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第425話【フォーハンドスケルトンウォリアー】

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1メートル幅の石橋を舞台に始まった睨み合い。

扉の中から出て来た四本腕のスケルトンウォリアーは巨漢でフルプレートメイルを装備していた。

バケツに一の字の覗き穴が開いたようなヘルムに、胸元に赤いXのラインが目立つ甲冑。

右上の腕にロングソード、左上の腕はショートソードだ。

右下の腕にはメイスを持ち。

左下の腕はハンドアックスを持っている。

身長は高い。

おそらく2メートルの巨漢。

その道幅いっぱいの巨漢で扉の先を隠している。

俺の背後は太い鉄柵で塞がれていた。

逃げ道は無い。

石橋の下はスライムのプールだ。

戦うしかないな。

「しゃあねえな~」

俺は異次元宝物庫から斬馬刀を取り出した。

戦うステージは幅の狭い一本道だ。

ならばリーチが物を言う。

更に──。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、ディフェンスシールド、フォーカスアイ、カウンターマジック、ファイアーエンチャントウェポン、プロテクションアンデッド!」

エンチャント魔法のフルコースだ。

これで戦う準備が終了だぜ。

「いざ、勝負!」

俺は両手で確りと持った斬馬刀を腰の高さで横に構えた。

刃先をフォーハンドスケルトンウォリアーに向ける。

すると敵さんも構えを築く。

両上腕を斜め上に広げ、両下腕を斜め下に広げる。

大きな構えだ。

まるでXの字に構えを築いているようだった。

「なるほどね。胸の赤いXの字柄は、それが意味か」

そして、ジリジリとフォーハンドスケルトンウォリアーが詰めて来る。

左足を前にして、少しずつ前進して来るのだ。

「アンデッドの癖に慎重だな。元の人間さんが慎重な性格だったのかな?」

俺は大きく息を吸い込んで深呼吸した。

それから一気に走り出す。

「先手だ!」

俺は長い斬馬刀の先でフォーハンドスケルトンウォリアーのバケツ頭を狙って突いた。

だが、力強いロングソードの横振りで斬馬刀を弾かれる。

「なろうっ!」

だが俺は、弾かれた勢いを殺さずに体を横にスピンさせた。

そして一周してから斬馬刀を全力で横振りに振るう。

大回転切りだぜ。

「おらっ!!」

ガキィンっと耳障りな金属音が響いた。

畜生、ガードされた。

ショートソードとハンドアックスで斬馬刀の一振を防がれる。

しかも、こちらは全力で打ち込んだのにも関わらず、フォーハンドスケルトンウォリアーは体勢を崩すどころか、揺らいでもいなかった。

「こいつ、やはりパワー派だな!」

今度はフォーハンドスケルトンウォリアーが攻撃を繰り出してきた。

ロングソードの袈裟斬りだ。

その一打を俺は斬馬刀の柄で受け止めた。

再び激しい金属音が響く。

「くっ!!」

重いっ!?

打たれた衝撃に膝が僅かに沈んだ。

衝撃に耐えている俺に、二撃目のメイスが飛んで来る。

掬い上げの逆袈裟打ち。

ガキィンっと三度目の金属音が轟く。

すると両手で持っていた俺の斬馬刀が上に弾かれた。

俺は斬馬刀を持ったまま、万歳をする形となっている。

すげー手が痺れてるぞ。

やばい、胸がガラ空きであっだ。

無防備である。

そこに斜め上からショートソードの突きが迫る。

「いゃ~~ん!」

俺は瞬時に体を捻って体勢を横にする。

その背中の寸前をショートソードの切っ先が過ぎて行った。

なんとか回避する。

だがしかし──。

「あわわわぁわぁ!!」

俺は石橋から落ちそうになっていた。

そんな俺のピンチにフォーハンドスケルトンウォリアーが追撃を繰り出して来る。

俺の下半身を狙って背後から低い体勢でメイスを振るって来た。

「ちょっと待てよ!!」

俺は真上に飛んでメイスの振りを回避する。

迫るメイスを飛び越えて回避したのだが、俺は足が浮いて背中から石橋の上に落ちてしまう。

「くそっ……」

危なかった。

危うく石橋から落ちていたかも知れないぞ。

だがピンチは続く。

何せ俺はダウン中だ。

そんな俺にフォーハンドスケルトンウォリアーがロングソードを振るう。

「マジで待ってくれよ!!」

俺は横にゴロゴロと転がってロングソードのダウン攻撃を回避した。

そのままゴロゴロと転がり続けて石橋の上を退避して行く。

しかし、転がる俺をフォーハンドスケルトンウォリアーが必要なまでに追い回す。

四本の腕を順々に振るい、転がる俺にダウン攻撃を連続で仕掛けて来るのだ。

ロングソード、ショートソード、メイス、ハンドアックスの順で追撃を仕掛けて来る。

だが、最後のハンドアックスを振るったところで僅かに動きが止まった。

おっ、チャンス!

「なろうっ!!」

俺はフォーハンドスケルトンウォリアーの左足を狙って斬馬刀を振るう。

ヒット!

だが浅い!?

プレートの装甲を貫いてもいない。

脛を叩いた程度だ。

しかしフォーハンドスケルトンウォリアーがよろめいた。

そして敵がバランスを崩している間に俺は立ち上がる。

「ふっ、ヤバかったぜ……」

俺は一歩二歩と後ずさる。

あっ、後ろが無い……。

もう鉄柵だ。

ならばと俺は、三歩ばかりの短い助走でフォーハンドスケルトンウォリアーに突っ込んで行った。

「行くぜ!」

その俺にカウンターを狙うフォーハンドスケルトンウォリアーがロングソードとショートソードをX字の袈裟斬りに振るった。

「なんのっ!!」

だが俺は、突進を止めない。

体を低くしてX振りの斬擊を躱すと、スライディングでフォーハンドスケルトンウォリアーの股ぐらを潜ったのだ。

そのまま後ろに回り込む。

「よし、成功!」

フォーハンドスケルトンウォリアーは四本の腕を開いて大きな構えを取っていたから、下半身も大きく開いていたのだ。

上半身の構えが広ければ、自然と下半身の幅も広くなる。

深く腰を落として蟹股に構えやすい。

だから巨漢の股を潜るのも簡単だったのだ。

そして石橋を滑った俺も立ち上がる。

そのころにはフォーハンドスケルトンウォリアーも振り返っていた。

仕切り直しだ。

「どれどれ、情報収集も完了かな」

フォーハンドスケルトンウォリアーの戦力が分かった。

この野郎は、パワーが強いがドン臭い。

それが特徴だ。

腕の数が多い分だけ攻撃の連打は多いが、剣技は多彩じゃあないな。

剣技や戦術は単純だ。

「それじゃあ、小賢しく戦いますか~」

俺は斬馬刀を異次元宝物庫に戻すと替わってラージクロスボウ+2を取り出した。

ラージクロスボウには既に氷の矢がセットされている。

そして俺はラージクロスボウを大きく狙いを反らした右側に放った。

光の矢がくの字に曲がってフォーハンドスケルトンウォリアーの頭部を射ぬく。

ガンっと音がなると、矢が頭部に刺さったフォーハンドスケルトンウォリアーがグラリとよろめいた。

「奇襲成功~」

更に矢を再装填する。

おお、やっぱり再装填スキルで早くなってるや。

「二発目発射っ!」

今度は右側からくの字に飛んで行く光の矢。

しかし今度はロングソードで矢が落とされる。

「流石に二発目は引っ掛からないよね」

俺はラージクロスボウを異次元宝物庫に投げ込むと新しい武器を取り出した。

「今度はこれだぜ!」

俺も二刀流を構える。

【ロングソード+2。攻撃速度向上。アンデットにダメージ特効向上】

【ロングソード+2。攻撃力小向上。攻撃速度向上】

こんなヤツに黄金剣を使うまでもない。

いくら巨漢で身長が2メートルだろうと──。

いくらパワーが凄かろうと──。

いくら腕が四本有ろうと──。

所詮はスケルトンウォリアーの改良版だ。

俺の敵では無い。

「ファイアーエンチャントウェポン×2!」

俺は二本のロングソードに炎の魔法を施す。

「今度は剣技で勝負だ!」

俺は燃える双剣を振るって立ち向かう。

二刀流対四刀流の勝負だ。

「うらっ!!」

『キィギィキィギィ!!』

俺とフォーハンドスケルトンウォリアーの武器がぶつかり合った。

俺が炎の双剣を連打で振るう。

フォーハンドスケルトンウォリアーも応戦するように四本の武器を振るった。

俺の二刀と敵の四刀が五分の速さでせめぎ合う。

打ち合う速度は五分。

手数も五分。

よし、スピード戦に持ち込んだ。

敵は速度に重心を置いているためにパワープレイを忘れていた。

速さを求めるあまりに振り切る力が入っていない。

俺の思う壺だ。

戦術で勝ったな。

ガンっ!!

よし!

俺の斬擊が敵の膝にヒットした。

フルプレートの膝当てを弾き飛ばす。

ガンっ!!

二擊目ヒット。

今度は左下腕の肘を切った。

ガントレットの装甲を破って尺骨を砕いた感触が伝わってきた。

その一打で手に有るハンドアックスが飛んで行った。

スピードで俺が勝り出したのだ。

更に三擊目がヒット。

右胸を切り裂いた。

更に四擊目がヒット。

左脇腹を切り裂く。

更に五擊目がヒット。

更に六擊目がヒット。

更に七擊目がヒット。

更に、更に、更に────。

次々と俺の攻撃がヒットを繰り返す。

それにつれてフォーハンドスケルトンウォリアーが後退を始めた。

しかし直ぐにその背中は背後の鉄柵に追い詰められてしまう。

押している。

否、押しきったな。

「突きっ!!」

そして俺が最後の一撃と繰り出したロングソードの突きがフォーハンドスケルトンウォリアーの喉を突いた。

首の骨を立つ感触の後にバケツ頭が胴体から離れて床に落ちる。

その頭は転がると石橋から落ちてスライムプールに沈んで消えた。

「よし、勝ったぜ!」

俺が勝利を宣言すると、フルプレートを纏った巨漢が前のめりに倒れ込んだ。


【つづく】
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