画でそんな設定があったような……。
でも、それって吸血鬼じゃあなかったっけ?
「じゃあ、その拳銃から銀の玉が撃てると?」
バーツがわざとらしく驚いた顔を作る。
「へぇ~、あんた、拳銃って単語を知ってるんだ」
「あっ……」
あら、まずったかな……。
もしかして、こいつも異世界転生についてなんかしってるのかな?
そんな俺の素振りを気にせずにバーツが述べる。
「俺の異世界転生能力は、相手の弱点をリサーチして、その最善の武具を作り出すチート能力なんだぜ」
「チート能力だと!!」
「そう、俺もあんたと同じ異世界転生者だ」
「マジで!!!!」
「大マジよう」
怪しく微笑んだバーツがトリガーを引いて発砲する。
発射された弾丸がライカンスロープの右膝を貫いた。
「キャインっ!!!」
悲鳴と共にミーちゃんが跳ねるようにダウンする。
膝に弾痕が深々と刻まれ鮮血が飛び散っていた。
効いている……。
おそらく、放たれたのは銀の弾丸なのだろう……。
こいつ、マジでチート能力者なのかよ……。
【つづく】
唐突に登場した強面の男が言った。
巻き煙草を咥えながら困った困ったと頭を振っている。
「俺たち盗賊ギルドの人間は、表に堂々と出ちゃあならねえって、いつもいつも親父さんが言ってるだろ、天秤」
思い出したぞ。
あいつは盗賊ギルドの若頭のバーツだ。
後ろに二人のチンピラを連れているが、あいつらはサジとマジだったかな。
魔王城に町が出来たら盗賊ギルドの支部を作って裏社会を仕切りたいって言ってた奴らだ。
バーツが眉の無い顔を上げて二階の窓から覗き見ていた俺に言う。
「よう、アスランの大将、済まんかったな、うちの者がテロっちまってよ」
「うちの者?」
「そう、天秤……。あ~、ミーちゃんって言ったほうが分かりやすいか、あんたには」
「そこのライカンスロープね」
「ああ、こいつはうちのギルドの者だ」
あー、ミーちゃんって盗賊ギルドのメンバーだったのか。
まあ、この町で不動産泥棒を働いているなら当然なのかも知れない。
「それが、何をとち狂ったのか、昼間の街中で、堂々と爆破テロなんてブチかましやがってよ」
バーツは言い終わると咥えていた巻煙草を地面に投げ捨て踏みつける。
「まあ、あとはうちに任せて貰えねえか。こいつの呪いは心得ているからよ。あとは任せておけや」
任せるも何もマジで盗賊風情がライカンスロープと化したミーちゃんをどうにか出来るのか?
あの男からは強い気は感じられない。
強面で腕っ節が立つのは分かるが、それがどれほどかが計れない。
おそらく気を隠して力量を伏せているんだ。
「まあ、じゃあ、お手並み拝見といたしますか」
「ガルルルルルルルルっ!!!」
俺が二階の窓から見下ろしている中で、虎人間と化したミーちゃんがバーツに飛び掛かった。
だが、牙を剥いて飛び掛かるミーちゃんを余所にバーツは両手をズボンのポケットに入れたまま突っ立っていた。
大きく口を開いたミーちゃんの牙がバーツの頭部に迫る。
このままではバーツの頭がガブリと齧られてしまうぞ。
しかし、ミーちゃんが齧り付く寸前に、ハンドポケットのままバーツが身を屈めてワータイガーの足元に滑り込んだ。
屈んだバーツの肩がミーちゃんの膝を轢き打つ。
鎧から剥き出しになっている膝を叩かれたライカンスロープがバーツの背の上を回るように越えると背後に倒れた。
「ニャニャ!!」
地面を転がったワータイガーが俊敏に立ち上がるが、ズボンに両手を突っ込んだままのバーツが虎顔の前まで跳躍していた。
そこからジャンピング893キックが炸裂。
「オラッ!!」
「ニャーーーー!!」
蹴り脚の踵を振り切るバーツ。
顔面を蹴られたミーちゃんが再び地面を転がった。
「強いな……」
今の動きだけで理解できた。
このバーツたる男は気配を消すことで自分の力量を隠しながらも呪いの怪物をねじ伏せたのだ。
しかも両手はハンドポケットだ。
かなりバランスの悪い状況でありながら身長2メートル半でフルプレートを強奪して装着している怪物を蹴り倒したのだ。
普通はそんなことは出来やしない。
気を隠しているが、かなり強いぞ。
「ガルルルルルルルル!!!」
それでも相手は不死身の怪物だ。
蹴りの一つでどうこうなるような代物でも無い。
「さて、あの男の力量はなんとなく分かったが、これからミーちゃんをどうするつもりなんだ。取り押さえるか、気絶させるか、それとも絶命させるのか……?」
絶命は嫌だな……。
ミーちゃんには酷いめに逢わされているが、彼女が死ぬところを出来れば見たくない。
願うならば、命だけは助けてやりたいのだ。
「遊びはこのぐらいで終わりだ。俺も暇じゃあないんでね。そろそろ終わらせてもらうぜ、天秤」
バーツが片手をポケットからだすと、そこには黒い鋼の拳銃が握られていた。
「拳銃!?」
初めて見た。
拳銃その物を見るのが初めてだった。
この異世界でも、前の世界でも、拳銃なんで生で見たことない。
だから、拳銃なんて詳しくない。
でも、あれがリボルバー式の拳銃なのは見て分かった。
銃口が短い拳銃だ。
テレビドラマで警察官が持っているのを見たことがある。
「でも、なんで拳銃なんて持っているんだ……。マジックアイテムなのか?」
魔力感知スキルの範囲外だ。
あれがマジックアイテムかが分からない。
バーツが俺に話し掛けて来る。
「知ってるかい、アスランの大将」
「何を?」
「ライカンスロープってのは、一律で銀の武器に弱いっての」
「そうなのか?」
確かに昔の映画でそんな設定があったような……。
でも、それって吸血鬼じゃあなかったっけ?
「じゃあ、その拳銃から銀の玉が撃てると?」
バーツがわざとらしく驚いた顔を作る。
「へぇ~、あんた、拳銃って単語を知ってるんだ」
「あっ……」
あら、まずったかな……。
もしかして、こいつも異世界転生についてなんかしってるのかな?
そんな俺の素振りを気にせずにバーツが述べる。
「俺の異世界転生能力は、相手の弱点をリサーチして、その最善の武具を作り出すチート能力なんだぜ」
「チート能力だと!!」
「そう、俺もあんたと同じ異世界転生者だ」
「マジで!!!!」
「大マジよう」
怪しく微笑んだバーツがトリガーを引いて発砲する。
発射された弾丸がライカンスロープの右膝を貫いた。
「キャインっ!!!」
悲鳴と共にミーちゃんが跳ねるようにダウンする。
膝に弾痕が深々と刻まれ鮮血が飛び散っていた。
効いている……。
おそらく、放たれたのは銀の弾丸なのだろう……。
こいつ、マジでチート能力者なのかよ……。
【つづく】
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この子のおかげで作家デビューできました
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