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第498話【クラウドとの対決】
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さて、始まってしまいましたよ、俺とクラウドの対決がさ~。
同期対決って言えばいいのかな~?
でも俺のほうが少し早く冒険を開始しているから、ほんのちょっとだけ先輩なんだよね。
でも、学年で言えば同級生なんだよな。
まあ、そんなことはどうでもいいや。
クラウドは両手で確りとバスタードソードを持って、オーソドックスに中段の構えを築いてやがる。
体の向き、伸ばされた背筋、足の幅。
すべてが教科書通りの正確な構えである。
やっぱり、真面目だよな、こいつ。
真っ直ぐに俺を睨む視線からすら生真面目さが伝わってくるよ。
そんなこいつが俺を殺すなんて殺伐とした台詞を吐くようになったなんて、これも成長と呼べるのかな?
まあ、でも──。
俺は周りを見回した。
数人の冒険者たちが気絶して転がっている。
顎を砕かれたり、鼻を潰されて気絶している。
まあ、俺がぶん殴ったんだけれどさ。
「なあ、クラウド」
「なんだい、アスラン君?」
「お前と対決するのは構わんが──」
「構わないが、何かな?」
俺は周りを見回しながら言う。
「ちょっと足場が悪い。こいつらを隅に寄せようや」
「んん、そうだね」
俺とクラウドは一旦武器を収めてから気絶している冒険者たちを木材置き場の隅に移動させた。
角刈りポニーテールが丸太に腰掛けながらぼやいている。
「ママゴトかよ……」
こいつは手伝ってくれないのね。
それでも俺とクラウドの二人は怪我人を移動させる。
「よし、こいつで最後だ。クラウド、足を持ってくれないか」
「ああ、分かったよ。いっせ~の~でぇ~」
「「よっと」」
俺とクラウドは上半身と下半身を持って大男を二人で運んだ。
「じゃあ、クラウドは戦う準備でもしていてくれないか」
「アスラン君、キミは?」
「ちょっとこいつらにヒールを掛けてから行くわ~」
「優しいな、キミは……」
「あとで慰謝料を請求されたら嫌だからな~。治せるうちに治しとこうと思ってよ」
俺は言いながら気絶している連中にヒールを掛けて回った。
傷は癒えたが目は覚まさない。
ヒールで傷は癒えても意識は取り戻さないのね。
あんまり他人にヒールを施す機会なんて無いから知らんかったわ。
まあ、いいか~。
俺は立ち上がると踵を返した。
クラウドのほうを見てみれば、糞真面目にバスタードソードで素振りをしていた。
俺ならヒールを施している隙に背後から切りかかったかも知れないのにさ。
本当に真面目だよな。
「ウォーミングアップは済んだか、クラウド?」
「ああ、僕は身体が暖まったよ」
「よし、じゃあ始めるか~」
俺は腰から黄金剣を引き抜いた。
サクっと終わらせようかな。
クラウドが再び中段に剣を構えた。
瞳が鋭く変わり戦闘モードに入ったのが視線で分かる。
俺は構えらしい構えは取らなかった。
クラウドごときに構えは要らないだろうさ。
それほどに実力差が有ると見た。
「それじゃあ、始めるぜ」
「分かったよ……」
答えたクラウドが構えを崩す。
何をするのかと思えばバスタードソードの刀身を自分の頬に当てた。
そして、僅かに剣の刃を引く。
「何してるん?」
俺が問うと頬に小さな刀傷を刻んだクラウドが答えた。
「ちょっとした儀式だ。気にしないでくれ」
「ああ、分かった分かった。じゃあ俺から打ち込むぞ」
俺は言いながら黄金剣を振り上げた。
切っ先を真っ直ぐ天に向ける。
高々と伸ばされた黄金剣が太陽光をキラキラと反射させて煌めいた。
「打ち込むぞ!」
「来いっ!!」
ダッシュからの打ち込み。
構えは雑だが打ち込む速度は本気だった。
天から地に向けて振られた剣打がクラウドの脳天を狙う。
「なんのっ!!」
クラウドは剣を斜めに翳すと俺の黄金剣を受け止めた。
斜めの角度を活かして受け流す気だろう。
だが俺は力任せに押しきる。
斜めに翳していたクラウドの剣が真横に倒れて俺の剣打に沈み込む。
「ぬぬぬっ!!」
クラウドは両手を力ませながら腰を落として俺のパワーに耐え忍んでいた。
いつも優雅に振る舞うクラウドが、オヤジ臭く蟹股でふんばっている。
力んだ身体がプルプルしているよ。
ププッ。
「受けるのがやっとだな~」
「なんの、これしき!!」
「はい、甘い」
俺は踏ん張るクラウドの土手っ腹に前蹴りを打ち込んだ。
剣打に耐えるのがやっとだったクラウドは、蹴りを躱すどころじゃあなかったのだろう。
「ぐはっ!!」
クラウドは俺の前蹴りを食らって後方に飛ばされた。
軽いな。
「チョリ~ス」
吹っ飛んだクラウドは後頭部から転倒すると、グルグルと三回転がってから腹這いでダウンする。
「立てるか~、クラウド?」
肩に黄金剣を背負いながら俺が問うと、フラフラとクラウドが立ち上がる。
バスタードソードを杖変わりに立ち上がったクラウドの表情は苦痛と屈辱に歪んでいた。
「け、蹴りなんて、下品だぞ、キミは……」
俺はドヤ顔で言ってやった。
「冒険中に蹴られたことは無いのか?」
「トロールに蹴られたことがあるよ……」
「人間だって、蹴るんだぜ」
「勉強になった!!」
コンドはクラウドから切り掛かって来た。
左足で踏み込み、右足で踏ん張る。
そこからの袈裟斬り。
まただ──。
教科書通りに踏み込み、教科書通りに踏ん張り、教科書通りに打ち込んで来たのだ。
確かに一つ一つは鋭く速い。
確かに一流の打ち込みだ。
だが、攻めに個性が無いな。
一般の戦場なら通じるだろうが、色々と冒険を繰り広げて生きて来た俺には味気ない先方だ。
モンスターのほうが、もっと個性的な攻め手だぞ。
これが人間の基本なのね。
「せい」
俺は片手で黄金剣を横に振るうとクラウドのバスタードソードを軽々と弾く。
そして更に一歩深く踏み込んだ。
そこからの地獄突き──。
真っ直ぐに伸ばした四本の指を揃えてクラウドの喉仏に滑り込ませる。
ザクリと俺の四指がクラウドの喉にめり込んだ。
「ぐほっ!?」
バッチく涎を吐き散らしながらクラウドが背を丸めてよろめいた。
そこに俺は掬い上げの軌道で黄金剣を打ち込んでやる。
「よっとさ」
「ぬあっ!!」
咄嗟に剣を盾に俺の攻撃を受け止めたクラウドの身体が宙に浮いた。
その浮いた身体のド真ん中に俺は後ろ上段廻し蹴りを突き立てる。
「破っ!!」
「がはっ!!」
クラウドの身体が斜めに飛んで行く。
空中に居れば回避出来ないもんね。
蹴り放題だよ。
でも、腕でガードはされていたからダメージは余り期待できないかな。
でも、この一連で実力差は理解できただろう。
宙を舞っていたクラウドが着地する。
倒れない。
しかし重々しく片膝をついた。
「ぐぐぐぅ……。防御の上からでも臓腑が捩れそうだ……」
「分かったかい、この実力の差がさ?」
「べ、勉強になった……」
そう答えたクラウドは、再びバスタードソードを両手で構え直す。
まだやる気のようだ。
学んでいないな~。
心が折れるほどのダメージじゃあ無かったのだろう。
まあ、いいさ。
じゃあ、そろそろ終わらせようか──。
俺が終わりを決意すると同時にクラウドが剣を頭上に振り上げながら切り掛かって来た。
「学べよな」
「学んでいる最中だ!!」
クラウドの気合いが籠った兜割りが俺の眉間を狙っていた。
だが俺は片足を軸に半身をずらして斬撃を紙一重で躱す。
繊細だが余裕の回避だ。
俺の鼻先をバスタードソードの刀身が過ぎると足元に突き刺さった。
その空振りと同時に俺の左剛腕がショートアッパーを鋭く放つ。
下から突き上げた鋼鉄の拳がクラウドの顎を叩くとガゴンと激しい音が鳴った。
クラウドの下顎が上顎に激突した鈍い音だ。
そして俺は拳をスピーディーに振り切る。
「ぶはっ!!」
瞬時に上を向かされたクラウドの口から鮮血と共に白い前歯が数本発射されていた。
四本は飛んでたな。
1メートルぐらい高く吐き上げてないか。
そして、背筋を真っ直ぐに伸ばしながら空を見上げているクラウドが一歩二歩とよろめくように後退する。
うし、会心の一撃だったぜ。
クラウドは気絶しちゃうかな~。
まあ、これで、ダウンして終わりだろうさ。
そう俺が確信した刹那だった。
ムクリとクラウドが前を向き直す。
口から鮮血をダラダラと垂れ流していたが眼は死んでいない。
それどころか闘争心に輝いていやがる。
まだ動けるのか!?
気絶もしていない。
「ひり、もぉろし!!」
クラウドが前歯の無くなった口で何かを叫びながらバスタードソードを振るって来た。
俺は咄嗟にバックスェーで後退して剣を避ける。
「まだ、やるんかい……」
間合いを広げた俺が呆れて言うと、顔を上げたクラウドが返答した。
「当然だ、アスラン君!!」
闘志が薄らぐどころか更に燃え上がってるな……。
それより何よりだ……。
口から吐いた出血が消えている。
下手したら顎だって砕かれていたはずなのに、青みどころか赤みすら残っていない。
まるで無傷……。
「さあ、改めて続きを始めよう、アスラン君」
口調もはっきりと回復しているぞ。
「え……。う、うん……」
クラウドがしゃべったときに見えた。
宙に舞ったはずの前歯が全部生え揃っている。
一本も折れていない。
な、何が起きたんだ……?
【つづく】
同期対決って言えばいいのかな~?
でも俺のほうが少し早く冒険を開始しているから、ほんのちょっとだけ先輩なんだよね。
でも、学年で言えば同級生なんだよな。
まあ、そんなことはどうでもいいや。
クラウドは両手で確りとバスタードソードを持って、オーソドックスに中段の構えを築いてやがる。
体の向き、伸ばされた背筋、足の幅。
すべてが教科書通りの正確な構えである。
やっぱり、真面目だよな、こいつ。
真っ直ぐに俺を睨む視線からすら生真面目さが伝わってくるよ。
そんなこいつが俺を殺すなんて殺伐とした台詞を吐くようになったなんて、これも成長と呼べるのかな?
まあ、でも──。
俺は周りを見回した。
数人の冒険者たちが気絶して転がっている。
顎を砕かれたり、鼻を潰されて気絶している。
まあ、俺がぶん殴ったんだけれどさ。
「なあ、クラウド」
「なんだい、アスラン君?」
「お前と対決するのは構わんが──」
「構わないが、何かな?」
俺は周りを見回しながら言う。
「ちょっと足場が悪い。こいつらを隅に寄せようや」
「んん、そうだね」
俺とクラウドは一旦武器を収めてから気絶している冒険者たちを木材置き場の隅に移動させた。
角刈りポニーテールが丸太に腰掛けながらぼやいている。
「ママゴトかよ……」
こいつは手伝ってくれないのね。
それでも俺とクラウドの二人は怪我人を移動させる。
「よし、こいつで最後だ。クラウド、足を持ってくれないか」
「ああ、分かったよ。いっせ~の~でぇ~」
「「よっと」」
俺とクラウドは上半身と下半身を持って大男を二人で運んだ。
「じゃあ、クラウドは戦う準備でもしていてくれないか」
「アスラン君、キミは?」
「ちょっとこいつらにヒールを掛けてから行くわ~」
「優しいな、キミは……」
「あとで慰謝料を請求されたら嫌だからな~。治せるうちに治しとこうと思ってよ」
俺は言いながら気絶している連中にヒールを掛けて回った。
傷は癒えたが目は覚まさない。
ヒールで傷は癒えても意識は取り戻さないのね。
あんまり他人にヒールを施す機会なんて無いから知らんかったわ。
まあ、いいか~。
俺は立ち上がると踵を返した。
クラウドのほうを見てみれば、糞真面目にバスタードソードで素振りをしていた。
俺ならヒールを施している隙に背後から切りかかったかも知れないのにさ。
本当に真面目だよな。
「ウォーミングアップは済んだか、クラウド?」
「ああ、僕は身体が暖まったよ」
「よし、じゃあ始めるか~」
俺は腰から黄金剣を引き抜いた。
サクっと終わらせようかな。
クラウドが再び中段に剣を構えた。
瞳が鋭く変わり戦闘モードに入ったのが視線で分かる。
俺は構えらしい構えは取らなかった。
クラウドごときに構えは要らないだろうさ。
それほどに実力差が有ると見た。
「それじゃあ、始めるぜ」
「分かったよ……」
答えたクラウドが構えを崩す。
何をするのかと思えばバスタードソードの刀身を自分の頬に当てた。
そして、僅かに剣の刃を引く。
「何してるん?」
俺が問うと頬に小さな刀傷を刻んだクラウドが答えた。
「ちょっとした儀式だ。気にしないでくれ」
「ああ、分かった分かった。じゃあ俺から打ち込むぞ」
俺は言いながら黄金剣を振り上げた。
切っ先を真っ直ぐ天に向ける。
高々と伸ばされた黄金剣が太陽光をキラキラと反射させて煌めいた。
「打ち込むぞ!」
「来いっ!!」
ダッシュからの打ち込み。
構えは雑だが打ち込む速度は本気だった。
天から地に向けて振られた剣打がクラウドの脳天を狙う。
「なんのっ!!」
クラウドは剣を斜めに翳すと俺の黄金剣を受け止めた。
斜めの角度を活かして受け流す気だろう。
だが俺は力任せに押しきる。
斜めに翳していたクラウドの剣が真横に倒れて俺の剣打に沈み込む。
「ぬぬぬっ!!」
クラウドは両手を力ませながら腰を落として俺のパワーに耐え忍んでいた。
いつも優雅に振る舞うクラウドが、オヤジ臭く蟹股でふんばっている。
力んだ身体がプルプルしているよ。
ププッ。
「受けるのがやっとだな~」
「なんの、これしき!!」
「はい、甘い」
俺は踏ん張るクラウドの土手っ腹に前蹴りを打ち込んだ。
剣打に耐えるのがやっとだったクラウドは、蹴りを躱すどころじゃあなかったのだろう。
「ぐはっ!!」
クラウドは俺の前蹴りを食らって後方に飛ばされた。
軽いな。
「チョリ~ス」
吹っ飛んだクラウドは後頭部から転倒すると、グルグルと三回転がってから腹這いでダウンする。
「立てるか~、クラウド?」
肩に黄金剣を背負いながら俺が問うと、フラフラとクラウドが立ち上がる。
バスタードソードを杖変わりに立ち上がったクラウドの表情は苦痛と屈辱に歪んでいた。
「け、蹴りなんて、下品だぞ、キミは……」
俺はドヤ顔で言ってやった。
「冒険中に蹴られたことは無いのか?」
「トロールに蹴られたことがあるよ……」
「人間だって、蹴るんだぜ」
「勉強になった!!」
コンドはクラウドから切り掛かって来た。
左足で踏み込み、右足で踏ん張る。
そこからの袈裟斬り。
まただ──。
教科書通りに踏み込み、教科書通りに踏ん張り、教科書通りに打ち込んで来たのだ。
確かに一つ一つは鋭く速い。
確かに一流の打ち込みだ。
だが、攻めに個性が無いな。
一般の戦場なら通じるだろうが、色々と冒険を繰り広げて生きて来た俺には味気ない先方だ。
モンスターのほうが、もっと個性的な攻め手だぞ。
これが人間の基本なのね。
「せい」
俺は片手で黄金剣を横に振るうとクラウドのバスタードソードを軽々と弾く。
そして更に一歩深く踏み込んだ。
そこからの地獄突き──。
真っ直ぐに伸ばした四本の指を揃えてクラウドの喉仏に滑り込ませる。
ザクリと俺の四指がクラウドの喉にめり込んだ。
「ぐほっ!?」
バッチく涎を吐き散らしながらクラウドが背を丸めてよろめいた。
そこに俺は掬い上げの軌道で黄金剣を打ち込んでやる。
「よっとさ」
「ぬあっ!!」
咄嗟に剣を盾に俺の攻撃を受け止めたクラウドの身体が宙に浮いた。
その浮いた身体のド真ん中に俺は後ろ上段廻し蹴りを突き立てる。
「破っ!!」
「がはっ!!」
クラウドの身体が斜めに飛んで行く。
空中に居れば回避出来ないもんね。
蹴り放題だよ。
でも、腕でガードはされていたからダメージは余り期待できないかな。
でも、この一連で実力差は理解できただろう。
宙を舞っていたクラウドが着地する。
倒れない。
しかし重々しく片膝をついた。
「ぐぐぐぅ……。防御の上からでも臓腑が捩れそうだ……」
「分かったかい、この実力の差がさ?」
「べ、勉強になった……」
そう答えたクラウドは、再びバスタードソードを両手で構え直す。
まだやる気のようだ。
学んでいないな~。
心が折れるほどのダメージじゃあ無かったのだろう。
まあ、いいさ。
じゃあ、そろそろ終わらせようか──。
俺が終わりを決意すると同時にクラウドが剣を頭上に振り上げながら切り掛かって来た。
「学べよな」
「学んでいる最中だ!!」
クラウドの気合いが籠った兜割りが俺の眉間を狙っていた。
だが俺は片足を軸に半身をずらして斬撃を紙一重で躱す。
繊細だが余裕の回避だ。
俺の鼻先をバスタードソードの刀身が過ぎると足元に突き刺さった。
その空振りと同時に俺の左剛腕がショートアッパーを鋭く放つ。
下から突き上げた鋼鉄の拳がクラウドの顎を叩くとガゴンと激しい音が鳴った。
クラウドの下顎が上顎に激突した鈍い音だ。
そして俺は拳をスピーディーに振り切る。
「ぶはっ!!」
瞬時に上を向かされたクラウドの口から鮮血と共に白い前歯が数本発射されていた。
四本は飛んでたな。
1メートルぐらい高く吐き上げてないか。
そして、背筋を真っ直ぐに伸ばしながら空を見上げているクラウドが一歩二歩とよろめくように後退する。
うし、会心の一撃だったぜ。
クラウドは気絶しちゃうかな~。
まあ、これで、ダウンして終わりだろうさ。
そう俺が確信した刹那だった。
ムクリとクラウドが前を向き直す。
口から鮮血をダラダラと垂れ流していたが眼は死んでいない。
それどころか闘争心に輝いていやがる。
まだ動けるのか!?
気絶もしていない。
「ひり、もぉろし!!」
クラウドが前歯の無くなった口で何かを叫びながらバスタードソードを振るって来た。
俺は咄嗟にバックスェーで後退して剣を避ける。
「まだ、やるんかい……」
間合いを広げた俺が呆れて言うと、顔を上げたクラウドが返答した。
「当然だ、アスラン君!!」
闘志が薄らぐどころか更に燃え上がってるな……。
それより何よりだ……。
口から吐いた出血が消えている。
下手したら顎だって砕かれていたはずなのに、青みどころか赤みすら残っていない。
まるで無傷……。
「さあ、改めて続きを始めよう、アスラン君」
口調もはっきりと回復しているぞ。
「え……。う、うん……」
クラウドがしゃべったときに見えた。
宙に舞ったはずの前歯が全部生え揃っている。
一本も折れていない。
な、何が起きたんだ……?
【つづく】
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