上 下
436 / 604

第435話【家臣と家来】

しおりを挟む
俺は四本の剣を床に突き刺し、その正面に胡座をかいて座っていた。

剣は俺が突き刺したのだ。

床に突き刺されて立っている剣の柄には顔がある。

暗闇のハイランダーズだ。

一つは乙女で、三つは青年中年老人である。

「でぇ、お前ら何者よ?」

俺の質問に答えたのは青年の顔だった。

「く、暗闇のハイランダーズです……」

「それは知ってるよ、ボケ!」

「「「「ひいっ!」」」」

うわぁ~~……。

こいつら完全にビビってるよ。

「名前だ。名前ぐらいあるだろ?」

乙女から簡単な自己紹介を始める。

「私がリーダーのタピオカと申します……」

「我々は配下のキャッサバ、スターチ、プディングと申します……」

なんだか女子高生の好物っぽい名前だな。

そして四人が声を揃える。

「「「「四人合わせて、暗闇のハイランダーズです!!」」」」

うわぁ~……。

声が揃ってるわぁ……。

そこが結構ウザイわぁ~……。

「でぇ、お前ら四人だけなのか、ハイランダーズってのは?」

俺の質問に答えたのはタピオカだった。

その声は暗い。

「我々ハイランダーズは、以前までたくさんいたのですが、今は我々四人だけです……」

「どうした、冒険者にでも退治でもされたか?」

「いえ、違います。他の者たちは、謀反をおこして別グループを立ち上げまして……」

「うわ、ダサ!」

こいつら仲間に裏切られてやんの。

うーけーるー。

タピオカが怒った口調で抗議してきた。

「本当だけど、ダサイって言うな!!」

「「「そうだそうだ!!」」」

「うるせえよ。ウザイな~」

「本当だけど、ウザイって言うな!!」

「「「そうだそうだ!!」」」

「もう、キモイな……」

「本当だけど、キモイって言うな!!」

「「「そうだそうだ!!」」」

マジでダサくてウザくてキモいぞ、こいつら……。

「まあ、分かった。それで、謀反をおこした奴らは何人ぐらい居るんだ?」

「二十一人です……」

結構な数が居るな。

でも、そいつらがこいつらと同じぐらいの強さなら、たいして問題でもないかな。

二十人ぐらい分断して撃破すれば容易いか。

そもそも戦う必要も無いから、そのまま素通りできたら一番楽なんだけどな。

「よし、分かった。情報ありがとうな。それじゃあ俺は行くからさ」

そう言い俺が立ち去ろうとすると、ハイランダーズたちが慌て出す。

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ってください!!」

「待って、行かないで!!」

俺は振り替えると白い目で剣たちを見た。

「なんだよ、うっせえな……」

「私たちをこのまま放置しないでくださいよ!!」

「なんでだよ?」

「だって私たちは、鎧が無いと動けないんですよ!!」

「鎧ならそこに倒れているじゃあねえか?」

「すいません、そこまで我々を動かしてもらえませんか……?」

「もしかして、お前らは自力で動けないのか?」

「当然ですよ。だって私たちは剣ですからね。剣がひとりでに動いているところを見たことありますか?」

「いや、剣が鎧を動かしているところも見たことないぞ……」

「さっき私たちが動かしてたじゃあないですか!?」

「あっ、そうか……」

これは一本取られたぜ。

「すみません。ちょっと本体の剣が鎧に触れられれば、あとは私たちでやりますんで、少し手を貸してくれませんかね~?」

「なんで?」

「なんでって、あんた!?」

「なんで俺がモンスターに手を貸さにゃきゃならんのだ?」

「いやいやいや、だって私たちがこのまま放置されたら朽ち果てて死んじゃうじゃないですか!!」

「そんなの知らんがな」

「「「「ひどっ!!」」」」

「だってお前らは俺の命を狙った奴らだよ。しかも卑怯な騙し討ちで仕掛けてきた奴らだよ?」

「そ、それは……」

男たちが声を揃えて謝った。

「「「ごめんなさい!!」」」

「タピオカ。男たちは謝ったぞ。お前はどうするよ?」

「わ、私は……」

「なんだか謝りたくない様子だな?」

「わ、分かりましたわ……。私を鎧に戻してくれたら、何だってしてあげます。舐めろって言われれば舐めます。飲めと言われたら飲みます。産めと言われたら産みますわ!!」

「ええっ!!」

こいつ鎧で飲めたり産めたり出来るのか!?

「姫様にそんな卑猥なマネはさせませんぞ。代わりに私が舐めますぞ!!」

「じゃあ、代わりに私が飲みますぞ!!」

「それならば、私が代わりに産みますぞ!!」

「気持ち悪いことを言うな!」

俺は三本のショートソードを順々に殴った。

「冗談なのにマジで殴ったよ……」

「この人は冗談が通じないようだな……」

「ジョークのセンスが無いんだよ、きっと……」

「好き放題言ってると、溶鉱炉に投げ込むぞ、糞野郎ども!!」

「「「ごめんなさい!!」」」

畜生、なんなんだ、こいつらは?

でも、面白い奴らだな。

なんだか欲しくなってきたぞ。

こいつらだって魔法の剣だろ?

マジックアイテムだろ?

インテリジェンスソードだよな。

ならば俺が保有してもいいのかな?

ちょっとカマを掛けてみるか。

「おい、ハイランダーズども」

「「「「はい!?」」」」

「ここに放置されたくなかったら、俺の配下に入らないか?」

タピオカが言う。

「家臣になれと……?」

「まあ、そんな感じだな」

すると男たちが言う。

「姫様がそれで宜しければ、我々は反対しませんぞ」

さっきから姫姫言ってるが、タピオカって姫様なのかな?

まあ、どうでもいいけれどさ。

「こ、この場に放置されるよりはましですわね……」

「よし、じゃあ今日からお前らは俺の家来な!」

「ですが、この身はあなた様に開きはしませんわよ!!」

「いや、一生開かなくってもいいからさ……」

言いながら俺はタピオカを床から抜くとピンクプレートの上に置いた。

するとピンクプレートが動き出して、タピオカ本体のロングソードを掴んだ。

そして俺は次々とショートソードをブラックプレートの上に置く。

「おい、こら、それは俺の鎧だぞ!」

「いや~、前からこの鎧が欲しかったんだ~」

「返せ~!」

「あー、私は両腕を切断されているから本体の剣が持てませんな……」

「ほら全員ならんで、挨拶しますわよ!」

両腕が無いプディングはヘルムを取って、そこにショートソードを刺している。

鎧の首から剣の柄が見えているんだけど、丁度そこに顔があるから可笑しな風貌に見えた。

そして、改まってタピオカが言う。

「我が主、えーーっと……」

「アスランね」

「我が主、アスラン様。我々ハイランダーズは、今後忠誠を誓いますゆえ、謀反をおこした連中の討伐を宜しくお願いいたします!!」

「「「いたします!!」」」

「討伐とか聞いてねーーーよ!!」


【つづく】
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

処理中です...